第161話 錬金姉妹






「あい! シルヴィ、すごい!」


「おう、こんな短期間ですごいな!」


「はい、コウヘイ様のお陰です」


「しるゔぃ、がんばりました」


 俺とノーナは公爵姉妹の公爵邸にお邪魔している。

 ルンとヴェルにアウラも一緒だ。

 抱っこ紐の中に入っている。

 アインもお供につれている。


 目の前にはゴーレムとスライムが居た。

 アインやルンとは違うゴーレムとスライムだ。

 以前に公爵姉妹にお土産で渡したコアだが、そこからゴーレムとスライムを自ら作り出したみたいだ。


「しるゔぃ、たくさんおべんきょうしました」


 えっへと胸を張る妹のシルヴィア。


「錬金術というものはとても奥が深いです……」


 若干遠い目をして答えるのは姉のシャイナだ。

 二人共、一から勉強を始めてここまでできるようになったのだ。

 この短期間でゴーレムとスライムの生成を成し遂げるとは。

 広い中庭に設けられたお茶会の席からシャイナがスライムに目を向ける。


「ベス、コウヘイ様にご挨拶するのですよ」


「まーがれっとも、あいさつします」


 シルヴィアがゴーレムに声をかける。

 スライムがベスでゴーレムがマーガレットと言うらしい。


 色が赤い人造スライムのベスがポヨンポヨンとしている。

 球体関節のマネキンのようなゴーレムが胸に手を当て、チョコンと膝を折る。


 おお、すごいじゃないか。

 二体とも言葉を理解している様だ。


「これはご丁寧に、どうも」


 俺も席を立ち胸に手を当て、腰を少し折り返礼した。

 ミョンミョン!

 頭の上でルンが元気よく上下運動をする。

 アインが胸をトントンと二回叩く。


 うちの子も対抗意識を燃やしたようだ。


「クルルゥ」

「キュアッ」


 ヴェルとアウラも挨拶だ。


「ふふ、二匹とも相変わらず可愛らしいですね。」


「はい、ゔぇるとあうら、かわいいです」


 シャイナとシルヴィアが微笑む。


 テーブルの上の茶菓子を分けてやると二匹ともあむあむと噛みついた。

 ミョンミョン!

 ははっ。ルンもだな?

 俺はルンにも分けてやった。


 ポヨンポヨン!


「まぁ! ベスも欲しいのかしら?」


 首をかしげたシャイナが茶菓子を切り分け、ベスに与える。

 ズワッと広がり捕食するとシュワシュワと溶かす。

 おお。人造スライムでも捕食は同じなんだな。


「ふふ」


 それを見てはにかむシャイナ。


「ねえさま、しるゔぃも、あげていいですか?」


「ええ、よくってよ」


 シルヴィアも真似をして茶菓子をベスに分け与えていた。

 人造スライムのベスはポヨンポヨン、ズワッ、シュワシュワと忙しい。


 また、あちらではゴーレムのアインとマーガレットは無言で何かやり取りをしている。

 うんうんと頷くアインとマーガレット。

 何を話しているのだろうか?


 ゴーレム同士でなにか通じ合う物があるのか?

 でもアインとルンもたまに無言のやり取りをしているよな。

 俺はルンを撫で撫でするのだった。




「コウヘイ様は眠り姫のお話はご存知?」


「眠り姫? いや、全く知らないな」


 俺はシャイナの問に答える。

 なんだろう? 王子様のキスでもすりゃ起きるのか?


「とある聖堂のお嬢さんらしいのですが、眠りから目覚めないらしいのですよ」


 なんともけったいな話だ。


「それはいつぐらいから?」


「ここ最近のお話ですわ、コウヘイ様」


 聞けばまだ若く、10歳に満たない少女なのだとか。

 聖堂は人脈の伝手つてを辿って解決する術を模索しているらしい。

 なんでも聖女候補の一人という事だった。


 この世界、聖女とかいるんだ。

 まぁ権威付けの一環なのかな?

 俺はそんな益体もないことを考えた。



 その日は公爵邸にご厄介になった。

 前のときのようにサウナ式の風呂に入り、小姓達に着替えさせられていく。

 以前に頂いた服を着て夕食会だ。


 広い食堂の一角、長テーブルに案内される。

 俺の隣には可愛いドレス姿のノーナが、向かいにはシャイナとシルヴィアだ。


「それでは祈りを。創造神と眷属の神々に感謝を」


「「感謝を」」


「あい、かんしゃを」


 ノーナも見よう見まねで祈りを捧げる。


 まずは前菜が運ばれてくる。


 鮮魚のカルパッチョのようだ。

 つぶつぶの魚卵が添えてある。


 フォークを取り、口に運ぶ。

 シャキシャキの野菜と、新鮮な魚の風味が口の中に広がる。

 プチプチと魚卵が弾けていいアクセントだ。


 ちらりと隣のノーナを見ると介添のメイドが付けられていて一安心。


 次の皿は鶏肉だろうか? テリーヌのように仕上げられており、まろやかなソースが特徴だ。


 従魔組は? というと、別のテーブルでメイドたちの世話を受けている。

 キャイキャイとした小声が聞こえる。


 その次は皿の上に何か四角い物が乗っていた。

 これも鶏肉だろうか? もしかしたら鴨かもしれないな。

 練り物のようで滑らかに仕上げられていた。


「ノーナ、どうだ? 美味しいか?」


「あい! とてもおいしいです!」


 ノーナがニパッと笑う。

 その様子を公爵姉妹もニコニコと眺めている。


 その次に出されたパスタも美味い。

 ツルッとした麺に旨味の凝縮された豚肉のソースがよく絡む。


 メインはデッカイエビが横から真っ二つに割られたものだ。

 香草とパン粉がまぶしてあり、オーブンか何かで焼き上げられたのだろうか?

 かぐわしい海鮮の香りだ。


 デザートは、なんだろう? 上品な甘さとほろ苦さが共存しているケーキだった。

 ティラミスが近いかもしれない。


 こうして俺とノーナは公爵邸の歓待を受けるのだった。






――――――――――――


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