第165話 グレムリン






 ビシュッ パシュッ ヒュンヒュン

 グレムリンは空中であり得ない軌道で飛び回る。

 クッソ早えな、おい。

 まるで一条の影だ。


「シッ」


 ブンッ フォン


「ぬう」


 ブオンッ


「でや」


 ヒュッ


 ミーシャ、ガーベラ、キキの攻撃が空振る。


「あい!」


 ヒュパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパン

 ノーナの水魔術だ。

 細かな水の刃を無数に繰り出した。


「グギャギャッ!?」


 何発かグレムリンに入ったようだ。

 しかし、致命傷には程遠い。

 下手な鉄砲数撃ちゃ当たるってヤツか?

 だが、嫌がらせにはなったみたいだ。


 グレムリンが様子を見るように浮遊する。

 こう飛び回られると俺は打つ手が限られてくるんだよな。

 雷魔術は使えないし。


 てい。

 ヒュオッ

 俺は氷魔術を撃ってみたがグレムリンはひらりと身をかわす。

 クッソ。


 ヒュバッ ドヒュッ スパン


 くっ。

 細かく方向を変えてすれ違いざまに手の爪で切りつけてくるグレムリン。


 ピシ パシュ パシッ スパン


「くっ」


「あい」


「ぬう」


「あう」


 グレムリンがミーシャ、ノーナ、ガーベラ、キキをすれ違いざまに切りつけた。

 アインはグレムリンの突進に対応できていない。


「こう素早くては打つ手がないぞ!」


 俺はつい愚痴をこぼす。


「シッ」


 ブン ヒュッ


「ぬん」


 ブオンッ


「でや」


 ヒュオッ


 ミーシャ、ガーベラ、キキの攻撃はグレムリンに遊ばれるようにかわされる。


「あい!」


 ヒュパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパン

 かろうじてノーナの水魔術がかするくらいだ。


「グギャゲゲゲ」


 グレムリンがニヤリとしたように見えた。

 醜悪な顔をさらに歪めている。

 完全に遊ばれているな。

 すると、頭の上にいたルンが俺の胸元に飛び降りてきた。


「おわっ。なんだ? ルン」


 ミョンミョンミョン!

 俺の両手の中で激しく意思表示するルン。

 ルンは俺に何を伝えたいんだ?


 ルンの体がベチャッとなり、俺の両手にまとわりつく。

―これでどうするんだ? ルン。


 俺は疑問に思いながらも激しく飛行するグレムリンを睨む。

 グレムリンはミーシャ達を傷つけ、飛び回る。

 アインは激しく移動するグレムリンに対応しようとするが、追いつかない。


 ピシ パシュ パシッ スパン

 ドッ!


 ! 来た!

 俺に向かって来るグレムリン!

 凄いスピードで俺に一直線に・・・・飛び込んでくる。


 もしや……!

 俺はルンまみれになった両手を広げて、グレムリンの進行方向に差し出した!


 ドンッ ミョイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン


「おわっ!」


 グレムリンの飛行速度に釣られて俺も体勢を崩す!

 しかし、俺の両手の間を通過した・・・・・・・・・グレムリンはルンの体に阻まれている。


 ミョーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 伸びたルンの体が元に戻る。


 俺は手元に来たグレムリンをガシッと捕まえた!


「おしっ! うおおおおおおおおお!」


 すかさず大地の力を流していく!



 ポワン


 謎の発光現象がグレムリンに起こる。

 シュウシュウと発した黒い蒸気が晴れると、俺の両手には毛むくじゃらのぬいぐるみのような生き物がいて、いつの間にか頭の上に戻ったルンがミョンミョンと上下運動をしていたのだった。


 クリクリの両目を開き、首をかしげる毛むくじゃらの生き物。

 こいつはなんだ?

 俺は鑑定を通す。


 ~~~~~

 モーギズ

 森の妖精の一種、【杉浦耕平の眷属】

 ~~~~~


「ぷぽ?」


 な~に? とでも言いたげな様子で首をかしげるモーギズ。


「む、コウヘイ。それはなんだ?」


 ミーシャが俺の様子を見て尋ねてくる。


「いや、俺にも良く分からないんだが、グレムリンに大地の力を流したらこうなった……」


「あい」


 ノーナがアホ毛をピョコピョコさせながらモーギズを覗き込む。


「これは……あの醜悪な姿からは想像できないな。婿殿」


 ガーベラが俺の両手の中にいるモーギズを見ながら言う。


「はい。ふさふさデス」


 キキがうんうんと頷く。


「ぷぽぽぽ!」


 森の妖精モーギズが自分の脇の下から何かを取り出して俺に差し出してくる。

 それはドス黒い勾玉のような物だった。

 これは!


 ~~~~~

 邪神の破片

 #$+*&@

 ~~~~~


 鑑定を通すとこのように出た。

 ですよねー。

 俺はため息をつきたくなる気持ちを抑え、大地の力を流し込む。


 ~~~~~

 混沌神の破片

 混沌神の体の一部

 ~~~~~


 ドス黒い勾玉のような物は、透き通った緑色の勾玉に変化した。

 ……緑色?

 俺は疑問に思いながらも霧夢の腕輪へと仕舞った。


 俺たちはグレムリンに付けられた傷をポーションで癒やした。

 アインがガクリと落ち込んでいる。

 ドヨ~ンだ。


 俺は辺りの歪に曲がりくねった森を見回す。

 ここも一応やっといた方がいいか。


 地面に手をつき、大地の力を流す。

 同心円状に土が肥えていき、芽吹いていく。


 曲がりくねった森も普通の森のように変化していく。

 心なしか木々がキラキラとしているようだ。


「あい♪ コーへすごい!」


「ぷぽー♪」


 ノーナと俺の腕にしがみついた森の妖精モーギズがキャッキャと喜ぶ。

 枯れ木の細く曲がりくねったような幹は、太く瑞々しい緑の葉をたたえるようになり、足元には草が生い茂る。


「こんなもんか」


 俺は立ち上がると一つ伸びをした。

 息を大きく吸い込むと植物のマイナスイオンが肺に満たされるようだった。






――――――――――――


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