第174話 ミルヒダーズ②
「っおおっ!!!」
ミーシャが叫ぶ。
ミーシャの手足が毛に覆われていき、目の瞳孔が猫のように開く。
ミーシャの獣化だ。
獣化したミーシャは俊足で影のミノタウロスに迫り、連撃を浴びせた。
ザシュ ザンッ
胸をクロスに引き裂かれた影のミノタウロスの一体が白い粉に変わっていく。
「ぷぽ!」
俺にしがみついていたポポが宙返りをしながら妖精剣を抜き放つ!
妖精剣の柄から緑色の光る刀身が発生する。
オンオンオン バシュッ!
一体の影のミノタウロスを、ポポが縦に回転しながら脳天唐竹割りだ。
サラサラと白い粉が風に流されていった。
「あい!」
カッ ズドオオオオオン!
ノーナの雷魔術が残りの影のミノタウロスに決まる!
ビクリ! と痙攣するように動きの止まった影のミノタウロスにアインが迫る。
ズガアアアアアアン!
アインの右腕が最後の影のミノタウロスに刺さった!
影のミノタウロスはガクリとうなだれると、白い粉へと変わった。
「……ミノタウロス・シャドウをこうもあっさり倒すとは……やはり我らの邪魔をしてきたのはお前たちのようだな!」
ミルヒダーズが眉間にシワをよせながら悪態をつく。
ミルヒダーズは体の横で両の手のひらを上に向け、瘴気を手に集めた。
手のひらに
まるで、太陽のプロミネンスのようだ。
ゴォォォォォォォォォォォォッ!
―アレはマズイ!
直感的にそう思った俺はアインの後ろへと退避する。
皆もアインの後ろへと集まった。
「消し去ってくれる!」
ミルヒダーズが両の手のひらを頭上で拝むように合わせると巨大な剣が出現した!
ガーベラの大剣よりデカいぞ!
「ケイオス・セイバーッ!」
ミルヒダーズの掛け声とともに超巨大な剣が振り下ろされる!
ゴアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!
バキャアアアアアアアアアアアアン!
アインの持つ盾が軋み音をあげる。
盾は保つのか!?
辺りは闇の閃光に包まれた。
……ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!
閃光が晴れると、背後の壁が一部を残して跡形もなく吹き飛んでいた!
天井も真っ二つに割られている。
―なんて威力だ。
アイン、グッジョブだぜ。
俺は額の汗をぬぐった。
「ぬ? 防いだか……」
ミルヒダーズは訝しげに顔を歪める。
剣を振り下ろしたような形で棒立ちになるミルヒダーズ。
「っおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ガーベラの竜化だ。
ガーベラの瞳孔が爬虫類のように縦に開き、手足が鱗に覆われていく。
背からは羽根が生え、牙も伸びる。
ガーベラは祈りを捧げるように両手を握り込むとその両手を前に突き出した!
「ドラゴニック・ロア!」
ミルヒダーズに向けてガーベラの手から魔力砲が放たれる。
赤い魔力の砲がミルヒダーズに迫る!
「くっ」
ミルヒダーズは両手に黒い瘴気を纏わせ、障壁を張った。
ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
ガーベラの放つ魔力砲がミルヒダーズに刺さる!
「ぬう……」
煙が晴れると、腕を交差したミルヒダーズの姿が
ゆったりとした衣はボロボロになって変態街道まっしぐらだが、健在のようだ。
クソッ、イケメンはボロボロでも様になりやがるんだぜ。
平凡な顔を持つ俺からすると羨ましくもある。
バッ バリバリバリ
ミルヒダーズは腕を振るうと、闇の波動を放つ。
ズギャーーーン!
アインが前で衝撃波を受け止める。
さっきの大技も受けたアインの盾は保つのか?
俺はアインの後ろで衝撃波をやり過ごしながらそんな事を考える。
「お前らは何故こんな事をしている!?」
俺はかねてより疑問に思っていたことをミルヒダーズにぶつける。
「こんな事だと? 何故わからん!?」
ミルヒダーズはさも当然という風に答えた。
なんだ? やっぱりなんだか微妙に話が通じていないぞ?
「我らは個々に望みは違えども、目的は一つ!」
ミルヒダーズはカッと目を開くと台座に歩み寄り、設置してあったドス黒い石を手に取ると自分の胸に突き入れた!
「おおおおおっ!」
ドクン!
クッソ! まだ聞きたいことがあったのに!
「かあああああああああああああああああああっ!」
ドクン!
両手を広げながらミルヒダーズは天井を仰ぎ見る。
ドクン! ドクン!
ミルヒダーズの四肢の末端からドス黒い霧状に変化していく。
ドクンドクンドクン!
長い黒髪が四方に広がり、ドス黒い瘴気を発していく。
両目が紫色に怪しく発光する。
ドクンドクンドクンドクン!!
早鐘のような鼓動が鳴り響く!
シャアァァァァァ!
ミルヒダーズは不定形の人型の魔物に変貌した!
ドス黒い瘴気を撒き散らしながら、ゆらゆらと揺れつつこちらを見ている。
なんだよコレ!?
俺は鑑定を通した。
~~~~~
ケイオススピリット
邪神の眷属
~~~~~
相変わらず珍妙なことに種族まで変わってしまったミルヒダーズ。
ガス状の敵か。やりにくいな……。
俺は眉をしかめてミルヒダーズだったモノをにらみつけるのだった。
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