第140話 キャプテンムック






「ふう……多かったな」


「うむ。物理が効かないのというのは、一時はどうなるかと思ったぞ、コウヘイ」


「マスター。ドロップアイテムです」


「我も魔法手段が無いからな。魔力剣は消耗が大きい」


「ボクもお化けは苦手だなー」


「あい?」


 皆が喋りながらドロップアイテムを集める。

 ヘルゴーストは魔石と魔力の粉、インテリアガーゴイルは魔石と聖なる灰。

 ミステリックハンドは魔石と砂金を落とした。


 なんか粉ものが多いな。

 チリトリとホウキが欲しいぜ。


 休憩を兼ねてドロップアイテムを集め終わると、俺たちは各自の装備の確認を行った。


「マスター、参りましょう」


「おう、行くか!」


 ティファの案内で多目的ホールを抜ける。

 下に降りる階段を見つけ降りていくと、目の前に大きな扉が現れた。

 扉にはなにやら精巧な彫り物がしてある。


 皆で扉を開け中に入っていく。

 そこは船倉のような場所だった。

 荷物の残骸と思われる物があちこち転がっている。


 部屋に入るとまたバタンッ! と入り口の扉が閉まった!

 またかよ! と思いつつ周りを見回す。


 ブウン


 部屋の奥の床に魔法陣が浮かび上がった。

 ズニョリと魔法陣から出てきたのは、三角帽子トリコーンをかぶった如何にもな海賊姿だった。


 腰にはカットラスを下げ、赤毛にヒゲ、毛むくじゃらの腕、と貫禄がある。

 目は落ち窪んでおり、濁った目をギョロつかせている。


 まずは鑑定だな。


 ~~~~~

 リビングデッドアーク

 キャプテンムック、赤くて毛むくじゃら

 ~~~~~


「リビングデッドアークだ。」

 俺が鑑定結果を皆に伝える。


 キャプテンムックがカットラスを抜き放つ!

 俺たちも身構える。


 キャプテンムックは抜いたカットラスを、騎士の“捧げ剣”のように顔の前に縦に掲げた。

 キャプテンムックの周りの床に魔法陣がいくつも浮かび上がる!


 ブウン ブウン ブウン ブウン ブウン ブウン ブウン ブウン ブウン ブウン

 クソっ。召喚魔法だったか。


 ~~~~~

 ヘルグール

 爪に毒がある

 ~~~~~


「取り巻きはヘルグール! 爪の毒に注意だ!」


 グオオ! ガッ

 ヘルグールの動きは素早い!

 目に残像を残し、腕を振るってきた。

 それを盾で受けるアイン。


 しかしその機動力があってもこんなに密集していたら効果ないだろ!


 カッ! ズドオオオン!

 俺の雷魔術が放射状に伸び、ヘルグールたちに刺さる!


 しかし、カクカクと動くヘルグールには効いているのか? 良くわからない。

 人体の関節の可動範囲を超えた動きで迫ってくる。


「シッ」


 キン! キン!

 ミーシャの連撃がヘルグールの長い爪に阻まれる!


「むん!」


 ブウン!

 ガーベラの大剣もヘルグールの素早い身のこなしを捉える事ができない!


「そいや」


 ゴアッ ブウウウン!

 クーデリアの一撃も、虚しくジェット音を響かせるだけだ!


 く……こいつら随分と身のこなしが良いぞ!?

 室内という限られた範囲の中、ヘルグールはあり得ない関節の動きをして俺たちを翻弄する。

 リビングデッドアークのキャプテンムックは高みの見物を決めている。


 その余裕面を崩してやるぜ!

 俺は地面に手をつき、大地の力を木製の床に流す。

 床板が変形し、ヘルグール達を捉える。


 ヒュガッ パキパキパキ

 ティファの氷魔術がヘルグールたちの下半身を凍らせていく。


「あい」


 カッ! ズドオオオン!

 ノーナのダメ押しの雷魔術が入った!

 ヘルグールたちは拘束されていない上半身をカクカクと動かし逃れようとする。


「シッ」


 ザン! ザシュ!

 ミーシャの連撃がヘルグールの首筋に決まった!


「むん!」


 ズッパアアアアアアアアアアアアアン!

 ガーベラの回転斬りだ!

 数体のヘルグールの上体が下半身と泣き別れする。


「そいや」


 ゴアッ ズガアアアアアン!

 クーデリアの可愛らしい掛け声と共にジェットハンマーが振られ、残りのヘルグール共をぶっ飛ばした。


 ザアっとドロップアイテムに変わるヘルグール。


 ダンッ! ガッ!

 そこへ高みの見物を決めていたリビングデッドアークのキャプテンムックが突進!

 それをアインが前に出て盾で受ける!


 ガッ キン ガキン

 キャプテンムックの連撃だ。


 なにやら凄い形相で正気を失っているようだ。

 いや、アンデッドに正気とかって話なんだが、先程とは変わって鬼気迫るものを感じる。


「ゴノ“ッミ”ドリ“ガァッ」


 キャプテンムックは濁った目で一点を凝視しながら手に持ったカットラスを我武者羅に振り回す。

 なんだ!? 奴は何を見ている?


 キン ガッ ギンッ

 キャプテンムックの連撃はアインが受ける。

 ヤツの視線の先を見るとそこにはノーナがいた。


 ? ノーナだと?


「ガヂャッ! ゴロ“ズッ!」


 キャプテンムックはくぐもった声でわめきながら執拗にノーナを狙っていた。

 ミーシャやガーベラの攻撃を受けてもお構いなしだ。


 奴は一点を見つめカットラスを振り回す。

 ノーナの髪を見ながら・・・・・・・・・・……。


「むん!」


 ザシュ!

 ガーベラの大剣がキャプテンムックの首筋に決まり、スポーンと飛んでいく。


「ア“ア”ア“ア”ア“ッ! ガヂャッ! ビン!」


 キャプテンムックがなにやら断末魔のような物を発しながらドロップアイテムに変わっていくのだった。






――――――――――――


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