葉牡丹と薔薇(12/12)
『姫様をずっとアドベントカレンダーに閉じ込めておこう。とか考えてないかい?』
『理由をお尋ねしても宜しいでございますか?』
『君が』
「………」
白一色のものもあれば。
深緑一色のものもあれば。
外側の葉の一枚だけが深緑で他が白のものもあれば。
外側から内側へと徐に、深緑から白に変化していくものもあれば。
外側から内側へと徐に、深緑から濃紫に変化していくものもあれば。
外側から内側へと徐に、深緑、桃、白、濃紫に変化していくものもある。
そんな数多の葉牡丹が一望できる場所に佇む姫と隼士は、向かい合って見つめ合っていた。
否。正確には、姫の視線は隼士と隼士が手に持っている一輪の赤薔薇を素早く行き来していた。
「………えっと。隼士。私。結婚してるんだけど」
「はい。存じておりますぞ」
「………えっと。隼士以外の人と結婚してるんだけど」
「はい。存じておりますぞ。その結婚相手からの贈り物です。丹精込めて育った薔薇で癒されてくれたらと思って贈ります。との伝言も預かっております」
「あ。そう。ありがとう」
「包装しておりますが、棘にはお気をつけてください」
「うん」
そっと受け取って両の手でやんわりと持った姫は小さく息を吸った。
それでも、薔薇の匂いが濃く身体へと流れ込んだのであった。
「うん。薔薇だ」
「はい」
『君が奪略愛を狙っているからだよ』
(2022.12.12)
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