第168話 アトラス






 聖堂を後にした俺たちは、次の場所へと向かう。

 途中から両脇が切り立った壁が現れ、崖の中を歩いているような感じだ。

 一本道なので迷う事は無いのが救いか?


 代わり映えのしない景色を見ながら歩くと開けた場所に出た。

 何かのクレーターの跡のような、すり鉢状の地形だ。


 中心に何かオレンジ色の巨大なものが見える。

 俺は鑑定を通した。


 ~~~~~

 アトラス

 一つ目の巨人

 ~~~~~


「みんな、アイツはアトラスというらしい。巨人だ。」


 俺は情報を皆に共有する。


「グウウウウウウウウウオオオオオオオオオオオオオ!」


 巨人のアトラスが身じろぎをしてうなる。

 デカいな。

 ちょっとしたビルくらいあるぞ!?

 ゴーレムのデカいやつより更にデカい!


 俺たちは小山のようなアトラスの足元にたどり着く。


「いくらなんでもデカすぎないか?」


 俺はつい愚痴をこぼす。


「むう、ミーシャの剣では通らなそうだな……」


「あい、きょじんさん、おおきい!」


「ふむ、これは竜を退治するのと変わらんかもな」


「とても大きいデス……」


「ぷぽっぽ!」


 巨大なアトラスを見上げながら、各々おのおの感想をもらす。


「グウウウウウウウウウオオオオオオオオオオオオオ!」


 アトラスが、うなりながら右手の一撃を繰り出してくる。

 アンダースローのようなパンチだ。


 ダッ ドパアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


 アインが前に出て、盾で受け止めようとした。

 が、アトラスの一撃で後方にふっ飛ばされる!


「なにっ!?」


 俺は思わず後ろを振り返り、アインの行方を目で追った。


 ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

 アインはすり鉢状の壁に叩きつけられる。

 くっ。盾を潰された!


「あい!」


 カッ! ズドオオオオオン!

 ノーナの雷魔術がアトラスに刺さる。


「グギャッ!」


 アトラスは痙攣している。

 よしよし、電撃は効くみたいだな。


「ふしゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」


 ミーシャの獣化と、ガーベラの竜化だ。


 おりゃ!

 カッ! ズドオオオオオン!

 俺も雷魔術を使って、アトラスの動きを阻害する。


「ちぇい」


 ヒュガッ トス トス

 キキの槍の連続突きが入る。

 が、アトラスの巨体には微々たるダメージだ。


「シッ」


 獣化したミーシャが空歩を使い、アトラスの胸まで上がる。

 ザン! ザシュ!


「グギャッ」


 ズギャーーーーーーーーーーーーーン!

 ミーシャの連続斬りを受けたアトラスは、一つ目をミーシャに向けて怪しく光らせた。


 ビクッ


「くっ」


 不自然に動きを止めたミーシャが空歩を使って地上に戻ってくる。


「あい!」


 カッ! ズドオオオオオン!

 ノーナの雷魔術だ。


「グゲッ!」


 アトラスが電撃でひるむ。


「ミーシャ! どうした?」


 俺は、さっき不自然に動きを止めたミーシャに問いかける。


「むう、ヤツの目から衝撃波のような物を食らったのだ。一瞬動きが止められてしまった……」


 アトラスの一つ目は魔眼なのか!?

 俺はアトラスに躍りかかるガーベラを見つつ、そんな事を考えた。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 竜化したガーベラが羽根を広げ滑空し、大剣を変化させてアトラスに斬りかかる!


 ズガアアアアアアアアアアアアン!

 アトラスの顔面に一撃が入る!


「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ」


 ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

 アトラスが仰向けに倒れて地面がビリビリとうなる。


「ぷぽ!」


 ポポが俺の後頭部にしがみつきながら何かを訴える。

 ルンもミョンミョンしている。


 ここか。

 俺は地面に手をつき、大地の力を流していく。


 星の中心へと引き寄せるイメージを構築する。

 胃がせり上がってくる思いをしつつ、重力の枷が完成した。


「グ、グ、グギャ!」


 アトラスのオレンジ色の肌が、みるみる赤く染まっていく。

 第二段階ってヤツか?


 ギギギ……。

 重力の枷から逃れようとアトラスが身じろぎをする。

―逃さねえよ?

 俺は更に大地の力を込めた。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 ガーベラが魔力の大剣をバチバチと唸らせながら飛翔する。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

 肌が赤黒く染まっていたアトラスの首にガーベラの一撃が決まる。

 アトラスのデカい首がゴトリ、と落ちた。


 キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!

 断末魔の形相をしたアトラスの首から甲高い音が漏れる!

 アトラスの象徴でもある単眼が発光していく。

―マズい気がする!


「む! まだだ!」


 ミーシャが空歩で駆ける。


「うおおおおおおおおお!」


 ミーシャが魔力によって強化、増幅された刀身の短剣を、アトラスの単眼に突き刺す!


 ……ィィィィィィィィィィィィィィィィィン……。


 アトラスの発光していた単眼がおさまり、音も消えていくとサラサラと白い粉に変わっていくのだった。






――――――――――――


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