第182話 ダンジョン整備






「今日だけで回るのか?」


「ええ、マスター。こういう事はまとめて片付けるのが吉です」


 表情も少なめにティファが胸を張る。

 俺とティファは拠点の地下の転移石が置いてある部屋にいた。


「マスター、まずはスティンガーのコアへ行きます」


「分かった」


 転移石が置いてある台に手を伸ばすティファ。

 俺はティファの肩につかまった。


 一瞬で景色が切り替わる。

 ここは……見覚えがある。

 スティンガーのダンジョン、最下層の秘匿ルームってところだな。


「……マスター、お待ちしておりました……ジジジ」


 俺の身長以上も有る大きさの石が光とともに音声を発する。

 周りには相変わらず見慣れない文字のようなものがぐるぐると回っていた。


 コンクリートのような四角い部屋で俺とティファはダンジョンコアと相対する。


「では、マスター。いつものように力をお願いします。」


「是……エネルギーの補給を要求します……」


 ティファとダンジョンコアから催促だ。

 おし、と俺は気合を入れるとダンジョンコアへと近づいた。


 一見するとただのデカい転移石のようなダンジョンコアに触れる。

 俺は大地の力をダンジョンコアに流し込んだ。


 ポワッ

 ダンジョンコアが謎の光現象で光る。


「ジジジ……今回はこれで充分です。ありがとうございます……」


 しばらくするとダンジョンコアから充分との声がかかった。

 一応、俺は何か不備が無いか探査もしておく。

 うん、今回は特に何もないな。

 前はいつの間にか地脈に邪神の欠片が埋め込まれていたからな。


「ジジジ……ダンジョンポイントで拡張しますか?……」


「いや、今回も特にはいじらない。なにか問題あったか?」


「解……特に問題はなく、好調です……」


 好調なのか。

 それなら問題ないな。

 俺はウンウンと頷くとティファに向き直った。


「ティファ、これでスティンガーのダンジョンは大丈夫だな? 次はどこへ行く?」


「次は魔大陸のダンジョンですね、マスター。サッと回ってしまいましょう」


 ティファがダンジョンコアに触れる。

 俺はまたティファの肩につかまった。


 一瞬で景色が切り替わると、そこは魔大陸のダンジョンらしかった。


「ティファ、ここはどこだ?」


「マスター、百鬼迷宮です」


 百鬼迷宮か、前はリトルベヒーモスにひどい目に遭わされたんだよな……。


「チチチ……待っていたわ、早速だけどワタシに力を注ぎなさい……チチチ」


 うん? 前も思ったけどこのコアなんか偉そうだぞ? まぁいいか。

 俺は鼻で息をつくと、ダンジョンコアに触れ大地の力を注ぎ込む。


 ポワッ

 ダンジョンコアが一瞬、光輝く。


「チチチ……もう充分よ、マスター。また時期が来たら来なさい……チチチ」


 俺はダンジョンコアに言われるまま手を離す。


「マスター、次が控えています。行きましょう」


 ティファがそう言いながらダンジョンコアに近づいた。

 俺も遅れじとティファの肩につかまる。

 一瞬で景色が切り替わる。

―ここは……。


 見覚えがあるな。幽霊船だろう。


「チーーー……待っていたわ。マスター……チーーー」


「おう」


 俺は早速ダンジョンコアに触れると大地の力を注ぎ込んだ。

ポワッ

 例のごとくダンジョンコアの全体が一瞬光輝く。


「さくさく行きましょう、マスター」


 ティファに促されて先を急ぐ。

 まぁ別にこの後何か用事が有るわけじゃないんだけどな。


 アイオリス火山、骸魔墓地、天空の城、海底洞窟、虚空のダンジョンと、大地の力を注いで回った。

 一応、探査も兼ねて様子を見たが、邪教徒の連中が何か悪さをした様子は見受けられなかった。


「ふぅ、魔大陸はこれで大丈夫だな?」


 虚空のダンジョンコアに大地の力を注ぎ終わった俺はティファに声をかける。


「はい、マスター。最後は竜の巣です」


 おっと、そうだった。

 あそこも統合したんだったっけ。

 俺はダンジョンコアに触れるティファの肩につかまった。


―ここも見覚えがあるな。

 俺は一瞬で切り替わった景色をキョロキョロと見回す。


 いつだったか、ここでガーベラと立ち合ったんだよな。

 今、同じことができるか? と言われたら、果たして俺は動けるのだろうか?


「チキチキ……来たわね、マスター。待ちかねたわ……チキチキ」


 ここのダンジョンコアはなんだかお姉さんっぽいな。

 各ダンジョンコアにも個性のようなものが見受けられて興味深い。

 きっと長い年月の中で個性が芽生えていったんだろう。


「そう言えば、魔大陸のダンジョンが七つ。夢の世界の敵も七匹だったな。何か意味があるのだろうか?」


「マスター? ご存知ないのですか? 七という数字は神の数字です」


 神の数字だって? 初耳だぞ!? この世界では常識なんだろうか?


「そうなのか? さっぱり知らなかったな……」


「はい、マスター。四が獣の数字、五が人を表します。」


「へぇ、そうなのか……じゃぁ六は何だ?」


「悪魔ですよ、マスター」


 悪魔かぁ。夢の世界で相対したな。

 なかなか手ごわい敵だった。


 俺はティファとそんな事を話しながら、竜の巣のダンジョンコアに大地の力を注ぎ込む。


「チキチキ……もう充分よ、マスター……チキチキ」


 俺はダンジョンコアに促されて手を離す。

 ここも一応、探査をしておいた。

 問題は無いようだな。


「すると、ティファ、魔大陸の主だったダンジョンが七つというのは何か意味があるのか?」


「はい、マスター。太古の昔に魔神を封じた名残といわれています。人の世に伝わっているかは存じませんが……」


 そうなのか! それは多分ミーシャ達も知らないんじゃなかろうか。


「封印は大丈夫なのか? ティファ」


「はい、マスター。遥か昔の出来事ですし、他の神々が封印を施しているので」


 ふむふむ。それなら良いんだ。

 俺とティファはそんな事を話しながら拠点の地下へと帰るのだった。






――――――――――――


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