第2話 きっと、これの事

 


 腕を枕にして、机で目を閉じる。

 香菜のおかげで、少し気持ちが回復した。


 だけど、もし。

 虫の知らせだとしたら。


 元気が出ない分、悪い方に考えが行ってしまう。


 田舎のお爺ちゃんお婆ちゃん、大丈夫かな。

 お父さん、お母さん、弟の友也ともやは大丈夫かな。


 みんなにチャットや電話してみようかな。

 私も帰り道、気をつけて帰ろうかな。


 不安ばかり。

 なんだか怖い。


 お婆ちゃんへのチャット打つのに、指が震えた。



 赤崎あかさきの机に、目をやる。

 まだ、教室に来ていない。


 いつものバカ話でもすれば、赤崎の笑顔を見れば、気が晴れるかもしれないのに。


 ん?今、突っつかれた……?

 振り返ると、香菜だった。


「どしたの?」

「お客さんだよー」


 香菜の視線を追うと、教室の入口で美優みゆが笑顔で手を振っている。




 どくん。


 どくん。


 どくん。




 自分の心臓の音が聞こえてくる。

 虫の知らせはきっと、この事だったんだ。

 とうとう、この日が来たんだ。


 ふわふわと力の入らない足を奮い立たせて。

 毎日練習をした、顔いっぱいの笑顔で。

 立ち上がる。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る