第134話 ウチの娘はやらン!
「ウチの娘はやらン!」「あラあラ、まァ」
キキの父親らしき人が開口一番にそう言った。
母親らしき人は頬に手を当てなにやらニマニマとしている。
いや、俺も訳が分からんのだが。
というのも、俺たちはキキを家に送るべく天龍のエウリフィアの背に乗り、魔大陸へとやって来たのだ。
俺、ミーシャ、ティファ、ガーベラ、ノーナ、クーデリアにアイン、そしてエウリフィアが一緒だ。
俺はスライムのルンを頭に乗せて、抱っこ紐の中にはグリフォンの子供のヴェルに、天龍の赤ちゃんのアウラを抱えている。
「いや、ちょっと言っている意味が分からないんですが……」
俺が正直な気持ちを言ったところで、この親父さんの憤慨は止まるところを知らない。
「どうセまたウチのキキを娶りたいという輩だろウ!」
親父さんは腕を組み、そっぽを向いて言い放つ。
そのキキはと言えば、何故か頬を赤く染めてモジモジとしている。
え!? 何!? そういう流れなの!? コレ。
母親らしき人は頬に手を当て、俺たちの様子を見守るだけだ。
「うむ。ここは一つ課題を与える、と言うところで手を打ってはいかがだろうか?」
見かねたミーシャがそんな事をいう。
「「課題!?」」
俺と親父さんがハモった。
「うむ。これが出来たら納得するというたぐいの課題を設けるのだ」
う~ん……課題なぁ。
なんか強制的にやることになっているんだけど?
「その課題だけど。俺がやらないとダメなのか?」
俺がそう言うと、キキが悲しそうな顔をする。
キキの目に涙が溜まっていき……。
っ!?
俺の脳裏に
「くっ! やるよ! やればいいんだろ!?」
俺は半ばやけくそに課題に挑戦することを宣言する。
親父さんは腕を組み、時折アゴをさすりながら難しい顔をしていたが、ふと思いついたのかパアッと顔をほころばせた。
「よシ! それなラ魔大陸の百鬼迷宮に挑戦してもらウ! 最下層のボスを倒すのダ!」
うんうんそれがいい、とばかりにうなずく親父さん。
「百鬼迷宮? どんなところなんだ?」
俺は疑問に思い、キキに尋ねる。
「地下百階層は超えると言われている大型迷宮でス。父上! あんまりでス!」
親父さんにプリプリ怒るキキ。
百階層超えかぁ。
俺は遠い目をしながら、心の平衡を
ルンをぽよぽよして落ち着く。
「で。何処にあるんだ? その百鬼迷宮とやらは」
「コウヘイさン!」
キキがパアッと顔を輝かせる。
「ふン! アルシア山の麓にあル! それト、キキはしばらく家にいるようニ!」
なんでも魔大陸で一番高い山の麓にその百鬼迷宮っていうのがあるみたいだ。
魔大陸で一番深い迷宮がその百鬼迷宮ということらしい。
一番高い山ならエウリフィアが知っているという事で俺たちはそのアルシア山に向かうことになった。
「コウヘイさン! 頑張ってくださいネ!」
キキが頬を染めながらフンス! と応援してくる。
「まぁ、やるだけやってみるよ」
俺は苦笑しながら頷いた。
天龍のエウリフィアの背に皆で乗り、アルシア山にたどり着く。
あっという間だ。
「ここらに町があるらしいんだけど……」
俺は天龍のエウリフィアの背の上からキョロキョロと辺りを見回した。
おっ、有ったあった。
「フィア! あそこに町があるから近くに降ろしてくれ!」
『は~~~い』
地面に降りて歩いて町の入口まで向かう。
検問所のような入り口で冒険者証を提示して中に入った。
ちなみにガーベラが銀級で、エウリフィアは特級の冒険者証だった。
エウリフィア曰く「年の功」とのこと。
この町は山の斜面に沿って作られており、ダンジョンがある建物も坂の途中にあった。
皆でゾロゾロと建物の中に入る。
ゴーレムのアインも一緒だ。
「ところでマスター。ダンジョンポイントがかなり貯まっております」
「ああ、そうなんだよなぁ。たまに使ってみてはいるんだが……」
「これだけあれば、他のダンジョンを掌握出来るかも知れません」
そうなのか? ただ、この百鬼迷宮は百層超えの大型迷宮だぞ?
「まぁ、できたらショートカットしたいな」
「かしこまりました。マスター」
ティファとダンジョン談義をしていると皆がキョロキョロと建物の中を見回した。
「お姉ちゃんは留守番していますね~」
エウリフィアはダンジョンに潜らないらしい。
報酬のハンバーガーセットはあくまでも移動の手間賃とのこと。
「分かった。フィアは宿でも取って待っていてくれ」
俺がエウリフィアに告げる。
するとルンがポンと俺の頭から飛び降りエウリフィアの頭の上へ。
ルンもお留守番か。
「ふむ。どこのダンジョンも入り口はそう変わらんな」
「うむ。婿殿のダンジョン、スティンガーだったか? 竜の巣も同じ様な作りだ」
「あい!だんじょん!」
「ボクはダンジョンにはあまり行ったことがないですね」
ノーナの手を引いたクーデリアは俺たちとダンジョンに潜るのは初か?
銘々で話している間にティファが中央に設置してある転移石に触れて目を閉じている。
「どうだ? ティファ」
「……はい、マスター。いけそうです。……ハックしました。最下層の手前の階層に行けます」
「おしっ、このまま行くか! 皆もティファに触れてくれ」
「うん? このまま最下層手前の階層か。楽だな」
ミーシャが鼻を鳴らす。
「婿殿、なんだか我はズルをしている気分だぞ」
「いやいや、ガーベラ。れっきとした俺たちの実力だって」
「あい!」
「これが、ダンジョン……」
約一名間違ったダンジョン攻略の常識を植え付けられたまま、俺たちは最下層手前の階層に転移するのだった。
――――――――――――
拙作を手に取って頂き誠にありがとうございます。
もし面白いと思った方は評価やフォロー、応援をして下さると作者のモチベーションが上がります。
面白いと思った方は評価を☆三つ、詰まらないと思った方は☆を一つでかまわないので付けてくださると参考になります。
よろしくお願い致します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます