一掃の落ち葉(12/11)
年を重ねる程に眼前にする事が迫って来て。
息苦しくて、けれど、投げ出すわけにもいかなくて。
本当に為すべき事なのか、正常な判断を下せているのかどうかさえわからなくなって。
最初は本当に休みたかっただけなのだと思う。
少し。ほんの少しだけ。
ただ休息を得る事によって、余裕が生まれて、思考が動き出して。
沈めていた願望が沸き上がったのか。
ずっと。
不老不死の守護者と長命な蛇と一緒に生きていたい。と。
荒唐無稽なこの願いを、ただびとの自分が叶えるにはどうしたらいい。
閉じ込めてしまえばいいのだ。
意識をずっと。
「ねえ、隼士。私さ。現実の私と違う?」
クリスマスパーティーで使ったすべての物を地へと還してくれる、雫の形をして虹色の大岩になる一掃の落ち葉が転げ落ちるのを座って待っていた姫は、隣に座る隼士に尋ねた。
「違うかどうかはわかりませんが、眠りに就く直前の姫様はいつも眉根を寄せて、厳しい眼差しで、神経を尖らせていて、けれど人々には丁寧に対応しておりました」
「はしゃぎ回っている私とは大違い」
「わたくしは姫という重責に耐える為にここに逃げたのだと思っていました。けれど」
「けれど?」
「………けれど、長過ぎる、と、思っています。そろそろ帰って来てほしいと願っております」
「初日に言ってたよね。目覚めるつもりはないかって。私は言った。目覚めるつもりはないって」
「はい」
「私がさ。ずっとここで生きたいって言ったら、どうする?」
「わたくしの答えは一つです」
「本当に?変わらない?」
「はい」
「そっか。なら私も変わらない。目覚めるつもりはない」
「わたくしが漁火花を見つけたら姫様は目覚めなければなりませんぞ」
「でもまだ見つかっていない。長い間ずっと。でしょ?」
「はい」
「見つからないよ。ずっと」
「姫様」
「ここでは楽しみたいの。だからそんな顔はなし」
「わたくしがずっと無表情なのは、姫様もよくご存じでございましょう」
「うん。でも今、違う表情に見えたから。あ。転げ落ちた。隼士拾って拾って」
「はい」
姫と隼士は座ったまま、一層の落ち葉を拾い続けた。
赤子の爪程の大きさだったので、見失わないように目を凝らしたまま。
(2022.12.11)
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