第5話 惑星難民《プラネットレフュジー》
R-209の一部分からもくもくと煙が立ち上る。どうやらその発生源となった車型の宇宙船には支障はないようだが、その中の人間がどうかだ。
「Vorhin ist jemand in diese R-209 gekracht. Deshalb würde ich gerne mit ein paar Leuten hingehen und sehen, was da los ist... Hat jemand Lust, mitzukommen?」
十数人の男女が話し合っている。その場所は、数時間前に暮星家が住んでいたところだ。いつの間にか、コンセントには複数の線が刺さっており、机や床に通信機器やレーダーの画面などが雑に置かれていた。先ほどの男の声に数人が恐る恐る手をあげた。
「Jetzt macht sich jeder von Ihnen bereit, und ich werde auch eine Betäubungspistole mitnehmen, nur für den Fall, und wir treffen uns in zwei Minuten.」
手を上げた数名がそれぞれ自分の荷物を漁り、準備を始めた。まだ移動してきてから数時間しか経っていないからだろう、ロッカーなんてものはない。床に直に置いてある箱やカバンから小さく畳まれた服を引っ張り出し、立てかけてあった麻酔銃を手に取る。すぐに彼らは集合し、外へ出た。
「うう…」
飛貴が顔を上げる。
(何でこうなってるんだ…ああ、R-209に荷物を取りに…)
「R-209?!」
飛貴が急に飛び上がって叫んだ。しかしその頭上には、SKI704の屋根があった。すぐに頭をぶつけ、倒れた。弟と代わりに、次は一飛が飛貴の叫び声で跳ね起きた。
「びっくりした…っておい、飛貴、どうした!…あれ、ここどこだ…?」
一飛が周りを見渡す。その間に飛貴が起き上がり、頭をさすった。
「R-209だよ、兄ちゃん…墜落したんじゃん…」
「つ、墜落…」
一飛がその漢字二文字に絶望した。いろんなことが一飛の頭の中をめぐる。いつもはずっとゲームのことしか考えないが、今はそんなことは一切考えていないようだ。一飛のその目は、空を見ている。
「と、とりあえず家まで行ってみようよ…」
飛貴が起き上がり、ドアを開けて外に出る。その瞬間、カチャと冷たい金属音とともに飛貴の背中に冷たい筒が当てられた。
「ひっ」
すぐさま一飛の背中にも同様のものが突きつけられた。
「wer bist du Gib mir eine Antwort. sonst töten.」
先ほど暮星家をK-821へと追いやった無愛想な男―と思われる―が言った。その背後から小柄な男がひょいと顔を出し、男をなだめるように言った。
「Calm down, Adolf.」
「den Mund halten. Nennen Sie mich nicht bei meinem richtigen Namen.」
一飛と飛貴の周りを二人の知らない言語が飛び交う。しかしその言語は、それぞれ違う言語のようだ。
「Übrigens, wozu seid ihr hier?」
「Wait, maybe they don't have translators. I'll give you some spares.」
小柄な男がしゃがんで鞄を地面に置き、中からワイヤレスイヤホンのようなものを取り出して、一つずつ二人に渡した。
「What language do you speak? Hmm, say hello in your language, for example.」
二人はキョトンとした顔で男の仮面を見つめる。男は立っている男に言った。
「Adolf, show them an example.」
アドルフと呼ばれた男が耳から小さな機器を取り出し、「Guten tag」と話しかけた。
それを見た周りの人物も、次々に同じことをした。しかしその話しかける言葉は、それぞれ違った。
「あ、そういうことか!」
飛貴が手渡された機器に向かって「こんにちは」と話しかけ、そのまま左耳に装着した。
「ど、どういうことだよ」
一飛が顔をくるくると回して、周りの状況を理解しようとする。
「兄ちゃん、こんにちはって話しかけて耳につけて。」
弟に言われるがままにした一飛は、耳につけた途端に顔が明るくなった。
「なるほど、小型のリアルタイム翻訳機ってことか。」
「みたいだね。」
「すいません、僕たちわかりました。」
飛貴がしゃがんでいる男に向かって言った。その言葉は相手の耳にある機械を通り、相手の鼓膜へ、そして相手の脳と届いた。
「よかった。これでしゃべれるね。」
男が飛貴を見て―おそらく―微笑みながら言った。続けて小声で「アドルフに殺されないようにね」とも言った。しかし聞こえていたようだ。アドルフが男を睨みつける。
「本名で呼ぶなと言っとるじゃろが」
「はいはい」
男が立ち上がり、後ろへとはける。アドルフが今男がいたところに立ち、二人を見下ろした。
「お前らは何をしに来たんじゃ。答えろ。」
二人の背筋がピンと伸びる。そして顔を見合わせた後、飛貴が口を開く。
ガクガクする口をうまく動かしながら、飛貴は事情を説明した。
「さ、さっき、ここに住んでた、ひ、人なんですけど、忘れ物が、あ、あって…」
第五話 番外編
作者からのコメント
段々と豆知識が喋り口調になってくるんですけど。どうしよ。
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