第46話 女の子の胸には男の夢が詰まっている(前編)
午後の体育の授業は隣のクラスと合同で行われている。体育館を半分に分けて男子はバスケ、女子はバレーボールをしているところだ。
俺と勝又は同じチームに割り振られ、ちょうど今は試合が終わって、休憩のターンに入ったところだ。ちなみにバスケの腕前は俺が中の中だとすると勝又は中の下だ。
「なあ、今日、俺に飛んでくるパスが異様に速いというか、殺気立っている気がするんだけど」
止まらない汗を体操服の袖で拭いながら勝又に話しかけると、勝又はメガネをくいっとあげてから目を細めた。
「陽、お前さんそれを本気で言っているのか? それはどう考えたって、陽と夜見さんが急に仲良くしているからに決まっているだろ。先週までは特に仲が良かったわけでもないのに連休が明けたら急に仲良くなってて、お弁当まで作ってもらっていちゃいちゃしながら人口降雪機から砂糖ばら撒くみたいなことしやがって、俺たち全員を糖尿病にするつもりか」
そういえば、休憩時間にも大久保さんが同じようなことを言っていた。俺としては特筆すべきことをした記憶がないのだけど周りから見たらそうでなかったのかもしれない。
きっとこういう時に言うのだろう。俺、また何かやっちゃいましたかというやつは。
「その心当たりがありませんって顔はマジで無意識なのか。お弁当食べてる時にお前さんが「これ美味しい」とか「ちょうどいい味付けだね」とか「朝は忙しいのに作ってくれてありがとう」とか言うたびに、夜見さんがちょっと恥ずかしそうにしながら「おおきに」とか「陽さんはこのぐらいの濃さの方がええかと思って」とか「一つ作るのも二つ作るのも一緒さかい」なんてことをウフフみたいな雰囲気出して話してんの丸聞こえだからな」
勝又が話したことはたしかにお弁当を食べている時に話していた。でも、別に普通なことだろ。美味しかったから美味しいと伝えるし、感謝も伝えるってことは。こんなことでバカップル認定されても困るというものだ。
「まあ、俺としては暮方さんが後ろを向いて食べてくれたおかげで、あのたわわをしっかり拝みながら食べれたから良しとしているが、他の連中は口の中がざりざりになるくらい砂糖を食わされているからな」
お弁当を食べてている時に後ろから勝又の視線を感じていたけど、あれは恨めしいという視線ではなくでただのエロ視線だったのか。
「それで、飯の時に暮方さんのたわわを堪能しただけじゃ物足りず、今は他の人も物色しているのか」
俺の横でブーブーと文句を垂れている勝又だが、話している時の視線はずっと俺の方ではなく、女子がバレーボールをしている方に向けられている。
「暮方さんで満足するとかしないとの問題じゃない。俺は広く世界中の女の子を愛してる。ただ、俺の一番の推しが暮方さんというだけだ。あの胸には男の夢が詰まっていると思わないか」
たしかに暮方さんは体操着を着ていてもボディラインが目立つし、大きく動く度に揺れている。その様子をぼーっと見ていた俺はきっと、さっきのバスケの試合でちょっと酸欠気味で脳に十分な酸素が行き届いていなかったのだと思う。だから、こんなことをぽろっと言ってしまった。
「ああ、男の夢があの胸には詰まってる」
― ― ― ― ― ―
ブックマークが1000件、レビューも100件になりました。ありがとうございます。
先日公開した大久保さんの回はコメントがたくさんで驚きました。ありがとうございます。
次回更新は1月19日午前6時の予定です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます