杖の飴(12/8)
多分。
すごく。
子どもじみた願いなのだ。
おいていってほしくというのは。
「ほーらおいで、竜たち~」
姫は赤色で杖型の飴をゆらゆらと揺らして動かそうとした。
姫よりも、隼士よりも遥かに大きい十匹の白い竜たちを。
杖の飴。
竜たちを先導する際に使われるこの飴は最初は赤一色なのだが、竜たちに先導するに相応しいと認められたら、白が加わり、赤と白の縞模様へと変わるのであったが。
姫が持つ杖型の飴は赤のままであった。
「あ。隼士は持っちゃだめだから!」
「まだ何も申してはおりません」
「目が。その無気力な目が言っているの!」
「お言葉ですが。わたくしの目は姫様頑張れと叱咤激励しかしておりません」
「嘘だ!隼士はもう認められているから、できない私を見て愉悦に浸っている!」
「穿った思考を持たないでください。確かにわたくしはすでに竜たちに認められてはおりますが、ここではなく現実の話です。ここの竜たちにはまだ認められていないので、姫様にそこまで毛嫌いされる理由はございません」
「………でも隼士が持ったら即縞模様に変わりそう」
「姫様はわたくしが優秀だと疑い過ぎです」
「………」
「わたくしが真実優秀であるのならば、始まりの鐘の際の舞い踊りでは、容易く姫様と動きを一致できたはず。けれど、実際はどうでしたか?てんでばらばらだったではございませんか」
「そうだけど」
「二人で頑張るのでしょう。わたくしにも竜たちに挨拶させて頂けませんか?」
「………わかった」
姫はゆっくりと杖型の飴を隼士に手渡した。
途端。
赤一色から赤と白の縞模様へと変化した。
「わたくしは竜と相性がいいのです」
「やっぱり!もう!私も竜に認められたかったのに!」
「姫様ガンバでございます」
「頑張るわよ!もう!」
(2022.12.8)
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