第143話 骸魔墓地
「のわ~!? なのじゃ!」
ゼフィちゃんがサラちゃんに命じて火の塊をボンボンと投げつけている。
「気色悪いのじゃ!」
火の塊に燃やされて火柱となる多数の人影……。
そう、アンデッドである。
「ゼフィちゃんにも苦手なものが有ったんだなあ」
俺はしみじみと頷いていた。
俺たちは温泉宿に泊まった次の日には、次のダンジョンへと向かった。
それがこのダンジョン、骸魔墓地である。
ダンジョンの名前を聞いた途端にゼフィちゃんがプルプルしていたと思ったが、理由はこれか。
「わ~ん! 近寄るでない!」
煌々と火柱が照らす中、新たな火柱を生成していくゼフィちゃん。
火が落ち着いたところにはドロップアイテムが落ちている。
俺たちはいそいそとドロップアイテムを拾った。
「みんなひどいのじゃ。妾に押し付けよって……」
ぶつぶつと文句を垂れるゼフィちゃんは涙目だ。
ここは六十九階層。
最下層手前の階層だ。
いつものようにティファの先導で転移してきた。
しかし、最初にたどり着いた部屋がモンスターハウスだったのだ。
構造上そこを通り抜けないと下に行けないらしく、真正面からやり合うことになった。
もっとも、ゼフィちゃんが敵を蹴散らしてくれたが……。
彼女は尊い犠牲になったのだ! ゼフィちゃんっ!
いや、死んでないけどね! ちょっとチビったくらいだろう、多分……。
俺の頭の上のルンがミョンミョンしている。
ルンもそう思うか? うん、そうか。そうか……。
「あちらですね、マスター」
淡白にティファが案内をする。
洞窟のような造りのダンジョンを進み、地下へと伸びる階段を降りる。
階段を降りるとそこは草原のようなだだっ広いフィールドだった。
一見して環境層か? と思ったのだが、雰囲気が違う。
空はどんよりと曇り、薄紫色をしている。
腰高の草が生い茂り、足元の視界が悪い。
ポツポツと見える人工的な石は墓石だろうか?
何か出てきそうな雰囲気だなあ。
ちらりとゼフィちゃんを見ると、内股になりプルプルと震えていた。
おしっこ我慢してるのか?
「うう、嫌な雰囲気なのじゃ」
「うむ、もうボスの間だ。気を引き締めて行こう、コウヘイ」
「マスターなら大丈夫です」
「先程はゼフィに良いところを取られてしまったからな。次は我も前にでるぞ、婿殿」
フィールドの中ほどまで進むと、辺りが暗くなってきた。
―外はまだ明るいはずだが?
俺が疑問に思っていると墓石っぽい人工的な石がガタガタと揺れる。
「な、な、な、なんなのじゃ」
ゼフィちゃんが涙目になりながら震えている。
バタンッ ガタンッ バタンッ バタンッ ガタンッ バタンッ ガタンッ バタンッ
墓石らしきものが音を立てながら倒れる!
その地面の下から大量の骨が飛び出し、宙空を飛び交う。
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!
まるで骨の嵐だ。
乱気流のようにうねりながら一点に集る骨の破片。
「わ、わ、妾はこわくないのじゃ、フン!」
全くそうは見えない様相で強がるゼフィちゃん。
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ……
骨の集まりが振動しながら何かを形どっていく!
これは……?
~~~~~
パンデモニウムスケリトルドラゴン
ヘルボーンの集合体
~~~~~
「パンデモニウムスケリトルドラゴンだ! ヘルボーンの集合体!」
俺は鑑定結果を皆に伝える。
「うむ。巨大だな……」
「やりましょう、マスター」
「またドラゴンか! 我は腕がなるぞ!」
「怖くない怖くないのじゃ。あれはただの骨、ただの骨……」
ぶつぶつと自分に言い聞かせるように呟くゼフィちゃん。
いや、ゼフィちゃん。ヘルボーンの集合体なんだが。ただの骨ではない。
まぁ言うだけ野暮か。
キィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
黒板を爪で引っ掻いたような叫び声だ!
ゾクゾクしてくる。
「のじゃーーーーーーーーーっ!?」
びっくりしたのか叫びだすゼフィちゃん。
俺もビクッとしちゃったぜ。
ゼフィちゃんの叫び声にな。
スゥ……
パンデモニウムスケリトルドラゴンが息を吸い込む動作をした。
ブレスか!? しかし、君、息してんの!?
アインがドラゴンシールドを掲げて前に出る。
「ダメ元でもっ」
ヒュガッ パキパキパキ
ティファの氷の盾が張られる。
ブウン バシッ
俺も無魔術の盾を張った。
バギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!
パンデモニウムスケリトルドラゴンのブレスは雷のブレスだった!
電撃の渦がバチバチと張られた盾に当たって弾ける!
ビシビシビシ バキイイイイイイイイイイイイイン!
ティファの氷の盾が破られる!
ドッ ピキピキ パリイイイイイイイイン!
俺の張った無魔術の盾も破られた!
「ぬ。マリンちゃん」
ゼフィちゃんが呼びかけると、水の精霊がズワッと現れ腕を振るった。
ブワアアアアアアアアアアアアッ
水の防御膜が張られる。
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!
雷のブレスが水の防御膜に当たり蒸発していく。
イオン臭の様なものが辺りに立ち込めた。
「ふう」
なんとかパンデモニウムスケリトルドラゴンのブレスをやり過ごした。
俺は額の汗を腕で拭った。
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