第176話 夢から目覚めて






「ぷぽっぽ!」


 ポポが妖精剣の光る刀身を消すと、柄を脇の下に潜り込ませる。

 ポポの脇の下はどうなっているんだ? 謎だ。


 妖精剣をしまったポポはルンから降りると白い粉の山へと向かった。

 白い粉の山をガサゴソと漁るポポ。

 端から見ると砂場で遊んでいるように見えるな、コレ。


「ぷぽ!」


 ポポが喜々としてドス黒い石のようなものを頭上に掲げている。


 ~~~~~

 邪神の欠片

 #$+*&@

 ~~~~~


 鑑定してみると案の定のブツだ。

 ポポがポテポテと俺の方に歩いてきて、邪神の欠片を手渡してくる。


「ぷぽっぽ」


 はいはい。コレを浄化すれば良いんだな?

 俺は受け取ったドス黒い石の邪神の欠片に大地の力を流す。

 邪神の欠片から黒いものがポロポロと落ち、透明度が増していく。

 黒いものが蒸発するように消えると綺麗な緑色の石に変化した。


―どうだ?

 俺は綺麗な緑色の石を鑑定する。


 ~~~~~

 混沌神の欠片

 混沌神の体の一部

 ~~~~~


 ……これで一件落着か?


「ぷぽぷぽ!」


 いつの間にか中央の台座のそばに立ち、台座をタシタシと叩くポポ。

 おっと、この塔の浄化がまだだったか。


 皆がポーションで回復している中、俺は中央の台座に近寄った。

 俺は台座に手をつき、大地の力を流し込む。


 煤で汚れていたような塔の内部は黒い蒸気を吐き出した。

 俺を中心に台座から修復されていく塔内。

 真っ二つに割れた天井から、大きく破壊された壁も早戻しのように直っていく。


 気のせいかキラキラと輝くような塔内を見ていると俺たちの目の前に薄ピンク色の霧がたち込める。


『キミたち、そろそろ戻ってきなさ~い。聖女ちゃんが目覚めるわ。お姉ちゃんもそろそろ眠い……』


薄ピンク色の霧が一条の霧を伸ばし細長い長方形を作ると、あたりにエウリフィアの声が響いた。


「これ、もう向こうと繋がっているのか?」


 俺は不安定に揺れるゲートのような物を指差し、皆に尋ねる。


「どうだろう? 戻れるならば戻ったほうが良いのではないか?」


 ミーシャが腰に手を当てて首を傾げながら答えた。


 ふむ。なら早速、皆で戻るとするか。

 俺たちは一人づつ薄ピンク色のゲートへと身を潜らせた。



「おかえり~」


 戻ると教会の一室でエウリフィアは長椅子に寝そべりながらフルーツの盛り合わせを食べていた。


「モグモグ……ング、どうだった~?」


 だらしない格好でエウリフィアが尋ねてくる。


「どうもこうも、また邪神の手先がいたぞ……」


 俺はため息をこらえつつエウリフィアに答える。


「ええ~? アイツらも暇ねぇ」


 エウリフィアは怠そうに身を起こすとそう言った。


「フィア、こっちは変わりなかったか?」


「ここ三日は特に変わりなしよ~。そう言えば、二日目からシスターちゃんが顔を出さないわねぇ」


「三日!?」


 なんと! 俺たちがニヴァリスの夢の中にいる間に三日の時間が過ぎたらしい。


「うう……」


 寝台に寝かせられているニヴァリスが身じろぎをする。

 どうやら眠り姫のお目覚めのようだ。


「じゃあお姉ちゃんはガイちゃんに報告してくる~」


 ぐっと伸びをすると部屋を出ていくエウリフィア。

 俺も今のうちに荷物を整理するか。

 勇者の武器とか持っていてもしょうがないしな。

 教会で預かってもらおうっと。


 俺がいそいそと勇者の武器を霧夢の腕輪から出していると、ニヴァリスが身を起こした。


「う……ここは……勇士様方?……」


「うむ。ニヴァリスと言ったか? ミーシャと言う。よろしく頼む」


「我はガーベラだ」


「キキでス」


「あい! ノーナでつ!」


 皆が自己紹介する。ノーナは手を上げながらぴょんと跳ねた。


「俺は耕平だ」


 俺は霧夢の腕輪から諸々の物を出しながら言った。


「おお! 皆様方おもどりで。 ニヴァリスも大事ないか?」


 神父らしき老人が杖をつきながら部屋に入ってくる。

 エウリフィアがガイちゃんと呼んでいた人だ。


「だから言ったでしょ~、ガイちゃん」


 えっへん! と胸を張るエウリフィア。


「して、ここに並べられている武具は何でしょうな?」


 ガイちゃんと呼ばれている神父のおじいちゃんが俺たちに尋ねてくる。


「これはニヴァリスの夢の中で出くわした悪魔が持っていた勇者の武具です」


 俺が代表して答える。

 ガイちゃんと呼ばれる神父のおじいちゃんは、キラキラと輝く勇者の武具を見やる。


「これは……伝説の……失われたと言われていますが、まさかこの目で見ることができるとは……」


 ふるふると震えながら感極まったように見えるガイちゃん。


「あと、この月の紋章という物もあります。何に使うのかは分かりませんが……」


 俺は何かのパーツの一部のような月の紋章をガイちゃんと呼ばれる神父に差し出す。


「む? 月の紋章ですと? これは他の紋章を集めると精霊王への道が開けると聞きます」


 そうなのか。これも俺たちには必要ないな。勇者の武具と一緒に渡してしまおう。

 諸々の武具と月の紋章をガイちゃんと呼ばれる神父のおじいちゃんに託す。

 ニヴァリスも病み上がりだからな。さっさと退散するか。


「フィア。これで俺たちの用は済んだな? そろそろお暇しようと思うんだが」


「そうね~。ガイちゃん、お礼はまたの時にね~」


「天龍様。この度は誠にありがとうございました」


「勇士様方、うっすらと覚えております。夢の中から救ってくださってありがとうございます」


 深々と頭を下げる神父のおじいちゃんとニヴァリスに見送られながら、俺たちは教会を後にするのだった。






――――――――――――


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