第152話 温泉郷とカツ丼






 カポーン


 湯けむりが辺りに立ち込める。

 濃厚な木の香りと、温泉独特の香りが混ざり合う。

 ここは神樹の森の温泉。


「うむうむ。ようやく妾の温泉が完成したのじゃ!」


「あい!」


 広い岩造りの湯船で幼女たちが温泉に浸かっていた。

 この森の女王と家妖精のノーナである。


 この神樹の森の温泉は耕平が作った温泉に多大な影響を受けている。

 エルフの女王であるゼフィちゃんが土木工事に大きく口を出したのだ。


 床などに使われている岩は肌が触れても平気なように気を使って滑らかに削られている。


「むむむ。ここの泉質はコウヘイのところと違うようなのじゃ」


 ゼフィちゃんが湯船の湯をすくい、顔に浴びせる。


「あい?」


「うむ、これはこれで良いのじゃ! 違いを楽しめるというもの。みんなちがってみんないい!  byのじゃ」


 フンフン♪と鼻歌を鳴らしながらゼフィちゃんは大機嫌だ。

 ノーナもニコニコとしている。

 アホ毛も左右に揺れていた。

 そして、なぜかルンがプカプカと浮かんでいる。


 ガラガラッ


「叔母上もここでしたか。お邪魔しますね」


 アルカが脱衣所から入ってくる。


「む。コウヘイが作った温泉より随分と広いな」


 続いてミーシャが入ってくる。


「お邪魔します。わぁボク感動しちゃうなぁ」


 クーデリアがここの温泉の広さに驚く。


「温泉。それは理想郷。」


 表情も少なめに見回しているのはティファだ。


「これは婿殿にも教えてやらないとな」


 うんうんと頷くガーベラ。


「キキはこんな広いお風呂は初めてです!」


 牛の様な角を生やした魔人族の少女、キキだ。


「お姉ちゃんもやって来ましたよ~」


 天龍であるエウリフィアも人型の姿だ。



 スタッ

「ウォフ!」


 温泉の周りの塀を飛び越えて神獣が入ってきた。


「神獣様! まずは汚れを落としましょう」


 アルカがいそいそと神獣の世話に走る。


「キキも手伝います!」


「うむ、神獣は大きいからな。皆で洗ってしまおう」


 ミーシャが提案し、皆で神獣を洗うことに。

 キャイキャイと楽しそうに皆で神獣を洗えばあっという間だ。

 ザパリと湯で流す。


「私達も早いとこ体を洗ってしまいましょう。風邪をひいてしまいます」


 アルカがそう言うと、皆も銘々に体を洗う。


 ザパーーーーーーーーッ


「ウ“ォ……フ」


 神獣が湯に浸かり、思わず声をもらす。


「のじゃーーーっ!」


「あいー!」


 神獣が浸かった余波でゼフィちゃんとノーナが少し流された。

 ルンはゼフィちゃんの頭の上に避難している。



「ふぅ。ここもいい温泉だな」


 ミーシャがしみじみと言う。


「はい、あちらの温泉も捨てがたいですが」


 アルカが目を細めている。

 気持ち良さそうに湯を扇いでいた。


「ここの温泉も魔力を回復します。……これはダンジョンでも温泉を作るべきなのでは?」


 ティファが何やらゴニョゴニョと考え事だ。


「わぁボクのお肌がすべすべだ!」


 クーデリアは湯を首筋にかけながら感動している。


「うむ。婿殿も一緒に来れば良かったものを……ふぅ」


 ガーベラが肩まで浸かり目を細める。


「まだこうへいサンの温泉には入っていないけど温泉は良いものだとキキは思います!」


 キキがパシャリと湯を顔にかける。


「はぁ~。お姉ちゃん落ち着くなぁ~」


 エウリフィアが湯船のふちに身を伏せながら体を伸ばす。



「うむうむ。やはり温泉はこうではなくては、なのじゃ」


「あい!」


 神樹の森でエルフの女王がもたらした温泉珠により温泉が開かれた。

 この温泉は神樹の森のエルフ達に永らく愛されることとなるのであった。




 俺は今、肉をぶっ叩いている。


 ドンドンドンドン

 麺棒でしこたま肉をぶっ叩く!

 ダッシュピッグの肉を無心の境地で叩く。


 ふぅ、こんなものかな?

 筋切りした肉をたたき終わると、肉の表面に軽く塩コショウをする。

 おいしくな~れ♪


 薄力粉、溶き卵、パン粉の順につけていく。


 察しの良いやつはもう分かるかな。

 俺はカツ丼を作っている。


 俺はなぜだか無性にカツ丼を食いたくなったのだ。


 薄くスライスした玉ねぎもどきを特製のツユでしんなりするくらいに火を通した。

 カツを油の張った別のフライパンで揚げる。

 表面まできつね色になるまで火を通す。


 よしよし、美味そうな色だ。


 火を通した玉ねぎの入ったフライパンにニセンチ幅で切ったカツを揃えて投入!

 続いて粗く溶いた卵を入れる。


 ジュッと音を立てて溶き卵に火が通る。

 コレは半熟を目指して軽くにしておく。


 火からおろし、蓋をして若干蒸らす。

 コレをホカホカのご飯にかければカツ丼の完成だ!


 丼から立ち上る湯気がいい匂いを発している。

 むう、これはたまらん!


 俺は残りの人数分のカツ丼をしあげるのだった。



「ふう、良い湯であった」


 ミーシャが湯上がり美人な様相で帰ってくる。


「おう、おかえり。みんなももうすぐか? 晩ごはん出来ているから」


「うむ。皆も間もなく転移で帰ってくるだろう」


 そうかそうか、今日のは自信作だからな。

 俺はニコニコとしながら皆の帰りを待った。


 ほどなくして皆が帰ってきたので揃って夕食だ。


「いい匂いがぁするですぅ」

「ですです」

「今日も美味そうなんだぜ!」


「あなた様、今日はお邪魔してます」


 頬を軽く染めたアルカが言う。


「おう、冷めちゃうから皆食べようか!」


 俺がそう言うと皆それぞれ匙を取り、口に運ぶ。


「「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」」


 一口食べた後は皆早かった。

 まるで飲み物のように胃の中に吸い込まれていったようだ。


「「「「「「「「「「「おかわり!」」」」」」」」」」」


 おっと、全員か。

 あ~るよ~? 全員分。

 俺はニヤリとしながら皆のおかわりをよそうのだった。






――――――――――――


 拙作を手に取って頂き誠にありがとうございます。






 これにて五章は終わりです。ここまで読んでくださり誠にありがとうございます。







 次話から六章がはじまります。







 引き続き楽しんでいただけると幸いです。






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