第4話 R-209への帰還

「車ってどういうことだよ」


「どういうことってどういうこと?車で取りに行けばいいってことじゃん!」


「あぁ、なるほど。いや、お前免許持ってないだろ?どうやって運転するのか知ってるのかよ」


「見たらわかるでしょ!ほら、こうしてるうちに携帯もどっか行っちゃうよ!」


「いやいや、待てよ。あっ、ちょ待って!」


 飛貴は一飛の耳を引っ張ってSKI704に乗り込んだ。飛貴は一飛を助手席に座らせてエンジンを始動させた。


「痛いなぁ…てかおいおい、なんで鍵持ってるんだよ」


「置いてた」


「置いてたって…事故ったらどうするつもりなんだよ!」


「事故ったら事故った時だよ!兄ちゃんいくよ!」


 飛貴はエンジンを最大出力で稼働させ、一飛の携帯へと発進した。


「ほら、兄ちゃんは船外作業服着て取りに行ってよ!僕は待っとくから。あ、大気補給機…」


 飛貴は逆噴射エンジンを稼働させ、徐々に速度を落としていった。一飛は船外作業服を、飛貴は大気補給機をつけ、それぞれ準備をすすめた。


「じゃ、いくぞ。」


「うん。」


 一飛がドアを開ける。


 一飛はゆっくりとSKI704を離れた。


(よし、いいぞ…つかんだ!)


 一飛が携帯をつかむ。


 突然、飛貴の脳裏に兄の成績表が浮かんだ。


「あれ、兄ちゃん、船外作業のテスト…落として…た?」


 飛貴がハッと顔を上げると、そこには携帯を握る一飛の姿があった。しかしその背中にはあるはずの推進ユニットはなかった。


「に、兄ちゃん!!!」


 真空では音が伝わるわけもなく、飛貴の声は儚く消えた。


(このまま…あれ、どうやって戻るんだ?!)


 一飛は背中に手を当てた。


(推進ユニット…!)


 一飛はくるりと体を半回転させ、飛貴の方を向いた。


 ところがその時、無理に後ろを向いたため、一飛の背中に激痛が走った。


 激痛に悶えながらも飛貴の方を探しても、飛貴の姿とSKI704はない。


(あれ、飛貴は…? 俺…ここで死ぬのか…)


 すぐそこにK-821が見える。しかし、無防備の状態の人間は弱い。推進ユニットのない一飛には数千マイル離れたところにあるのと同じだ。


(どうせ死ぬなら空腹より窒息凍死の方がいいよな…)


 一飛は首の留め具に手をかけた。次の瞬間、急にK-821が離れていくように感じた。


(?!?!)


 痛みがまだ背中を覆っているので、後ろも向けない。そんな一飛はすぐに足元に数分前に感じたものを感じた。SKI704だ。


「ほんとに、兄ちゃんにはもう取りに行かせられないな」


 飛貴が運転席のボタンを操作しながら言う。いつもなら怒られることも真空状態では聞こえないので言いたい放題に言ったあと、飛貴はドアを閉めるボタンと大気を充填するボタンを押して空気の状態を安定させた。


「兄ちゃん、いつも勉強は役に立たないとかいってるけど役に立つどころか必要不可欠でしょ?」


 一飛は弟に正論を言われ、不貞腐れた顔をして窓の外を見た。


 二人を乗せたSKI704はゆっくりと動いた。K-821の方向とは真逆へ。


「お、おい、どこに行くつもりなんだよ」


 パッと一飛が飛貴の方を向くと、飛貴は前を向いたままきっぱりといった。


「兄ちゃんにも付いてきてもらうよ」


「付いていくって…どこに」


「…さあね。」


「どこか言えよ!俺は帰るぞ!」


「帰ってみれば?」


 一飛は外を向き、宇宙空間を見つめながら続けた。


「……はいはい。でどこに行くんだよ」


「…R-209に。」


「……は?」


一瞬、二人の間に沈黙があった。


「R-209って…お前死ぬぞ?」


「だから兄ちゃんを連れてきたんじゃん。」


「お前…ったく。」


 一飛がため息をつき、続ける。


「第一な、お前今どこにいるかわかってんのか?R-209への行き方も、戻り方も。」


「大丈夫。さっきは使わなかったけど、ハイパースピード航行の装置がついてる。」


「は?でもそんなのしたら一瞬でエネルギーなくなるぞ?」


「まぁまぁ、なくなったらなくなった時だよ!行くよ!」


「え、ちょちょちょっ、うわぁ!」


 飛貴が運転席と助手席の間にあるレバーを押し倒した。途端に周りが白い光の線が伸び、超空間に入る。そしてすぐにR-209の近くに超空間から出た。どちらかというと吐き出されたが。


「エネルギー テイカ。

 テイエネルギー モード ニ キリカエ マス。 スグニ ジュウデン シテクダサイ」


 静かな車内に、抑揚のない女性の合成音声が響く。


「ほら、言ったろ?」


 飛貴は不貞腐れた顔を下に向けた。突然、高い機械音が鳴り、合成音声の喋る内容が変わった。。


「ゼンポウニ ショウガイブツヲ ケンチ。 キンキュウカイヒプログラムヲ カイシ。」


「え? う、うわ、兄ちゃん!!」


 こわばった飛貴の視線は、どんどん近づくR-209へと向いていた。エネルギーが低下したSKI704は、撃ち抜かれた鳥のように、R-209へ真っ直ぐに飛んで、いや、落ちていった。


「「 うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 」」


 二人は声を合わせて叫んだ。そして、緊急回避プログラムも虚しく、SKI704という金属の塊はR-209へ不時着した。




作者のコメント

 急ピッチですすめているので、文がめちゃくちゃだったり、誤字脱字がありそうです…!

 ちなみにこの後はどうなるか、コメントで予想してみてください!笑

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