【新】今さら、『好き』なんて言えるわけない。

マクスウェルの仔猫

第1話 「虫の知らせ」って、そんななの?

 


 朝、うなされて目がめた。


 こわい夢を見たのかもしれないけど、まったく思い出せない。


 ただ、頭の真ん中に残るような重さとザワザワした感じが気持ち悪い。


 1日の出だしから、最悪だよ。





 どよーん、としたままで学校の駐輪場に自転車を止めた瞬間に、香菜かなが見えた。


こころ、おっはよー!……ひっ?!」


 駆け寄ってきて後ずさるとか、なんだその芸は。


「心かと思って挨拶したらユーレイだったからビックリしたよ!……大丈夫?」


「おはよ。……変な夢見たらしいのと、もやもやして何か落ち着かない」


 心配はうれしいけど、幽霊ゆうれいは取り消せ。

 ご本人様だってば。

 心だよ。


「わかんない。大人しくしてるよ」


「そういうのって何かさ、虫の知らせとかじゃない?」


 虫の知らせって、何か良くない事が起きるのを感じてるんだっけ。


 嫌だなあ。

 私今きっと、唇がアヒルになっている気がする。


「だったらさ、虫よけ買ってこようか?すっごい効くやつ知ってるよ?」


 ……は?

 香菜の言う、虫の知らせって?

 虫、押し寄せてくんの?


 いやいや。

 いやいや。


 私、そんなんされたらめちゃめちゃ叫んで逃げるよ。それはそれで、立派な不幸だ。


 でも。 


 一応聞いてみる。


「……それって、虫がいっぱい来るって事?」

「えーやだー、むりー」

「?!!」


 貴様っ!!!

 自分で言ったんだろが!


「わっはぁ?!何で、くすぐ……いやあーはっは、は、あう?!だめー!わき腹、だ、ひゃー!!」


 ありがとう、わが親友よ。


 おもしろかったから、どうぞ遠慮せず。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る