第162話 眠り姫






「と、言うわけでお姉ちゃんのお願い聞いてくれる?」


 どう言うわけか知らないが、俺は今エウリフィアから相談を受けている。

 なんだなんだ? またハンバーガーセットか?

 あれだけ食ったのに飽きないのかねー。


「実はお姉ちゃんの古い知り合いなんだけど……」


 なんでも例の眠り姫のお話のようだ。

 俺に何が出来るのかは知らないが。

 言っちゃ何だが、俺は平凡な男子高校生やってた身だぞ?

 医者でもなんでも無い。


「ほら、前にさキミがダンジョンの報酬で鏡を得たじゃない? ソレがあれば解決~? なんて……」


 んん? 鏡だって? そんなんあったかな。

 ガサゴソ……。


 ~~~~~

 夢魔の姿見

 夢の世界へと入れる

 ~~~~~


 あったあった。

 俺の身長程もある鏡で、ふちが妙に人骨っぽくて不気味で趣味の悪い鏡な。

 部屋の中に飾るのもアレなんで霧夢の腕輪に仕舞っておいて忘れていた奴だ。


 この鏡で一体どうしろって言うんだ? エウリフィアは。


「お姉ちゃんが思うに~、その女の子の夢の中に問題があるんじゃないかと思うのよ~」


 エウリフィアがおとがいに指を当てながら話す。

 いや、まぁ眠り姫だっけ? お気の毒とは思うが……。

 俺は難しい顔で難色を示す。


「じゃあ! お姉ちゃんの貸し一つで! 天龍の貸しよ。これは大きいわ!」


 腰に両手を当ててフンスと鼻息をつくエウリフィア。


「それで、本当に夢の中なんかに行って解決できるのか?」


 俺はなおも疑問に思い、エウリフィアに尋ねる。


「それはお姉ちゃんにも分からないわ!」


 きっぱりと言うエウリフィア。

 なんでも言い切れば良いってもんじゃないぞ?

 俺は片眉を上げて胡散臭そうにエウリフィアを見た。




 天龍のエウリフィアの背に乗り、王都へとやって来た。

 俺、ミーシャ、ノーナ、ガーベラ、キキ、アインにルンも一緒だ。

 王都の近くに降り立ち、歩いて王都に入る。


 エウリフィアの案内で街の聖堂へ。

 なかなかデカい。

 中へ入るとステンドグラスのような物が陽の光を受け入れ、きらびやかな印象を与える。

 奥には創造神だろうか? 一体の大きな神像があり、内壁の両脇には眷属神と思われる神像がずらりと並んでいた。

 俺はこちらの宗教観は全くわからないが、ついキョロキョロと見回してしまう。

 ノーナも、ほへえっと見ていたが。


 建物の奥の脇の扉から神父らしき人が出てくる。

 結構な歳だ。

 杖をつきながら歩いてくる。


「これは、天龍様。ようこそおいでになりました」


「ガイちゃん、この間ぶり~」


 神父らしき人の挨拶に手をパタパタしながら軽く答えるエウリフィア。


「して、天龍様。お側の者は?」


「うん。例の聖女ちゃんの件よ~」


「ニヴァリスの件でしたか……こちらへそうぞ」


 神父らしきおじいさんの案内で奥の部屋へと案内される。

 ノックをして入るとシスターらしき人が誰かを看病しているようだ。

 窓は締め切られていて、ろうそくの火がゆらゆらと部屋の中を照らしている。

 寝台にはまだ幼い少女が寝かされていた。


「神父様、何用ですか?」


「うむ、ニヴァリスの件でな。天龍様が人をお遣わしになったのだ」


「まぁ! それでは?」


シスターらしき人と神父のおじいさんが何やらやり取りをしている。


「さ、キミはアレを出して~」


 エウリフィアに促されて、俺は“夢魔の姿見”を霧夢の腕輪から取り出した。

 薄暗い部屋と相まって、夢魔の姿見がより一層不気味に見える。


「まぁ! それは呪具ですの?」


 シスターらしき人が驚きの声を上げる。


「いえ、呪具かどうかは分かりません。ただ、夢の世界へ入れるとだけ……」


 俺がいぶかしげに見ているシスターらしき人へと説明する。


「この鏡で夢の中に入って聖女ちゃんを起こすのよ」


 エウリフィアがうんうんとうなずきながら言った。


 夢魔の姿見を寝ている少女の頭の先に設置する。

 すると鏡の鏡面から薄ピンク色の霧が出てくる。

 あんまり吸い込みたくない色だな。


 霧は少女の体の上で渦巻くと、少女の足先に向けて一条の霧を伸ばした。

 一本の伸びた霧は一筆書きで細長い長方形を描いた。


 長方形の面の部分は向こう側が見えない。

 なんだろう? ゲートのようなものか?


「これで~、キミたちで聖女ちゃんを夢の中から起こしてあげてちょうだい。お姉ちゃんは鏡を見張っておきます~」


 軽いノリでエウリフィアが言う。

 俺たちはお互いを見つつ、なんとも言えない不気味なゲートのようなものを見た。

 こっから入るの? なんか入り口がいかにも不安定で、頼りないんですが?


「大丈夫よ~。お姉ちゃんがしっかり見張っているから」


 エウリフィアが胸を張り、ポンと胸を叩く。

 この駄龍、もといエウリフィアに任せるのか……。

 俺は一抹の不安を抱きつつも、夢の世界へと向かうことを決める。


「フィア、しっかり見ててくれよ? フリじゃないからな?」


 俺は一応エウリフィアに念を押す。


「お姉ちゃんにまっかせなさい!」


 フンスフンスと鼻息も荒く答えるエウリフィア。

 本当に大丈夫なんだろうか?


 俺たちは意を決し、夢魔の姿見が作り出す薄ピンク色の霧のゲートに潜り込むのだった。






――――――――――――


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