毛糸の靴下(12/18)
赤、白、緑の縞模様の毛糸の靴下を灰色の手袋がゆっくりゆっくりと編んでいくのを、姫と隼士は死んだ魚の目のような目で見ていた。
心地よく穏やかな時間だった。
頭痛さえなければ。
「ねえ、隼士。隼士はサンタさんに何をお願いする?」
「頭痛を取り除く薬です」
「えー。夢がない」
「姫様は何をお願いするのでございますか?」
「頭痛を取り除く枕」
「わたくしの願いと何が違うのでございますか?」
「夢があるかないか」
「薬も夢がございます」
「んー。そうね。訂正する」
「はい」
「ねー、隼士」
「はい」
「私、もう一つ。お願い事がある」
「はい」
「教えないよ」
「姫様」
「んー」
「姫様、一緒に帰りましょう」
「いやー」
「姫様」
「んー」
「選んでくださいませぬか?」
「何を?」
「わたくしが今年限りでアドベントカレンダーの中に入る事を止めるか、わたくしも姫様と一緒にアドベントカレンダーの中に入り続けるか。どちらかをお選びください」
「隼士」
「はい」
「どっちも却下」
「そうでございましょうな」
「ねえ。隼士。私たちも作ろっか?」
「………今年は辞退させていただきます」
「じゃあ、私だけ作ろっかな」
「はい」
「隼士」
「はい」
「ありがとね」
「………はい」
(2022.12.18)
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