第170話 パズズ②






「キキッ」

「キギャッ」

「ゲッゲッ」

「ギャース」


 ミニデーモンは不気味な鳴き声を上げると、俺たちに躍りかかる。


「あい!」


 カッ! ズドオオオオオン!

 ノーナの雷魔術が扇状に広がり、パズズとミニデーモンに刺さる。


「グゲッゲ」


 パズズには雷魔術が効いていないようだ!

 不敵な笑い声を上げている。

 一応、ミニデーモンには通ったのかガクガクと痙攣していた。


「シッ」


 ザン! ザシュ!

 ミーシャの連撃がミニデーモンに入る。

 サラサラと白い粉に変わっていく。


「むん」


 ズガアアアアアアアアアアアアン!

 ガーベラの一撃でミニデーモンは吹っ飛び、こちらも白い粉に変わった。


「てぇい」


 ヒュガッ ズンッ

 キキの連続突きがミニデーモンに決まる!

 胸と喉元に突きが入り、白い粉に変わる。


 ダッ ズガアアアアアアアアアアアアン!

 アインの右ストレートがモロにミニデーモンに入る!

 吹っ飛んだ先でミニデーモンは白い粉に変わっていく。


 どうだ!

 取り巻きを速攻で倒してやったぜ。


 しかし、パズズは余裕そうな顔をして宙に漂っている。

 パズズは息を大きく吸い込む動作をした。


 !

 ブレスか!?

 俺たちはバッとアインの後ろに回り込んだ。


 ブハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!

 パズズはブレスではなく、甘ったるい臭いの息を吐き出した!

 辺り一面に甘ったるい臭いが充満していく。


 な……なん、だ……

 俺は、俺たちはパズズの甘い息で意識を失ってしまった。




 ……ブオン! オンオン! ブウン!

 俺はふと何かを振り回す音で目覚める。

 俺は地面に頬をつけて倒れていた。


 ダッ ガシイイイイイイイン!

 アインがパズズの爪の攻撃を盾で受ける。


 ドンッ!

 ルンの体当たりで後ろに引くパズズ。


 そうだ!

 俺は、俺たちは戦闘中だ!

 俺はガバッと起き上がる。


 ブオンッ!

 視界に緑の閃光が映る。

 振り回した軌跡を追うように閃光が走る。


 オンオン! ブウン!

 宙でくるくると回転しながら妖精剣を振り回している小さな毛むくじゃら。


―ポポ!

 ポポは器用に飛び跳ねながら妖精剣を振り回している。

 しかし、パズズの身のこなしも早い!


 オンオンオン! バシュ!

 ポポが前転宙返りをしながらパズズに切り込む!

 しかし、パズズの長い爪に防がれてしまった!

 パズズの振り払いで後方に宙返りしながら戻るポポ。


 ブウウン

 妖精剣を八相に構えるポポ。

 俺はポポとパズズのやり取りを横目に見ながら仲間を起こして回った。


「む。……不覚を取ったか」


「あう?」


「婿殿……ここは?」


「えへへ……おかわりデス……はっ」


 各々寝ぼけながらも、状況を把握したようだ。


 パズズがニヤリと顔を歪めて、大きく息を吸い込む。

 ブハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!


―そうはさせるかっての!

 俺は魔術で風を起こしてパズズの甘い息を霧散させた!


「ふしゃーーーーーーーーーーーーーっ」

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」


 ミーシャの獣化とガーベラの竜化だ。


「ゲギャッ!」


 ダッ ズバアアアアアアアアアアアン!

 パズズの突進爪攻撃をアインが盾で受け止める!


「ちぇや」


 ブオンッ ズダアアアアアアアアアアアアアン!

 キキが槍を投げて、穂先がパズズの毛皮に飲み込まれる。

―入った!


「ギャギャッ!?」


 槍はパズズの左足を地面に縫い付ける。

―ここだ。

 俺は地面に手をつけて大地の力で重力の拘束をはかった。


「グゲゲゲゲ!?」


 地面に片膝をつくパズズ。


「シッ」


 ザシュ!

 ミーシャが空歩で近づき、パズズの首筋に魔力で強化された短剣を滑り込ませる!


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」


 ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!


 ガーベラの宙空からのダイブでパズズが袈裟斬りに真っ二つだ!


 キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!

 断末魔の表情を残しながら甲高い音を発するパズズ!

―最後っ屁かよ!


「ぷぽっぽ!」


 オンオンオンオンオンオン! バシュ! バシュ! バシュ! バシュ! バシュ! 

 ポポが空中で何回転も前転しながら切り込んだ!


 ……ィィィィィィィィィィィィィィィィィン。


 甲高い音は鳴りを潜め、パズズだったものが白い粉に変わっていく。


 ふぅ。ポポはお手柄だな。

 俺は立ち上がり、腕で額をぬぐった。


「ポポ、お疲れ」


 俺はポポを労う。


「ぷぽ!」


 ウオン シュンッ

 妖精剣が音を立てて、刀身が消える。

 ポポは柄だけになった妖精剣を自分の脇の下に仕舞う。


「ぷっぽっぽ」


―おい、今何処に仕舞った!?

 ポポはそんな事はお構いなく、白い粉の山を漁っている。


「ぷぽ!」


 ポポがドス黒い勾玉のようなものを両手に持って掲げる。

 俺はそれを受け取り、大地の力を叩きつけるように流した。

 すると、透き通った紫色の勾玉に変化した。


―紫色? なんでこうもバラバラなんだ?

 俺は疑問に思いながらも、霧夢の腕輪に紫色の勾玉を仕舞った。


「んしょ、と。これは弓ですネ」


 キキが槍を地面から引き抜きながら、白い粉の山を指差す。

 そこにはドス黒い弓が転がっていたのだった。






――――――――――――


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