休みの日(12/5)




 ねえ、アドベントカレンダーの中での出来事を覚えている。

 いいえ。

 覚えていない。

 その年の二十四日間もしくは二十五日間の事は覚えている。

 けれど。

 次の年にはもう忘れている。

 そう。

 去年も一昨年もその前も覚えていない。


 ええ。

 守護者が来た事は覚えている。

 けれど。


 過去の自分がどんな行動して、どんな発言をしたのかは覚えていない。

 過去の守護者がどんな行動をして、どんな発言をしたのかは覚えていない。


 あとは。

 アドベントカレンダーに記した課題に沿って動く事は覚えている。

 時間は決まっていて、課題が完遂できてもできなくても構わなくて次の日へと続いて、守護者は一日に一回は必ず現実に帰る事も。




 ちくちくちくちく。

 楽しんで作っていた。

 温かい色の布を散りばめた手縫いのアドベントカレンダー。

 日付のところには扉も作った。

 持ち上げた先に何をするかも記した。

 ちくちくちくちく。

 糸で文字も縫った。

 ええ、ええ。

 とても楽しかった。




 ねえ。

 あれから何年が経った?


 ねえ。

 私は、

 守護者は、

 決められた?











「あら。今日は休みじゃなかった?」

「はい。そうですね」


 守護者の回答に間違いではない事を知った姫は首を傾げた。

 今日は休みの日。

 何も記していない日であるので、隼士がアドベントカレンダーに入らなくてもいい日だ。


「昨日は焔鳥の瞳をずっと見続けていて疲れたでしょうに」

「一晩寝たら回復しました」

「ふ~ん。私は疲れているけど」

「では眠っていてください」

「隼士が来ていなかったらぐっすり眠っていたんだけど」

「邪魔でしたら、気配を消して遠方から見守っております」

「………じゃあそうして」

「はい」


 言った通り気配を消し、見渡す限りは隼士の姿が視認できなくなった姫はその場に座り、腕を大きく上げて広げて背中からふかふかの草の上に倒れ込んで、浅く長く呼吸をして。

 ごめんと呟いた。











(2022.12.5)


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