古の魔王

第179話 ロキ神のお告げ






「……くん、耕平くん」


―んん!? なんだ?

 頭にはモヤがかかっているかのようで、体は鈍く重い。


「やぁ。ボクだよ~」


 暗闇の中、俺は目をこらしてみた。

 目の前には俺をこの異世界に拉致、もとい連れてきたロキ神がいた。

 少年のような様相でトーガのようなものを身にまとっている。

 足元はサンダルだ。


「おう、しばらくぶりだな。何の用?」


「耕平くんったらつれないな~。キミとボクの仲じゃないか~」


 あいかわらず飄々ひょうひょうとしたロキ神は俺にそんな事を言ってきた。

 ここは夢の中なのか? 辺りには霧のようなものが立ち込めているだけで何もない空間だ。


「お供物そなえものはちゃんと届いているか?」


 俺がロキ神に尋ねる。


「うん、届いているよ~。その事なんだけど~耕平くん、神の破片を送ってきたでしょ?」


―神の破片? あの混沌神の欠片のことか!


「ああ、何か問題あったか?」


「い~や~? お礼を言いたくてね。これが集まれば彼女・・が復活できる。あの子は可愛そうな子なんだよ~」


 ふむふむ。神の世界のことはさっぱり分からんが、なにやら上手くいっているようならそれで良し。


「これからも彼女の破片を見かけたらボクの所に送ってちょうだいね~」


「おう、分かった」


 邪神のヤツらと、この先も関わるか分からんが、まぁまたどこかで会いそうな気もしているしな。

 物のついでだ。


「それで~、お礼なんだけど~。お告げをします!」


 ほうほう、ロキ神のありがたいお告げか。

 俺は身を正した。正座で座る。


「この世界で~間もなく~古の魔王が~復活する~でしょう~」


―なんだって!? おとぎ話に出ていたらしい魔王のことか?


「それにともない~対の存在の~勇者が~召喚される~でしょう~」


―なんかきな臭くなってきたな!? 勇者だって?


「以上です~。耕平くんは~別に魔王を退治しようなんて考えなくていいからね~?」


 いや、魔王討伐なんてこちらからお断りなんだぜ。

 俺はのんびりしたいんだ!


「分かった。魔王には関わらないようにする」


「うんうん。じゃあ頑張ってね~。良き異世界ライフを~」


 ロキ神がそう言うと霧が増えてきてロキ神を隠した。

 辺りは暗くなっていく……。



 朝日が窓の隙間から差し込んでくる。外には小鳥のさえずる音が聞こえる。

―もう朝か。


 久しぶりにロキ神に会ったな。いや、会ったというべきなのかどうか分からないが。

 俺はベッドの上で身を起こすと、グッと伸びをした。


「ふぁ~……」


 目をこすりながら脇に目を向けると、チェストの上にある籠の中のヴェルとアウラが身をよじる。

 スライムのルンも、もぞもぞと起き出してベッドの上を移動した。


「おはよう、ルン」


 俺は大地の力で作ったタオルを片手に外に出た。

 顔を生活魔法の水球で洗い、歯ブラシを口に突っ込む。

 歯ブラシも大地の力で作ったやつな。これは三本目だ。

 頭にはルンが乗ってミョンミョンとしている。ご機嫌だな。


 そうこうしていると、倉庫の方からお風呂セットを持ったティファとアルカ、ゼフィちゃんがやって来る。ホカホカだ。


「おはよう」


 俺は三人に朝の挨拶をする。


「おはようございます、マスター」

「あなた様、おはよう」

「うむ。おはようなのじゃ。いい朝湯じゃった」


 三人は湯上がりで頬が上気していて色っぽい。

 するとヒョウと風が一陣吹いた。


「湯冷めするといけないから早く中に入った方がいいぞ?」


「はい、マスター。そうします」

「ええ、あなた様も朝湯どうです?」

「ダンジョンを風呂にするとは、やりおるのじゃ」


 三人はいそいそと拠点の小屋、もとい屋敷だな。中に入っていった。

 俺は歯を磨きながらそれを見送った。


 水球の水で口をゆすぎ、タオルでぬぐう。

 さて、朝風呂かぁ。どうするかな~。

 頭の上でルンがミョンミョンと主張してくる。

 おっ。ルンは朝風呂に入りたいのか。


 俺は自分の部屋へと向かうと、お風呂セットを出した。


「キュアッ」

「クルルゥ」


「おう、二匹ともおはよう。朝風呂入るか?」


「キュア♪」

「クルル♪」


 そうかそうか。なら皆で入るか。

 俺は頭にルンを乗せて、ヴェルとアウラの入った籠とお風呂セットを持って倉庫へと向かった。


 倉庫の地下、転移石を設置してある階を横目にさらにもう一階おりていくと、温泉ダンジョンだ。

 以前作った脱衣所で服を脱ぐ。


 手に持った風呂桶にはヴェルとアウラ。頭の上にはルンだ。

 洗い場でさっと体を流す。

 ルンがポムポムと俺の足に体当たりをしてくる。いつものだな。


 石鹸の泡でルンをキュッとつかんでにゅるん、ポンッと飛ばす。

 明後日の方向に飛んだルンは、また俺の足元によってくるのでしばらく繰り返す。

 その合間にヴェルとアウラを洗ってやり、俺も体を洗った。


 さて、今回はどの風呂に入るか……。

 こういうのを贅沢って言うんだろうか?

 一番デカい露天風呂風の風呂を選んで、湯船に浸かる。

 ルンはプカプカと浮かび、ヴェルとアウラは浮かべられた桶の中に入っている。


「ふぃ~っ。しっかし魔王かぁ。復活したらどうなるんだ?」


 俺はそんな事を疑問に思いながら、湯船の中で体を伸ばすのだった。






――――――――――――


 拙作を手に取って頂き誠にありがとうございます。



 もし面白いと思った方は評価やフォロー、応援をして下さると作者のモチベーションが上がります。



 面白いと思った方は評価を☆三つ、詰まらないと思った方は☆を一つでかまわないので付けてくださると参考になります。



 よろしくお願い致します。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る