第144話 パンデモニウムスケリトルドラゴン






「シッ」


 ダッ バキャッ バキン

 ミーシャの空歩からの連撃がパンデモニウムスケリトルドラゴンに入る。

 しかし、巨大なヤツの体の一部を削ったのみにとどまる。


「足止めします」


 ヒュガッ パキパキパキ

 ティファの氷の魔術だ。

 パンデモニウムスケリトルドラゴンの巨大な足が凍りついていく。


 バキャアアアアアアアアアアアアッ!?

 困惑した声を上げるパンデモニウムスケリトルドラゴン。

 相変わらず耳障りな声だ。


 ズドオオオン! バラバラバラ

 アインの右がヤツの足に決まる!

 巨大な足がボロボロと落ち、体制を崩すパンデモニウムスケリトルドラゴン。


「むん!」


 ブオン! バキャアアアアアアアアアアアアン! ガラガラガラ

 ガーベラの大ぶりの大剣が胴体に入った!

 ガラガラと体を崩すパンデモニウムスケリトルドラゴン。

 ヤツの中心のコアが露出している。


 やったか!?


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ


 大量の骨が巻き上がり、嵐のようになる。


 ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシ!

 俺とティファ、ゼフィちゃんで周囲に盾を生成、骨の嵐をやり過ごす!


 骨の嵐が止むと、目の前には健在のパンデモニウムスケリトルドラゴンの姿が。

 クソっ。振り出しかよっ!

 こいつ耐久値はそれほど高くはないけどしぶといぞ!


「ぬう……」


 ミーシャが悔しそうな声を上げる。


「キリがないぞ、婿殿」


「マスターならいけます!」


「ほ、骨なんか怖くないのじゃ!」


 ティファからの全幅の信頼が重い!

 俺は地面に手をつき、大地の力でパンデモニウムスケリトルドラゴンの拘束をはかる。

 胃がせり上がり、捻れるような感覚を味わいながら、力を流していく。


 ぐっ……キッツい!

 俺は額から玉のような汗を流した。


 バキャアアアアアアアアアアアアッ!?


 パンデモニウムスケリトルドラゴンが困惑の声を上げて地面に伏せる!

 重力の枷に閉じ込める事に成功した。


「婿殿! 我が行く!」


 バキン! と大剣を変化させ、竜化していくガーベラ。

 竜の翼がガーベラの背に生えてくる。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 ガーベラが雄叫び声を上げてパンデモニウムスケリトルドラゴンに向かって飛ぶ!


 ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

 衝突の勢いで辺りに骨の欠片が吹っ飛ぶ!

 バラバラと音を立てて降ってくる骨の破片。


 小さなクレーターの中心にはガーベラが大剣を地面に突き立て跪いていた。


「! まだだ! コウヘイ!」


 弛緩しかけた空気の中、ミーシャが叫ぶ!

 辺りに散らばった骨の破片がカタカタと不気味な音を上げていた。


 ダッ!

 ミーシャが空歩で跳ぶ!


「これだ!」


 ミーシャが空中から舞い降り、ほぼ倒立するような形で双剣を突き立てる!


 カッ! バキッ!

 それはパンデモニウムスケリトルドラゴンのコアだった。

 辺りに舞い上がり、再び合流しようとしていた骨の破片がパタリと地面に落ちた。


 ザアっと溶けていく骨の破片たち。

 ミーシャの側にはドロップアイテムが現れていた。

 俺も地面から手を離した。


 いつものように、いつの間にか現れている宝箱を鑑定する。


 ~~~~~

 階層ボスの報酬

 罠・沈黙

 ~~~~~


「ミーシャ、お疲れ様。宝箱は沈黙の罠だ」


「うむ、珍しい罠だな。少し時間をくれ、コウヘイ」


 ミーシャが罠の解除に取り掛かる。



 程なくして、


「開いたぞ、コウヘイ」


 ミーシャが宝箱を開ける。


 ~~~~~

 精霊珠

 土の精霊の力が宿っている

 ~~~~~


 ~~~~~

 温泉珠

 温泉が湧き出る

 ~~~~~


 ~~~~~

 ボーンメイル

 骨製の鎧

 ~~~~~


 その他宝石類、だ。


 墓地だから埋葬品ってことか? 宝飾品が多いな。


「宝石ばかりだな。皆、欲しいものはあるか?」


 俺が皆に尋ねる。


「ミーシャは特に無いが、宝石でももらっておこうか」


「我もそうしようかな。この鎧は趣味が悪い……」


「マスター、終わったらコアルームへ参りましょう」


「! 温泉珠がいいのじゃ! これで我が国にも温泉が! 怖い思いをした甲斐があったのじゃ!」


 ティファが先を促してくる。

 ゼフィちゃんはやっぱり怖かったらしい。

 俺の頭の上でルンがミョンミョンしている。

 ルンもそう思うか?


 温泉珠はゼフィちゃんの手にわたり、その他のものは俺が霧夢の腕輪に預かった。

 ゼフィちゃんは手に入れた温泉珠に頬ずりしている。

 そんなに嬉しかったのか?



 ティファに連れられて奥に進むと転移石が草原にドンと置いてあった。

 ティファが転移石に触れてコアルームへの道を開く。

 バタンと開いた墓石の下に階段があり、その階段を下ってコアルームへ。


 なにやらダンジョンコアと無言のやり取りをするティファ。


「ヂヂ……では、コアに、力を……ヂヂ」


 なんだかここのダンジョンコアは性格が暗そうだな。

 俺は鈍く光りを発するダンジョンコアに触れて、大地の力を流した。

 ここのダンジョンも統合するか聞いてきたので“はい”を選択した。


 その後は皆で地上へ戻り、エウリフィアにもらった笛でエウリフィアを呼び出して拠点へと戻った。






――――――――――――


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