第175話 ケイオススピリット






 気体の集合体のように変わり果てたミルヒダーズが腕らしきものを振るう。

 

 ブワッ バリバリバリ

 アインが盾を構えて闇の衝撃波を受け止める。


 ズギャーーーン

 俺たちはアインの後ろでビリビリと響く衝撃波をやり過ごした。

 ポポが俺の後頭部によじ登ってくる。

 ルンは頭の上でへばりつくように身を伏せていた。


 しかし、相手が気体だと俺の大地の力がつかえないぞ。

―やりにくい……。

 俺はケイオススピリットと化したミルヒダーズを睨みつける。


「……」


 ケイオススピリットは無言のまま両腕らしきものを交差させると何かを解き放つかのように両腕を広げた。

 ケイオススピリットの手のひらあたりの部位が怪しく光を放つ。


 ケイオススピリットから連続で衝撃波が放たれる!

 衝撃波は水平に、全周囲に広がっていく。

 ズギャーーーン ズギャーーーン ズギャーーーン


―クソッ! これじゃ近づけないぞ!

 俺たちはアインの後ろで縮こまりながら、反撃の機を見計らう。


「コウヘイ、これでは近づけないぞ!」


「婿殿、ドラゴニックロアを撃つ隙がない!」


「キキの槍が届く距離なラ……」


「あうー……」


 俺もなんとかしたいところだが、ケイオススピリットからは未だに連続で衝撃波が放たれている。

 これでは碌に反撃もできやしない……ッ。

 大地の力も気体のケイオススピリットには効かなそうだしな……。


 盾を構えたアインの後ろで攻めあぐねていると、俺の後頭部からポポがモゾモゾと身じろぎした。

―なんだ?


「ぷぽっぽ!」


 ポポが何かを言うと、俺の頭の上のルンが身を起こしミョンミョンと伸び縮みした。

 ポポが俺の頭をさらによじ登るとルンに跨る。


 コラコラ。こんな時に遊ぶんじゃありませんよ!

 身を屈めた俺の頭の上でポポがルンに跨がり、いつの間にかしまっていた妖精剣を脇の下から取り出した。


「ぷぽ!」


 ポポがルンに声をかけると、中空に跳ねるように飛んだ。

 ケイオススピリットの衝撃波の間隙を縫って天井付近まで舞い上がるポポとルン。


―おお、上からなら攻められるな!

 スライムナ◯トみたいだな。いや、これはスライムライダーと言っておくべきか。


 オン ブオン

 ポポの持つ妖精剣の柄から緑色に輝く光の刀身が伸びる。

 連続で闇の衝撃波を放つケイオススピリットの頭上へ、ルンに跨ったポポが落ちていく。


 ブオンッ バシュッ

「!」


 ケイオススピリットにポポの妖精剣が入る!

 ポポの剣を受けてケイオススピリットが二、三歩下がった。

 連続で放たれていた衝撃波が止む。


「コウヘイ、勝機だ!」


「行くぞ! 婿殿!」


「キキもやりまス!」


「あい!」


 皆がアインの後ろから躍り出て、ケイオススピリットへと向かう。


「あい!」


 カッ ズドオオオオオン

 まずはノーナの雷魔術だ。

 しかし、ケイオススピリットの表面を電撃が流れるだけでダメージには至っていないように見える。


「ちぇス!」


 ヒュッ カッ

 キキの腰の入った突きで槍の先端から魔力砲が放たれる。


「キュオアァッ」


 ケイオススピリットの胸付近に当たり、悲鳴を上げさせた!

 ヤツの弱点は胸か!?


「ッシャアッ!」


 ザンッ ザシュッ

 獣化したミーシャの連撃がケイオススピリットに迫る!

 手のひららしき場所に瘴気を集めたケイオススピリットはミーシャの連撃を受け流した。


 ブワッ バリバリバリ

 両腕を広げてケイオススピリットの衝撃波が俺たちを襲う!


「くっ」


「むう」


「うグッ」


「あう」


 前に出ていたミーシャ、ガーベラ、キキ、ノーナが衝撃波を受けて後方へと飛ばされてくる。


 ケイオススピリットが両腕を広げて両手のひらから瘴気を発し、黒い渦のプロミネンスのようなモノを形成する。

―ケイオス・セイバーとかいう大技か!

 どうやらヤツはこれで決めに来たようだ。


「むぅ、埒が明かぬ。婿殿、我が行く!」


 バキンッ

 ガーベラが叫ぶと大剣が変形した。

 刀身の真ん中から別れ、真ん中に魔力の大剣が現れる。

 バチバチと音を立てながらガーベラの大剣が伸びていった。


 ケイオススピリットが頭上で両手を合わせて瘴気の超大剣を形成する!


「*&%$#ッ!」


 何事かを発しながら瘴気の超大剣を振り下ろすケイオススピリット。


「っおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 ガーベラが大剣を肩に担ぎ前へ出る!

 アレと打ち合えるのか? ガーベラ!


 バチュッ!

 ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

 一瞬の破裂音のようなものの後に腹に響くような轟音が辺りに響く!

 視界は閃光で潰された。


 一瞬とも随分長い時間とも取れるような時間と、視界を覆っていた閃光が晴れるとそこには膝をついたガーベラとケイオススピリットがいた。


 くっ! 相打ちか!


「ぷぽっぽ!」


 ルンに跨ったポポがまたもや中空に飛び上がり、膝をつくケイオススピリットに迫る!

 俺はせめてもの援護で地面に手をついて大地の力を流し、ケイオススピリットの拘束をはかる。


 オン ブオンッ バチチッ


 ポポが放った剣戟はケイオススピリットの肩口に入り、中心の胸にまで達した。


 バチバチバチ バチュンッ


 緑色に輝く妖精剣がケイオススピリットの体の中心に突き刺さる!


「……ォォォォォォォッ」


 ケイオススピリットは断末魔のような声を上げると、白い粉へと変わっていくのだった。






――――――――――――


 拙作を手に取って頂き誠にありがとうございます。



 もし面白いと思った方は評価やフォロー、応援をして下さると作者のモチベーションが上がります。



 面白いと思った方は評価を☆三つ、詰まらないと思った方は☆を一つでかまわないので付けてくださると参考になります。



 よろしくお願い致します。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る