第3話 怯えて泣いて、また泣いて
夜はベッドで、エルさんと一緒に眠る。私は夢を見ていて、その中で前世の記憶が、断片的に
私は左利きというか両利きで、そんな私に、祖父は古流剣術の技を教えてくれたようだった。その技を正確には思い出せないけれど、思い出せる言葉があった。「個性を大事にしなさい」と、祖父は私に語り掛けてくれたのだ。
「今の剣道は、型に
個性は贈り物。そう、祖父は言ってくれた。だけど私は同性の子しか愛する事ができなくて、そして私のような存在を受け入れない大人も居て。そして社会や同世代の子からの同調圧力があって、そこに感染症対策による行動制限などが加わって。
おそらくは耐えきれない程のストレスが、前世の私には
悲鳴を上げて、私はベッドから
エルさんは私の隣で横になって、まるで
「怖い夢を見たの……昔の記憶が戻って、そして分かった。もう私は、
「……そうか」
エルさんは私の言葉を待ってくれる。でも私には、もう話すべき事が思い付かなかった。前世がどうとかいう話をしても、理解されるのか分からなかったし。だから私は、エルさんの話を聞きたかった。子供が眠る前に、母親から子守歌を
「ねぇ、エルさん。この集落に付いて教えて。ここには女性しか居ないけど、それはどうして?」
「……何となくは、クロも理解しているだろう?
つまり森の種族は、人間族よりも人口は少ないそうだ。私は黙って聞いていて、引き続きエルさんが説明する。
「人口を増やせない種族は、決して社会の主流になれない。だから我々は他種族との争いを避けて、森の奥に小さな集落を複数、作って暮らしている。
「……バラバラに分かれるのも危険じゃない? 他の……その、私みたいな人間族が攻めてきたら、
「できないだろうな、攻め込まれたら終わりさ。だから森には
「でも……でもさ。
私だって馬鹿じゃない。この集落は良い人ばかりだけど、それでも
「クロが何を考えているかは分かってるつもりだよ。でも怪しいからと言って他種族を
エルさんが、
うえーん、と再び私が大泣きする。「どうしたんだ、
「だってエルさんが……エルさんが優しすぎてぇ……」
「クロを助けた事か? そんな大した事ではないよ。私達から見れば、人間族の命はあまりにも短い。私の十分の一の年月も生きていない、
「ねぇ、エルさん。私には帰る場所が無いの。だから私を
夜の
「……私だって、クロを傍に置きたいと思っている。だが、それは
「……どういう意味?」
「明日の
「何それ! 意味が分からない!」
「私も分からないが、そういうものさ。強い者は弱い者から、
エルさんが
「私は、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます