第135話 最下層へ






 百三十二階層。


 転移石で転移をすると、そこはもう違う階層だった。

 足元は石畳のようで、周りは石造りの壁だった。


「なんだか随分と人工的な階層だな」


 俺が辺りを見回しながら言う。


「マスター、こっちの道が下へと進む道です」


「ふむ。最下層か」


「婿殿、気を抜くなよ?」


「あい! のーなも気をつけるます」


「すごい、ボクの国の古代遺跡みたいだ……」


 ティファの案内で道を歩いて行く。

 迷路のような道を歩いて行くと途中で広間のようなところに出た。

 円形の作りで均等に柱が立っており、柱と柱の間は石造りの壁だ。

 入ってきた入り口の反対側に扉が見える。


 俺たちが全員足を踏み入れると、入り口が閉ざされる。


 ズウウウウウウン!

 入り口が上から降りてきた石の壁によって塞がれた!

 すると出口の扉に彫られた紋様が怪しく光る!


 ブウン

 出口の扉がなにやら怪しく振動したかと思うと、周りの柱と柱の間の壁に魔法陣のようなものが浮かび上がった!


 ブウン ブウン ブウン ブウン ブウン ブウン ブウン ブウン ブウン ブウン


 これは……?


「む。みな中央に集まれ! コウヘイ!」


「マスター、敵襲です」


「腕が鳴るぞ、婿殿」


「あい、のーな、ズドンしまつ!」


「ボクも頑張るぞ!」


 広間の中央に皆が集まる。円陣だ。

 中心にはノーナがいる。


 広間の壁という壁から敵が現れる。

 ヌッと出てきた手は鎧に覆われている。

 ガントレットか?


 続いて足が現れる。

 脚甲に覆われた足はガシャン! と音を立てて地面を踏みしめる。


 全身があらわになる。

 そいつらは全身を鎧で覆った兵士の様相をしていた。

 全身が現れたらすかさず鑑定だっ!


 ~~~~~

 ワンダリングアーマー

 彷徨う鎧。強い。

 ~~~~~


「ワンダリングアーマーが10体! まだ後続がいる!」


 俺が鑑定結果を皆に叫ぶ。

 ガシャガシャと音を立てながら、壁から次々と現れるワンダリングアーマー。


「あい」


 カッ! ズドオオオン!

 先手必勝!とばかりにノーナが雷魔術を放った。


「シッ」


 ザン! ザシュ! ザン!

 続いてミーシャの連撃だ。敵の一体に入るとそのまま崩れてアイテムドロップへと変わる。


「せい」


 ゴアッ! ズドオオオン!

 雷で硬直している敵にクーデリアのジェットハンマーが刺さった。

 後続を巻き込みながら吹っ飛び、ザアっと溶ける。


 ドッ ズガアアアアアン!

 アインの右ストレートが決まる!

 敵は糸の切れた人形のように崩れ落ちた。


 ヒュガッ パキパキパキ

 ティファの氷魔術でワンダリングアーマーの足止めだ。


「勝機」


 ズッ ドパアアアアアアアアアン!

 ガーベラの大剣が振られ数体の敵が上半身と下半身で分かたれる。

 ヒュンヒュンガシャリと地面に落ちればドロップアイテムに変わった。


 おりゃ

 カッ! ズドオオオン!

 俺も雷魔術で敵を撃つ。

 ノーナとは反対側の敵を狙う!


「むん!」


 ブンッ ドパアアアアアアアアアン!

 ガーベラの一振りで数体のワンダリングアーマーが溶ける。

 しかし壁で光っている魔法陣からは次々と敵が湧き出てくる。


「シッ」


 ザン ザシュ ザン

 ミーシャが連撃で敵を屠る。


「数が多いな。さすがは百鬼・・迷宮ってことか?」


 俺は思わず愚痴をこぼした。


「あい」


 カッ! ズドオオオン!

 扇状に広がった雷魔術がワンダリングアーマー達を捉える!


「えいやっ」


 ゴアッ! ズドオオオン!

 横に振られたクーデリアのジェットハンマーは数体の敵を巻き込みながら加速する。


 おりゃ


 カッ! ズドオオオン!

 俺もまた雷魔術で前衛の補佐だ。


 ドオオオオオオン!

 アインの右ラリアットが敵を粉砕していく。

 もう一体ゴーレム連れてくれば良かったかな?

 そうすれば、マグ○ットパワーが……ゲフンゲフン!


「だしゃ!」


 ドッ ズパアアアアアアアアアアアアン!

 ガーベラの大ぶりの大剣がワンダリングアーマーの群れに刻まれる。

 ほとんどボーリングのピンみたいだな……。

 俺は吹っ飛ぶ敵を見ながら少し遠い目をした。




 ようやく全てのワンダリングアーマーを吐き出したのか、後続が止んだ。

 辺りには魔石とドロップアイテムがゴロゴロと転がっている。

 ドロップアイテムはミスリル鉱石だった。


 皆で手分けして集めると、俺の霧夢の腕輪にしまい込んだ。

 このアイテムボックスどのくらいの容量なんだろうな?

 時間経過もしないし。


 しばらく休憩をはさんでいよいよ最下層へと挑む。

 出口の扉に触れるとズアッとひとりでに開いた。

 おうふ、ビビらせるなよ。


 扉をくぐると下へと続く階段があった。

 皆で降りていくと少し開けた場所に出る。

 目の前にはバカでかい扉が待ち構えていた。


 扉には精巧な彫刻が施されており、何かの巨大な魔物を表しているようだ。

 なんだ? この魔物は? 角が生えていて足が六本? 四腕熊みたいだな。


 休憩は手前の広間で取ったので俺たちは準備万端だ。

 顔を見合わせると皆が頷いた。


「開けるぞ」


 皆で扉を押して開けると目の前にはバカでかい獣が待ち構えていた。

 俺は視界に入ったところで鑑定を通す。


 ~~~~~

 リトルベヒーモス

 とても強い

 ~~~~~


「グロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ……」


 リトルベヒーモスは巨体を揺らしながら俺たちを目にとめると唸り声をあびせるのだった。






――――――――――――


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