第3話 私と赤崎
赤崎が教室に駆け込んできた。
「間に合ったぜ!あっぶねー!」
いっつもギリギリ。
剣道部の朝練、もう少し早く終わればいいのに。
そんな事を考えてたら、頭にぽん、と手が乗せられた。
「よっす」
「おはよー。……乙女の頭、軽々しく
とか言って、この、頭ぽん、が好き。
前みたいに赤崎との距離が少し近く感じる、嬉しい。
前まではどさくさ紛れに手を掴んだりできたのに。
赤崎が手を離すまで、手の温もりを感じられたのに。
今は。
さわるなー、って言いながら。
赤崎の手を一瞬だけ、キュッ!と握りながら。
ずっと撫でてほしいって思いながら。
胸がぎゅう!ってなるのを我慢しながら。
顔いっぱいの笑顔を意識しながら。
前みたいに、じゃれてたいのにって。
でも。
美優が赤崎に告白したいって聞いてからは、自分からは何もできない。
そんな、1ヶ月間だった。
今日の放課後の事を考えると、苦しい。
苦しい。
当たり前だ。
だって。
●
「元気ねーな。具合悪いのか?水、いる?」
こんな時に不意打ちで優しくしてこないでよ!と思いつつ、赤崎を見上げて聞く。
「赤崎……放課後、時間ある?」
「放課後?何で?」
●
美優は可愛くて、すっごくいい子で。
赤崎から聞いてた好みのタイプと一緒。
だから、きっと告白はうまくいって。もうこれからは、頭ぽん、なんて挨拶は夢のまた夢。
今、自分の気持ちに気づいたところで。赤崎を好き、と気づく事ができなかった私の恋心は、今日で終わる。
明日。
赤崎と美優をからかって、いっぱいお祝いしないと。
お祝い、しないと。
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