第186話 かまくらとお汁粉
雪が降った。
昨晩は一層と冷え込み、夜半すぎから雪が降り始めたのだ。
朝、起きて外に出ると一面の銀世界となっていた。
「ふぁ~、さみぃ~」
俺は朝の歯磨きをしながら、雪景色を眺める。
ルンは寒かったのか、今日は布団から出てきていないな。
代わりに俺の後頭部にポポがひっついている。
「ぷぽぷぽ!」
「ガラガラガラ、ペッ。ん? ポポは雪が初めてか?」
ポポが俺の後頭部で興奮気味だ。
ぴょんこと俺から飛び降りて、まっさらな雪に小さな足跡をつけた。
「ぷぽっぽ!」
ポポが雪を触っては手を引っ込めたりしている。
「ははっ。冷たいだろ? ポポ、風邪をひくなよ?」
「おはようございマス、こうへいサン。わぁ! 雪が積もってマス!」
キキが厚着をして外に出てきた。
「ああ、おはようキキ。魔大陸には雪は降らないのか?」
「降ることもありますガ、ここまでは積もりまセン」
そうなのか。どちらかというと魔大陸は温暖だったな。
話によると、雨季と乾季があるらしい。
「クルルゥ!」
「キュアッ!」
ヴェルとアウラも外に出てきて、おっかなびっくり雪に触っているポポと混ざる。
「ぷぽぷぽ……」
ポポが先輩面をしてヴェルとアウラに雪の説明をしているようだ。
さて、雪と言えば……かまくらだな!
「じゃあキキ。俺たちはかまくらを作るか!」
「え? え? かまくらですカ?」
俺とキキは倉庫にスコップを取りに行く。
「まずは山を作るぞ!」
「? ハイ」
俺とキキはスコップで雪を集めると、山を作り始めた。
動いているとあっという間に体も熱くなってくるな。
ちょっとした運動だ。
小一時間でそこそこの丸い山が出来上がった。
これをキキと一緒に踏み固めていく。
「次は中をくり抜くんだ」
「はい、こうへいサン」
ここまでくれば、キキも何を作っているのか分かったらしく、手が速まる。
しばらく雪を掻き出せば、かまくらの出来上がりだ!
「わぁ! 中はあったかいんですネ」
俺はキキの言葉にウンウンと頷きながら、ちょっとしたテーブルと椅子を雪で作った。
「ぷぽっぽ!」
「クルルゥ♪」
「キュアッ♪」
ポポとヴェル、アウラもかまくらの中に入ってくる。
キャッキャと楽しそうだ。
俺は霧夢の腕輪から温かいお茶を取り出すと、キキと二人で毛むくじゃら達の遊びを眺めるのだった。
ウッドゴーレムのウノとドスが家の前で餅をついている。
なかなか出番がないウノとドスだが、なかなかどうしてこの二体は手先が器用なのだ。
秋の収穫のときなんかは大活躍だったしな。
俺はお汁粉を作るべく厨房へと足を向けた。
ウノとドスに任せておけば餅はオッケーだしな。
こないだスティンガーの町で仕入れてきた小豆もどきを霧夢の腕輪から取り出す。
例のごとく、市をうろついていたら見かけたので買っておいたのだ。
小豆もどきをさっと洗って、たっぷりの水で強火で煮込む。
灰汁が出てくるので、取りながら煮込み続ける。
十分弱煮込んだら、ざるにあけて水気を切る。
小豆もどきの四、五倍の水と一緒に強火にかけて、沸騰したら中火に。
常に小豆もどきが水にかぶっている状態になるようにし、差し水をしながら指で簡単に潰せるくらいになるまで約一時間煮た。
ちょいちょい、灰汁も取り除いてな。
小豆もどきが柔らかくなったら、
さらに塩を加えてかき混ぜながら弱火に。
うん、こんなもんかな?
俺は火を落として餅の具合を外に見に行った。
ぺったん、ぺったん
ウノとドスが次々と餅を作っていく。
うんうん、餅も順調だな。
俺は出来上がった餅を霧夢の腕輪に仕舞うと、再び厨房へ。
かまどに金網を用意して火をつける。
出来上がった餅を網の上に乗せて軽く火で炙った。
香ばしい匂いが立ち込めて、お汁粉の甘い匂いと混ざっていく。
「ぷぽぷぽ!」
お? 匂いにつられてポポがやってきたな。
「今は、お汁粉を作っているんだ。もうすぐ出来上がるから、待っててな」
「ぷぽー」
ポポの横に出た耳がピョコピョコと動く。
小さな鼻もピクピクしている。
俺は次々と餅に焼き目を付けていった。
お椀にお汁粉をよそい、餅を投入!
よし! 出来上がりだ!
「出来たぞ! ポポ」
ポポにお汁粉一号を手渡す。
お椀の大きさとポポの大きさがほぼ一緒だな。
俺は霧夢の腕輪から匙を出してお椀に入れてやった。
「ぷぽっぽ♪」
ポポは両手でお椀を抱えるとポテポテと外に出ていった。
ん? どこで食うんだ?
俺はポポの行き先が気になり、後をついていく。
ポポは外に出るとかまくらの中に入っていった。
そっと中を覗いてみると、ヴェルとアウラにお汁粉を食べさせているポポの姿があった。
俺はウンウンと頷くと残りのお汁粉を完成させるべく厨房へと戻る。
ウノとドスが作った餅も回収してな。
厨房に戻り、次々と餅に焼き目を付けては霧夢の腕輪に仕舞う。
今度、おかきなんかを作っても良いかもな。
「コーヘ、いいにおいする」
おっとノーナも来たか。
厨房の入り口にノーナがちょこんと立っていた。
人差し指を口に当てて、アホ毛がピョコピョコ動いている。
「おう、お汁粉を作っているんだ。おやつに皆で食べようか」
「あい! おやつ!」
俺はぴょこんと跳ねるノーナを横目に見つつ、餅を焼き続けるのだった。
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