第21話 怪しいクーポン
高校生にもなればお菓子あげるからついておいでなんて言われてついて行くようなことはないだろう。
「そんなに心配しなくても大丈夫でしょ」
「せやろか、さっきも茜に手をつながれてそのまま外に行ってしまったさかい」
えっ!? だって、あれは暮方さんが掴むようにしてつないでそのままの勢いで……。
「……もしかして、夜見さん、さっき俺が暮方さんに連れ出されたことに嫉妬してる?」
「し、嫉妬なんかしてへんよ。ただ、陽さんは隙が多いかなと思います。そんなに隙が多いと他の子に狙われた時に困るさかい……」
後半にいくにしたがって夜見さんの口の動きは小さくなってもにょもにょという感じで聞き取ることができなかった。
「俺のことなんか狙う人いないから大丈夫だろ」
「そういうところが危ない言うてるんです。まあ、今のところは大丈夫そうやけど。それよりも、お昼なんですが、さっきのお店で会計の時にこれをもらったんでどうかなと」
夜見さんが差し出したのはこの近くのファッションビルに入っているハワイ発のハンバーガー屋さんのクーポン券だった。俺が驚いたのはこのクーポンの特典が支払総額から50%オフと書かれていたことだ。
これちょっと割り引き過ぎじゃないか。こういうのってポテトのサイズがお値段そのままでワンサイズアップとか商品の値引きも100円とかまでが一般的な気がする。
はっと、思った瞬間に周りを見渡したら、やっぱりいた。少し離れた建物の陰に一瞬だけどその姿を確認できた。口にドーナツを咥えた小学生女児と怪しさ満点のおじさんが。
「どないしたの、急に?」
「い、いや、誰かに見られている視線を感じて……、ううん、ただの気のせいみたい」
おそらくこのクーポンは俺たちをこのお店に誘導するためにうーたん達が仕込んだものだろう。どうしてこのお店なのかはわからないけど、俺たちがこの誘導に乗らなかったらきっと他の手を打ってくるにちがいない。彼らは大沼荘にトラックを突っ込ますぐらいのことをするんだから。
「せっかくお得なクーポンをもらったから利用しようか」
ということで、俺たちはこのクーポンが使えるハンバーガーショップにやって来た。普段お世話になっているようなハッピーなセットが置いてあるお店に比べると価格設定がだいぶ高い。半額クーポンでやっと同じくらいの価格になる。
夜見さんはえらいお得やわぁなんてお気楽なことを言っているが、俺はこれから何が起きるか気が気じゃない。これからドッキリがあるとわかっているのに気付いてないふりをする芸能人ってこんな気分なんだろうか。
最初は注文したハンバーガーに何か細工がされるかもしれないと思って、わざといつもなら注文しないようなベーコンバーガーを注文して様子を見てみたが特に変わった様子はなかった。ちなみに夜見さんはアボカドバーガーを注文した。女の子ってアボカド好きだよね。
食事をしていても何か特別なことが起こることもなく、普通に食べ終わってしまった。クーポンはうーたん達の仕業だろうけど、そこで何か問題が起きるなんてことは考えすぎだったのだろうか。
疑ったことをすまないと思いながら、食べ終わったものを片付けるべくトレーやコップの返却場所に来て、どうして、この店に誘導されたのかがわかった。そして、疑ってすまないという気持ちも取り消すことにした。
だって、返却場所で元カノを寝取った
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