第181話 別荘でパスタ






 今日は神樹の森の別荘に来ている。

 最近はだいぶ寒くなってきたな。

 間もなく冬の季節だ。


 俺は神樹の森の別荘の大樹を降りると、前に作ったお地蔵様とロキ神の像を見に行った。

 ルンに跨ったポポがポムポムとついてくる。

 大樹から少し奥に入った所に像はある。


 しばらく歩くと二つの像が目に入った。

 ここも建屋を作った方が良いのかな?

 見ると少し埃が着いていたのでサッと払った。


 俺はおもむろに霧夢の腕輪から木材を取り出すと、大地の力を流して雨風をしのげる建屋を作成。

 ニョキニョキっと、こんなものかな?


「ぷぽっぽ」


 ポポが跨ったルンがみょんみょんしている。

 上下するポポとルン。

 俺はお供物の台の上にクッキーをお供えすると、二礼二拍手一礼をする。

 ポワンと像が光ると、お供物がフッと消えた。


 これでよし。

 俺はグイッと伸びをすると、神樹の森の集落へと足を進めるのだった。


 前に見かけた麺を取り扱っている民家に立ち寄る。


「先生、今日はいい天気ですな」


 民家ではエルフのおじさんに声をかけられた。


「ええ、だいぶ寒くなって来ましたが」


 俺は挨拶を返すと、中の麺を物色した。

 ここの麺は美味いんだよな。

 魔障の一件以来、俺はエルフの人たちから先生と呼ばれるようになった。

 いや、俺は先生ってガラじゃないんだけどな。


「え~と、この辺りの麺をいただきたいんだが……」


「麺ですか。先生ならいくらでも!」


 みんな俺に物を押し付けようとしてくるんだよね。

 それではいかん、ので対価となるものを渡すようにしている。


 俺は霧夢の腕輪から一抱えほども有る岩塩を取り出すと、対価の代わりに置いた。

 麺は~、これくらいが適正かな? 適量の麺をいただいて霧夢の腕輪に入れた。


「ありがとう。また来るよ」


「はい。先生、また」


 麺を取り扱っている民家を後にすると、俺は自分の別荘に戻ることにした。

 相変わらずルンに跨ったポポがポムポムとついてくる。

 上を見ると、巨木同士につながった吊り橋が確認できる。

 木にへばりつくように建てられた建物も目に入る。


 一息深呼吸すると、濃密な森の香りが鼻孔をくすぐった。

 別荘のある巨木の根本にたどり着く。

 巨木の周りに設けられた螺旋階段を登って別荘の中へ。


「ぷぽぷぽ」


 ポポとルンもポムポムと階段を登ってきた。


「おや? 帰って来たのじゃ」


「あなた様、おかえりなさい。お邪魔しております」


「ウォフ」


 ゼフィちゃんとアルカのお出迎えだ。

 いつの間にか来ていたらしい。

 神獣も秋田犬サイズだ。


「おう。飯食ってくか?」


 俺は厨房に向かいながら、ゼフィちゃんとアルカに声をかける。


「うむうむ。コウヘイが作るものは何でも美味いからのう。お呼ばれするのじゃ」


「はい、あなた様。お邪魔でなければ」


 二人共、長い銀髪を揺らしながらニコニコとしている。

 窓から入った日差しが反射して髪がキラキラと輝いていた。


「妾もたまには手伝うのじゃ」


 ゼフィちゃんが平らな胸を張り、フンスフンスと鼻息をつく。


「叔母上、料理なんてしたことないでしょう?」


「簡単なものなら問題ないのじゃ」


 う~ん。何か簡単なものかぁ……。ちょうど麺をもらってきたし、パスタでも作るか!

 俺は作業台の上にもらってきた麺を出し、その他の材料のキノコやバターなどを出していった。


「うむ? これで何ができるのじゃ?」


「あなた様、何か手伝えるでしょうか?」


「ウォフ」


「ぷぽ?」


 ん? キノコパスタを作ろうと思うんだが、ポポと神獣はさすがにな……。

 ポポの手は小さいし、神獣は手が使えないからな。


「うん。それじゃあキノコを小さく切って、玉ねぎもどきをみじん切りにしてもらえるか?」


「任せるのじゃ!」


「はい、あなた様」


 ゼフィちゃんとアルカがキノコに取り掛かっている間に俺はフライパンに火をかけた。

 麺は生麺タイプなので湯は張らなくてオッケーだ。


 バターをフライパンに適量あけて、みじん切りにされた玉ねぎもどきを炒める。

 しんなりするくらいまで火を通してっと。


 次に小さく切られたキノコたちを加えて炒める。

 これもしっかりと火を通す。


 そうしたら霧夢の腕輪から生クリームを取り出して塩と胡椒しながらフライパンにあけた。


 こんなもんかな?

 最後に生麺を投入。

 サッと混ぜ合わせると出来上がりだ!


 火を止め、作業台の上に皿を用意して、そこに出来上がったパスタを分けた。


「あっという間なのじゃ!」


「いい匂いです、あなた様」


「ウォフ!」


「ぷぽっぽ!」


 スライムのルンもポポを乗せたままミョンミョンしている。

 皆で皿を持ち、ダイニングへ移動。


「さ、いただいちゃおうか」


 木製のフォークでクルクルとパスタを巻き取ると口の中に放り込んだ。


「うん、美味いな」


「美味なのじゃ!」


「美味しいです、あなた様」


 ゼフィちゃんとアルカはニコニコしながらパスタを口に運ぶ。


「ウォフ!」


「ぷぽぷぽ♪」


 神獣とポポもご機嫌だ。

 ルンもパスタを取り込んでは、シュワシュワぷるぷると忙しい。


 いや~、神樹の森の麺はやっぱり美味いな。

 俺も自分で麺を作ってみたんだが、なかなかこの味は出ないんだ。


 俺は皆が上機嫌に食事を進めるのを眺めながら、自分もパスタを口にはこぶのだった。






――――――――――――


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