第171話 ベリアル①






 ~~~~~

 穢された聖弓

 *+}%$#

 ~~~~~


 これもか。

 俺は一息つくとドス黒い弓を手に取り、大地の力を流す。

 黒いものがポロポロと剥がれ落ち、蒸気のようにかき消えていく。


 ポワンっ

 弓が一瞬光る。


 ~~~~~

 聖弓

 勇者の弓

 ~~~~~


 これも神々しいオーラを出している。

 持ち手を握り込むと反発するような感覚があった。

 アルカにどうかと思ったけど、アルカは別に勇者じゃないよなぁ。

 俺は聖弓も霧夢の腕輪に仕舞った。


「ぷぽぽ!」


 ポポがぴょんこぴょんこしている。

 はいはい。


 俺は地面に手をつき、大地の力を注ぎ込む。

 俺を中心にボロボロの砦のようなものが修復されていった。



―こんなもんかな?

 辺りは新築みたいな石造りの部屋に変わった。

 俺たちは心なしかキラキラと輝いているような砦を後にした。



 俺は足元から大地の力を流しつつ歩く。

 遠くに見えてきたのは城のようだ。


「砦の次は城か。なんだか意味深だな」


 俺が遠くの城を見据えながら言う。


「うむ。かの聖女の何かを象徴しているのかもな」


「あい」


「先程は不覚を取ったからな。次はこうはいくまい」


「キキも頑張りマス」


 そんな事を話しながらも進むと、例のごとく荒れ果てた城へとたどり着く。

 城門はボロボロに朽ち果て、大きな隙間が空いていた。


 中は所々蜘蛛の巣が張っていたり、床が崩れたりしている。

 ギシギシと音を立てながら俺たちは進む。

 広間のような場所を通り抜け、奥へと歩く。


 ボロボロの階段を登り、長い廊下を渡ってたどり着いたのは玉座がある広い空間だった。

 元は豪華だったと思われる玉座にはなにやら人型の者が座っている。

 俺は鑑定を通した。


 ~~~~~

 ベリアル

 悪魔

 ~~~~~


「みんな! あいつは悪魔のベリアルだ!」


 俺はみんなに警戒をうながす。

 ベリアルは竜と牛を足して二で割り、人型にしたような風貌だ。

 背中には悪魔の翼も生えている。

 三叉の槍のような物を手にしていた。


 ベリアルは黄色の鱗のような皮膚を鈍く輝かせながら立ち上がると、息を大きく吸い込んだ。


「! 皆! アインの後ろへ!」


 俺が叫ぶや否や皆はザッとアインの後ろへ集まる。


 ゴアァァァァァァァァァァァァァァッ!!

 ベリアルの火炎のブレスだ!


 アインの構えた盾に阻まれて炎のブレスが何条にも別れて後方へと流れていく!


「あい!」


 カッ ズドオオオオオオン!

 ノーナの雷魔術がベリアルをとらえた!


 バチバチッ!

 しかしベリアルの鈍く輝く黄色い鱗に、ノーナの雷魔術は受け流されているように見受けられる。


「ブシューーーーーーッ」


 ベリアルは大きな鼻息をつくと、なにもなかったと言うような様相で槍を構えた。


「むん」


 ブオンッ!

 ガーベラが大剣をベリアルに叩きつける!


 ガキンッ

 ベリアルは両手に構えた槍でガーベラの大剣を受けた。


「シッ」


 ミーシャが空歩で近づき、ベリアルに斬りかかる!

 ザンッ ザシュッ

 入った!


 俺は隙間にねじ込むように氷魔術を放つ。

 ヒュガッ パキパキパキ……

 ベリアルの両足が氷に覆われる。


「ちぇス!」


 ドシュッ トス トス

 キキが連続突きを放つ。


「グルゥアアアアアアアアアアッ!」


 ベリアルが叫ぶとミーシャ、ガーベラ、キキを衝撃波で吹き飛ばした!


「くっ」

「むぅ」

「あウ」


「ゴルァアアアアアアアアアアッ!」


 ベリアルは叫びながら体中から黒い蒸気のような物を出した。

 傷がみるみる内に治っていく!


 回復持ちか! 厄介な。


「あい!」


 スパパパパパパパパパパパパパン!

 ノーナの多数の水刃の魔術がベリアルに入った!

 今度は多少は効いたか?


「ブシューーーーーーッ」


 ブンッ ガキン

 ベリアルは鼻息をつくと槍を振り回してきた。

 それをアインが盾で受け止める。


 スゥ

 ゴアァァァァァァァァァァァァァァッ!!


 ベリアルはアインを押さえつけたまま、俺たちに向かって炎のブレスを吐いてきた!


―くっ! 間に合え!

 俺は無魔術の障壁を展開!

 何とか間に合う。


 バサッ!

 背の翼を広げてベリアルが宙空に舞い上がった!


「ブシューーーーーーッ」


 ベリアルは大きな鼻息をつくと、槍を捧げ持つ。

―なんだ!?


 ブオンッ ブオンッ ブオンッ

 宙空に魔法陣が三つ現れる。

―くそっ! 召喚か!


 魔法陣から三体の影のような者が出てきた。

 影には翼のようなものが生えている。

 俺はすかさず鑑定を通した。


 ~~~~~

 シャドウデーモン

 影の悪魔

 ~~~~~


「シャドウデーモンだ!」


 俺が注意をうながすと皆はそれぞれ身構える。


「ゴルァアアアアアアアアアアッ!」


 ドヒュッ

 ベリアルが吠えながら上空から突進してきた!


 ズガアアアアアアアアアン!

 アインがそれを盾で受け止める!


 ドヒュッ ドヒュッ ドヒュッ

 シャドウデーモンもベリアルに続いて俺たちに迫る!


「シッ」

「むん」

「ちぇス」


 ミーシャ、ガーベラ、キキがそれぞれ構えた武器で受けて立つ!

 シャドウデーモン達の勢いが止まる。


「あい!」


 スパパパパパパパパパパパパパン

 ノーナの数多の水刃の魔術がシャドウデーモン達に決まった。

 ノーナのやつ、乱戦の中上手く狙いをつけるじゃないか!

 後でなでてやらねば。


 ノーナを見るとアホ毛が勇ましくたなびいていた。






――――――――――――


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