第184話 鍛冶場ダンジョン
「鍛冶場、ですか?」
俺はいま、ドワーフの少女のクーデリアに鍛冶場の提案をしていた。
「ああ、前に簡単なものなら作れるって言っていたろ? それに戦利品に鍛冶屋の金槌なんかもあるからな。クーにどうかと思って」
「う~ん……」
おろ? なにやら反応が芳しくないぞ?
クーデリアは人差し指をその綺麗な
クーデリアのその手には氷雪の指輪が光を反射して水色に輝いていた。
「何かあるのか?」
俺は疑問に思い、クーデリアに尋ねてみる。
「いえ、炉を作るのに手間と材料がそれなりにかかるので……それほど鍛冶をしないであろうこのボクとしては、遠慮したくなると言うか……」
なんだ、そんな事か。
「そんな事なら構いやしないさ。クーの好きなタイミングで鍛冶をすれば良い。こっちも何か頼むかも知れないしな」
ということで、鍛冶場を作ることになった。
問題は場所だよな。
広場に作ると音が凄いことになりそうだ。
ということは……ダンジョンだな!
俺はクーデリアと分かれてティファの部屋まで行くと、扉をノックした。
―コンコン
「ティファいるか?」
ガチャリ
「はい、マスター。どうしました?」
「おう、実はダンジョンに鍛冶場を作ろうと思ってな。ティファに相談しに来たんだ」
「鍛冶場……ですか」
おっと、ティファもなんだか乗り気じゃないぞ?
「今、転移石の間の下に温泉ダンジョンがあるだろ? 横か下に階層を作って鍛冶場を設けたいんだが……どうだろう?」
「温泉ダンジョンの横は拡張する可能性もあるので避けたいですね……すると、やはり下の階層でしょうか」
ティファが手のひらを頬に当てつつ首を
ティファの手にはまった冥闇の指輪がキラリと光る。
俺はティファを連れて、倉庫の地下へと足を向けた。
階段を降り、設置してある転移石を横目にさらに地下へ。
階段を降りきると温泉ダンジョンだ。
ここからさらに地下へと赴く階段を作成する。
俺は地面に手を当てて、大地の力を流し込んだ。
さらに地下へと降りる階段がみるみるうちに出来上がっていく。
出来上がった階段を降りて、ちょっとした広間の空間を作成。
「マスター。ここからはダンジョンポイントを使っていきましょう」
「おう、分かった」
ポン、とウィンドウが立ち上がる。
いつ見ても不思議なウィンドウなんだよな、コレ。
ティファ曰く、ダンジョンを造った混沌神の御力の賜らしいが詳しくは知らない。
「え~っと、どれどれ……」
俺は多岐にわたるダンジョンウィンドウのページをめくる。
たしか、ダンジョン拡張の項目だったな……。
「マスター、温泉ダンジョンと同じ様にフィールドは森でいいかと。コストがかかりませんので」
ティファに言われるまま、フィールドの森を選択。
広さは温泉ダンジョンと同じでいいか。
以前と同じ様に森のフィールドでボス部屋を選択。
薄暗かった地下室が明るくなり、地面からニョキニョキと木が生えてきた。
すぐそこにあった壁がズワッと広がる。
「相変わらず凄いな」
俺は次々と生えてくる草木を眺めた。
植物の成長記録の早回しのような様相だ。
あっという間に地下の三階層に森のフィールドが出来上がった。
中心がポッカリと開けた森の一角だ。
「マスター、これで完了ですね。ワタシは戻ります」
「おう、ありがとな。ティファ。ついでにクーを呼んでくれるか?」
「わかりました、マスター。では」
ティファが階段から地上に戻っていく。
俺はそれを横目に手頃な場所を探すと、鍛冶場を作るべく地面に手をつけた。
イメージとしては石造りの建物だ。
以前に行ったドワーフの国の地下遺跡を思い出しながら、建物を作成していく。
森の開けた場所の中央に石造りの建物が出来た。
そこへ、クーデリアがやって来る。
「コウヘイさん、こちらが鍛冶場ですか?」
「ああ、俺なりに作ってみたんだがどうだろうか?」
「はい……問題ないと思います。炉はどうでしょう?」
「炉か。炉はこれからなんだ」
俺たちは出来上がったばかりの建物に入った。
中はまだ、物もなくガランとしている。
「炉はどこに設置すればいいんだ?」
「ええと……ボクは奥が良いと思います」
炉は奥ね。
俺は建物の奥に行くと、霧夢の腕輪から魔力のつまった土を取り出した。
「あ、コウヘイさん。アダマンタイトとミスリルを少量混ぜると火力に耐えうる炉が作れますよ」
ふむふむ。
俺はクーデリアの言う通りに魔力のつまった土とアダマンタイトとミスリルを大地の力で混ぜ合わせた。
できた材料でイメージを頼りに炉を形作る。
排出用の煙突も建物を貫通させた。
炉がイメージ通りに作られるとポワッと一瞬輝く。
「これで一応、完成。かな」
「はい、ありがとうございます、コウヘイさん」
見るとクーデリアはニコニコと微笑んでいた。
仮にもドワーフだからな。
鍛冶仕事をしたいときもあるだろう。
後はクーデリアが必要な物を揃えていくという話になり、俺たちは地上へと戻るのだった。
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