第164話 ミノタウロス






 ブオンッ!

 ミノタウロスが黒い蒸気を発しながらデカい戦斧を振り回す。


「うー、あい!」


 カッ! ズドオオオオオン!

 ノーナの雷魔術はミノタウロスの表面の黒い蒸気に阻まれて体にまで通っていない!


「シッ」


 ザン! キン

 ミーシャの連撃が一発入った!


「ブモッ」


 ブオン! ガッ

 ミーシャを振り払うように戦斧をぶん回すミノタウロス!

 その戦斧を受け止めるアイン。


「むん」


 ブオン ドガアアアアアアアアアアン!

 ガーベラの大剣がミノタウロスの横から入る。


「ブッ! モッ!」


 ダダダダダダッ ドンッ!

 ミノタウロスの突進をアインが受ける!

 アインがふっ飛ばされる!


 ズザザザザザザザーッ

 長い二本の線を地面に残しながら耐えるアイン。


「でやっ」


 ズン ズン ヒュガッ

 キキの連続突きが突進後の無防備なミノタウロスに決まる。


「ブモオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ」


 またミノタウロスの体から黒い蒸気が吹き出す。

 回復だ。


「あい」


 カッ! ズドオオオオオン!

 ノーナの雷魔術がミノタウロスに入る!


「ブモッ!?」


 表皮が黒から若干茶色っぽくなったミノタウロスに電撃が通ったみたいだ。

 俺はここに勝機を見出し、大地の力で重力操作に入る。

 地面に手をつき、奥底から引っ張るようなイメージを構築する。

 胃が引き絞られるような感覚と共にミノタウロスを地面に縫い付ける。


 ズウウウウウウウウウウウウウウウン

 ミノタウロスが片膝をつく。


「ブブブブブモ!?」


 ガシャン!

 ミノタウロスが手に持っていたデカい戦斧を取り落とす。


「ここはミーシャが! おおおおおおおおおおおおおおっ」


 ミーシャが雄叫びとともに変貌していく。

 目がネコ科のような瞳孔になり、手足が毛に覆われていく。

 牙や爪も伸びる。

 ミーシャの獣化だ。


 ダッ!

 ミーシャが前に駆ける!

 空歩を使い、ミノタウロスの頭上へと舞い上がる。


 ミーシャの獣王の短剣とドラゴンショートソードが煌めく。

 上から降ってきたミーシャがミノタウロスのうなじを切りつけた。


 ザン!! ザシュ!!


「ブモオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ」


 断末魔の声を上げながら白い粉に変わっていくミノタウロス。

 白い粉の山には何かが混ざっていた。


―なんだ?

 俺は鑑定を通す。


 ~~~~~

 鍛冶屋の金槌

 鍛冶師が使う金槌

 ~~~~~


 ~~~~~

 邪神の破片

 #$+*&@

 ~~~~~


 邪神の破片? 欠片とは違うのか?

 ソレは手のひらのなかにすっぽりと収まるぐらいのドス黒い勾玉のようなものだった。


 握り込み、大地の力を流す。

 小さくても結構、抵抗を感じるな。

 押し込むように一気に力を込める。

 握りこぶしの隙間から黒い蒸気が出てきた。


 こんなものかな?

 手を広げて見ると、透き通った赤色の勾玉に変化していた。


 ~~~~~

 混沌神の破片

 混沌神の体の一部

 ~~~~~


 欠片よりは小さいが、これも混沌神の体の一部のようだ。


 俺は白い粉に埋もれている金槌を見る。


「誰か、この金槌を欲しい奴はいるか?」


「いや、ミーシャはいらないな」


「あい」


「我も必要ないぞ、婿殿」


「こうへいサン、キキも大丈夫デス」


「そうか、じゃあク―のお土産にでもするか」


 俺は鍛冶屋の金槌と混沌神の破片を霧夢の腕輪へと仕舞った。

 辺りを見回してみるとこの辺りだけ木が生えていない。

 この黒っぽい石の台座も良くないのかな?


 俺は一応黒っぽい台座に大地の力を流していった。

 シュワシュワと黒い蒸気が台座から出てくる。


 俺が手をついている所から次第に白っぽく変化していく。

 ほどなくして台座が白く染まり、周りには草が生い茂る。


「凄いな、コウヘイは」


「あい! コーへえらいえらいなの」


「婿殿やるな」


「キキも凄いと思いマス」


 俺は皆の称賛を聞きながら立ち上がり、腕で額を拭いた。

 ふう、結構力を使ったな。


 俺たちは少し休憩してから次の地点へと向かった。

 時計回りに進む感じだ。


 俺は大地の力を足先から流すようにして歩く。

 俺の通った足跡から土が肥え、芽吹くように草が生えてくる。


 草が生い茂るようになると、不思議なことに影のようなモンスターが出てこなくなった。

 あいつらドロップも何も落とさないからな。

 いいことだ。


 荒れ地から枯れ木の森のような場所になってくる。

 辺りは、歪に曲がりくねった枯れ木が立ち並ぶようになってきた。


 程なくして、枯れ木の森からぽかりと開けた場所に出た。

 そこには何か小さな黒いものが居た。


 ~~~~~

 グレムリン

 電撃で増える

 ~~~~~


「グレムリンがいるぞ! 電撃は使うと増殖するようだ。気をつけろ!」


 俺が皆に注意を促す。

「うむ、分かった」


「あい、ずどん、しません」


「むう、すばしっこそうだぞ。婿殿」


「キキがんばりマス」


 ぽかりと開けた場所に俺たちが入ると、グレムリンが動き出す。

 見た目は悪魔化したような小さいゴブリンのようだ。

 背に小さな悪魔の羽根がついている。


 ゴォッ!

 小さな体からは考えられないようなスピードで俺たちに迫る!


 ピシ パシュ パシッ

 すれ違いざまに俺たちを切りつけていくグレムリンは、まるで黒い弾丸のようだった。






――――――――――――


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