第7話 CoA

「…ごめん、早口になる癖があって…」


「ぜ、全然大丈夫。そうだよね。僕らとCoAは一応対峙してる関係だから、その可能性はあるもんね。」


 一飛は放心状態で、何が起こっているのか見向きもしない。


「…じゃ、部屋を見に行こう。」


 三人は部屋に着くまで何も喋らなかった。




「アドルフ、あの二人を匿っておく気?」


 モニターを凝視していた女性が、画面から目を離し、アドルフに尋ねた。


「ああ。…二人をどこかで見たことがある気がしてな。」


 アドルフがモニターに映る三人を何かを懐かしむような目で見ていた。




 飛貴は部屋に着くまで、他の部屋の中を数回見た。どの部屋も、十数名の老若男女が布団を敷いて寝ている。ある部屋は男子部屋、ある部屋は女子部屋のように。また、ある部屋は飛貴と同い年ぐらいの男子が寝ている部屋もあった。


 元々、CoAは、惑星難民プラネットレフュジーが惑星を共有して住むために自主的に集まった団体だ。一つのグループが一つの惑星を共有し、家族のようなものになっている。


 飛貴は、自分の家がどれだけ恵まれているか、そしてこの世界の構造を憎んだ。別に飛貴自身が苦しんでいるわけでもないが、なぜか心が痛んだ。


「…貴。飛貴。大丈夫?ねぇ飛貴。」


 飛貴がそんなことを考えている間に、部屋に入っていたようだ。暮星家が住んでいた時に物置だった部屋が飛貴の周りを包んでいた。


「ごめんごめん考え事してた」


「全く、お前はいっつも何考えてんだよ。」


 一飛が置かれていた机に足を乗せて、椅子に座っていた。そして、リラックスした態度で飛貴に愚痴を飛ばした。


「いいでしょ、なんでも。…ここが僕たちが泊まる部屋?」


 飛貴の質問にルシアが答える。


「うん。ベッドとかは無いけど、ブランケットを持ってくるからそれで大丈夫?」


「大丈夫。」


「じゃ、ブランケット取ってくるね」


 そう言ってルシアは部屋を出た。部屋に残ったニ人は、今夜寝る場所を確保し出した。


「飛貴、父さんと母さんになんて言うんだ?」


「もちろん正直に言うよ。だって悪いのは僕らだし。」


「…そっか。」



 そこから何をしたかは、飛貴と一飛のどちらもあまり覚えていない。覚えていたとしても、ブランケットを持って来てもらってすぐに眠りについただけだ。何もしていないに違いはないだろう。もう十二時はとっくに過ぎている。疲れた二人は眠りについた。




 惑星難民プラネットレフュジーの朝は早い。警察の襲来―言い方が合っているのかはわからないが―をいち早く感知して防御するために二十四時間体制で監視している。また、ルシアより若い、飛貴ぐらいの歳の男女も警察に対抗したりするため、訓練は必須だ。そのため、夜間に働いている男―女性もいるが少ない―以外は全員7時までに起床する。夜は十一時ぐらいには寝るのだが、彼らはR-209に今日、いや、昨日着陸して生活し始めたばかりだ。まだ規則的な生活を送ったことはない。ここから数日は生活習慣が乱れるのだろう。


 七割が八時に起きた。その中には飛貴も含まれる。普通の中学二年生より多く睡眠時間が必要な飛貴にとって、七時間ほどの睡眠は、寝ていないに等しい。飛貴は眠気で満ちた目を擦り、眠気に満ちた頭を起こすために自分で自分の顔を引っ叩いた。


「飛貴、おはよ!」


 全く眠くなさそうなルシアは元気よく飛貴に声をかけた。


「おはよ…」


「眠いんでしょ?」


「…うん…。」


 ルシアはハハハと笑い、飛貴の頬をつねった。


「ちょ、やめてよ…」


 飛貴が笑いながらルシアの手を顔から離す。二人を遠くから見ていたリタが、噛み殺していた笑いを堪えきれずに笑い出した。リタに気づいた二人も笑い出した。段々と三人を見て笑う人が増え、気がつくと部屋中の人間が笑っていた。今さっき部屋に入ってきた一飛も。飛貴たちは惑星難民プラネットレフュジーたちとつい十時間前ぐらいに会ったなんて考えられないほどに仲良くなっていた。


 R-209に着くまでの飛貴の頭の中は、惑星難民プラネットレフュジーに対する嫌悪感でいっぱいだった。


 しかし、いつしか飛貴の頭の中は、惑星難民プラネットレフュジーへ好感を持つようになった。飛貴たち、世間で裕福といわれる人々が作り出したこの貧富の差を、どうにかして埋めたい。飛貴はそう思った。


「……」


 笑いに満ちている部屋に入ってきたアドルフは、顔に柔らかな笑みを浮かべ、ドアの枠にもたれた。笑いもひと段落ついたところで、アドルフが部屋の中に声をかけた。


「一飛、飛貴、宇宙船の調子を見てくれ。」


「「い、イェッサー!」」


 一飛と飛貴の急な軍隊調の返事に、部屋中がどっと沸いた。笑いの中、二人は部屋を出た。


 先を歩くアドルフに追いつくよう、飛貴は小走りで追いかけた。アドルフの横につき、飛貴は速度を緩めた。


 その姿を見た一飛は、なんだか懐かしいような、そんな気がした。



 宇宙船が不時着していたところについた。惑星難民プラネットレフュジーの技術力はすごいものだ、機体を宙に釣り上げ、修理をしている。その下にアドルフと飛貴、一飛が入った途端、十人もいない程の技師が一斉に挨拶を投げかけた。その挨拶は、機械的のようで、とても、とても心のこもった挨拶だった。


 すぐに技師たちは自分の仕事に戻り、作業を続けた。飛貴とアドルフが話し合っている後ろで、一飛は何か考え事をするような顔で突っ立っていた。



作者のコメント

 やばいよやばいよ!笑

 終わったかもしれない...笑

 まあ完成させてみますわ笑

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