第133話 打ち上げられた少女






「何とかなったな……」


 俺たちはリトルクラーケンを倒した後、島に戻ることにした。

 船は波に流されていたので半周ほどぐるりと回っていく感じになる。

 岸沿いに船は進む。


「むっ。コウヘイ、人が倒れているぞ!?」


 ミーシャが形の良い耳をピクピクとさせながら、片手を目の上にひさしのようにして言う。


「なんだって!?」


 俺たちは人が倒れているという岸に船を向かわせた。

 すると波打ち際には何かの残骸と、一人の少女が倒れていたのだ。

 その少女を船へと運び入れ、元の海岸まで移動する。


 俺が先に船を降り、海岸の地面に手をついて大地の力で桟橋を作った。

 これで船の乗り降りが楽になるね。

 ゴーレムのアインを連れてきて、意識の無い少女をアインの背に乗せる。


 とりあえず拠点で看病かな。


「皆、俺とアインは先に拠点に戻ってるよ」


「分かった、コウヘイ」


 ミーシャが返事をした。


 地下室のある小屋から拠点の倉庫の地下へと転移し、階段を上がって拠点へ。

 客間のベッドに意識のない少女を寝かせる。

 俺は全身が磯臭いのに気づく。


 こりゃ先に風呂だな。

 苦笑しながら温泉へと浸かりに行った。

 ソープナッツでしおを落とし、湯船にザッと浸かってきた。


 さて、さっぱりしたところで看病の続きだ。

 意識の無い少女のおでこに乗せた布を、たらいの水に沈めて絞り、また乗せる。

 手を握ってやり大地の力を流し込んだ。


 ポワンっ

 いつもの謎の発光現象が起こった。

 スゥスゥと少女の寝息だけが聞こえる。


「どうしたもんかなぁ」


 俺は少女の寝顔を見ながら独り言を言う。


「う……」


 一瞬目が開き少女が俺と目が合った気がしたが、また少女は眠りに落ちてしまった。



 夕方。

 皆が海から転移石を使って帰ってきた。


「ただいま。どうだ? コウヘイ」


「ああ、おかえりミーシャ。まだ意識は戻らないみたいだ。一回起きそうだったんだけどな」


「では、風呂から上がったらミーシャが変わろう」


「おう」


 帰ってきた皆は交代で風呂に入るようだ。

 さすがに全員入ると窮屈だからね。


 神獣も秋田犬サイズで入るようだ。

 気を抜くと元のサイズに戻っちゃうんだよな。

 大丈夫だろうか。



「コウヘイ、変わろう」


 風呂上がりでさっぱりした顔のミーシャがやって来た。


「うん。頼んだ」


 さて、俺は夕食の準備でもしますかねぇ。

 その前にアイン達に大地の力を注ぎ込む。


「お疲れ様ー」


 一列に並んだアイン達に順番に力を流す。

 いつの間にか後ろに並んでいたノーナとティファにも流してやった。

 このちゃっかりさんめ。



 海鮮尽くしの夕食を終えた頃、意識のない少女が目を覚ました。


「この度は助けていただきありがとうございまス」


 ペコリとお辞儀すると、紫の髪が揺れる。

 頭の両脇からは牛の様な角が生えており、先端がハート型の尻尾も揺れている。

 瞳は黄色で少しタレ目だ。

 胸は大きい。


「船の旅で夜中にクラーケンに襲われてしまったのデス。他の人たちはいましたカ?」


「いや、君が海岸に倒れているのをたまたま見つけたんだ。他には人はいなかった」


 俺が少女に説明する。


「そうですカ」


 少女が悲しそうな顔をする。


「俺の名前は耕平って言うんだ。よろしくな」


「キキはキキと言いまス。よろしくデス」


 皆も、銘々自己紹介をする。


「ところで婿殿。あの大剣だが我が持っていても良いのか?」


 ガーベラがドラゴンキラーのことを言う。


「ああ、そうだな。他に大剣を使う奴はいないから持っていてもいいぞ? 他にも鎧なんかもあったな」


「それは我も見てみたいな。つかぬことを聞くが、婿殿。我には皆のように指輪を贈ってくれぬのか? 待っているのだが……」


 ガーベラがモジモジとしながら言う。

 ガーベラもか!

 いやまぁ指輪くらい良いけどさ。

 俺は霧夢の腕輪の中を物色する。


 陽炎の指輪っていう丁度いいのが有ったので、俺はガーベラの左手の薬指にはめた。

 ガーベラは明かりに透かすように宙空に掲げるとニマニマとにやけるのだった。


「……」

 その様子をキキは無言で見つめていた。


 ドラゴンアーマーを見せると、ガーベラはおもむろに装着しだす。

 おお? ぴったりじゃないか。

 まるで誂えたかのようにフィットしている。

 ダンジョン製だからな。サイズも自動調整だ。


「じゃあ、鎧もガーベラだな。後はっと……」


 他にもドラゴンローブとドラゴンリングが有ったので、それはノーナとクーデリアに渡した。

 お土産だな。


「あい。おみやげ! のーな嬉しいです」


「ボクにまで……ありがとうございます」


「おう、どういたしまして、だ。それでキキ。キキの出身は何処なんだ?」


「キキの出身は魔大陸と言われるところデス」


 そうなのか。それでちょっとなまっているように聞こえるんだな。

 異言語理解はたまに仕事をさぼるから壊れたのかと思ったぜ。


「フィア。送っていってやることは出来るか?」


「はんばーがー五個! セットで! お姉ちゃんは銅貨のびた一枚もまけませんからね!」


 ツーンとそっぽを向くエウリフィア。


「分かった分かった。ハンバーガーセット五個な」


 俺が苦笑しながら頷くと、ニンマリと微笑むエウリフィアだった。






――――――――――――


 拙作を手に取って頂き誠にありがとうございます。



 もし面白いと思った方は評価やフォロー、応援をして下さると作者のモチベーションが上がります。



 面白いと思った方は評価を☆三つ、詰まらないと思った方は☆を一つでかまわないので付けてくださると参考になります。



 よろしくお願い致します。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る