第145話 天空の城
「これで温泉郷を作るのじゃ!」
拠点に帰ってきてからゼフィちゃんがフンスフンスと息巻いていた。
「叔母上、ダンジョン攻略の方はよろしいのですか?」
アルカがゼフィちゃんに問いかける。
「うむうむ。そちらも行きたいが、まずはこの温泉珠で我が国にも温泉を作るのが先なのじゃ!」
ゼフィちゃんが優勝トロフィーのように温泉珠を掲げる。
キラッと光ったように見える温泉珠。
「では……あなた様。巫女の仕事を終えたこの私が一緒に参りましょう!」
アルカも、鼻息荒くそう言い放った。
「これは……すごい眺めだな、コウヘイ」
「うむ、婿殿。このような高い場所は我も初めてだ」
「あなた様。私は少し怖いです」
「まずは転移石ですね、マスター」
それぞれ、ミーシャ、ガーベラ、アルカ、ティファだ。
「お姉ちゃんは神樹の森のエルフのところに行ってきますね~」
今俺たちが立っているのは空高くとどまる巨大な城。
そう、天空の城である。
エウリフィアはいそいそと天龍の姿になって彼方へと飛んでいった。
ヴェルとアウラは留守番組に任せてある。
ルンはなにやらゼフィちゃんについて行った。
俺たちはアインとツヴァイを連れてダンジョンアタックである。
どういう理屈で浮かんでいるのか分からないが、ここはダンジョン。
そういうものなのだろう。
前にティファが言っていた地脈なんかはどうしているのだろうか?
城の中に入ると、だだっ広い玄関ホールが出迎える。
その中央にデン! と転移石が設置してあった。
城の中には人の気配は全く無い。
不人気ダンジョンなのだろうか?
カラカラカラ……
なんだろう? 風車でも回るような軽やかな音が聞こえる。
んん? 転移石に触れているティファの後ろ姿を見ると髪になにやらまとわりついている?
「ティファ、髪に何かついているぞ!?」
「え? あ、はい。……なんですか? このちっこいのは」
よく見ると手のひら大のクリオネの様なものがティファの髪に絡まっていた。
俺はパタパタともがくクリオネもどきを鑑定してみる。
~~~~~
シルフ
風の精霊
~~~~~
「ティファ! 風の精霊だ!」
俺は鑑定結果を伝える。
「これが……精霊?」
クリオネのような風の精霊はティファの髪に更に絡まり、もがいている。
ティファはむんずと風の精霊を掴むと顔の前に持ってくる。
「えっと、たしか……こうでしたね。ワタシ、ティファの名のもとに寄り添うことを誓いなさい」
パタパタと羽根の様な腕を振る風の精霊。
「はい、ではあなたは……そうですね。ルフィと名付けましょう」
おっと!? なんだか精霊王になる! とか言い出しそうな名前だ。
俺も伸縮自在の三本目の足が……ゲフンゲフン!
気を取り直してティファが転移石に向き直る。
手を触れ、しばらくすると、
「行けます、マスター」
皆がティファの周りに集まり手を触れる。
「三十九階層へ」
浮遊感と共に転移、三十九階層にたどり着く。
そこは石造りの空間だった。
城の地下みたいな感じか?
ドワーフの国の城の地下みたいだ。
「マスター、こちらへ」
ティファに促されるまま、道を進む。
しばらく代わり映えのしない石造りの廊下を歩くと、突き当りに大きい扉があった。
扉には精緻な彫り物が施してある。
扉を開いて中に入ると玉座のような物があり、誰かが座っていた。
こんなところに人!? 俺は鑑定を通す。
~~~~~
キングヴァンパイア
ヴァンパイアの王
~~~~~
でしょうね! としか言えない鑑定結果だ。
もっと、こう、何かねぇの? と言いたくなる結果に舌打ちをこらえる。
「皆、ヴァンパイアの王だ。警戒を」
俺が皆に警戒を促す。
おもむろにキングヴァンパイアが立ち上がり、ビロードのようなマントを
そうはさせるか! 先手必勝!
カッ! ズドオオオン!
俺の雷魔術がキングヴァンパイアに刺さる!
出足の速い雷魔術は本当に便利だ。
しかし、キングヴァンパイアはマントをかぶり雷魔術を受け流す。
―あのマント、俺の魔術を弾いたぞ!?
ブワアアアアアアアアアアアアッ!
ズワッとキングヴァンパイアの影が伸びたと思ったら、影から黒い狼がたくさん現れた!
グルルルルルルルルルルルルル……
多数の黒い狼は唸り声を上げながらヨダレを垂らしている。
随分と腹ペコさんのようだ。
世が世なら動物団体に訴えられているぞ!
飼い主ならちゃんと世話しないとね!
ブワアアアアアアアアアアアアッ!
当の飼い主さん、もといキングヴァンパイアは体を霧状に変化させた!
死角から襲うつもりか!
しかし目の前には多数の黒い狼。
まずはこちらの相手をせねばなるまい。
ダッ ボンッ!
ツヴァイが前に出て黒い狼をぶん殴ると爆発音と共にかき消えた!
なんだ!? モンスターじゃない!?
~~~~~
シャドウマジックウルフ
影魔法、実体はない。
~~~~~
俺が鑑定を黒い狼に通すと影魔法の一部ということが分かった。
「皆、黒い狼はキングヴァンパイアの魔法だ!」
俺は鑑定結果を叫ぶ。
「シッ」
ザン ザシュ ボン ボンッ
ミーシャの攻撃で黒い狼が霧のようにかき消える。
しかしキングヴァンパイアが宙空から姿を表すと、お土産とばかりに黒い狼を増産していく。
―クソっ。ウザいな。
俺は内心、悪態をつくのだった。
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