第3話 1歩目
数日経って俺は新たな一歩を踏み出そうとしていた。
週末俺は夕輝を誘い、大阪へと出かけた。
「大阪なんて小学生以来ちゃう?」
「ほんまやな。お前はしゃぎすぎて先生にブチギレられてたな笑。懐かしいな」
「うわーそんなこともあったけっな。自分の不幸って覚えれんタイプやから俺笑」
「都合のいい人間ですね、君は」
やはりこいつとの時間は落ち着くし、何も考えずに話せる。こんなしょうもない昔話を笑ってくれる友達を持てて幸せだと思った。
そんなこんなで大阪に着き、俺はなんばグランド花月に向かった。そう。お笑いライブだ。初めて見るお笑いライブにワクワクが止まらなかった。このワクワク感というと初めて親にゲームを買ってもらい寝る暇も惜しんでやっていた時に近しいものがあるのかもしれない。
真ん中やや後ろの席。心を躍らせながらゆっくりと腰を下ろした。今回はベテランの芸人もたくさん出るという情報を聞きつけ大阪へと足を伸ばしたのだ。
初のお笑いライブ、1組目、2組目と進み3組目にまさかの千鳥が出てきた。次世代のダウンタウンと謳われる千鳥を目の前で見れるなんて!興奮が今日イチに達した。会場がどよめく。揺れている。俺はアイドルのライブに来ているのか、とすら思うレベルの地響きだった。
あっという間に千鳥の漫才が終わり、腹が捩れるほど笑ったあとあと5組の芸人の漫才を見た。
「進太郎、初のライブはどうでしたか?」
「最高にいい経験になったわ」
「出た感出すのやめろよ」
「あーすまんすまん、でもほんまに俺でもいけるんかなって改めて心配になったわ」
「今回出た芸人さんはベテランばっか。上ばっか見過ぎたらあかん。まずお前スタートラインにすら立ってないんやから」
確かにと我に帰った。なぜか俺はもう芸人になったかのような感じで話していたがまだ何も始まっていない。
ライブ後、外で出待ちをしてみることにした。運良く前の方に陣取ることに成功し、いろんな芸人を近くで見ることができる。そして千鳥が来た。俺は必死で話しかけた。そしたらこっちを向いてくれた。
「俺芸人になりたいんです!今日の千鳥さんのライブを見て絶対こんなんになってやるって心に決めました!いつか千鳥さんを超えます!」
そしたらこっちに歩いてきて、
「なれるもんならなってみい。もっと大きなって待っといたるからの。いい目つきしとる。お前ならきっとなれるぞ」
きっとなれる…か。
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