第132話 南の島②
「随分と大物いったな、ミーシャ」
「うむ。水中に潜っていたら襲われたのだ。恐らく魔物だろう」
ミーシャはデカい魚を担いでゴーレム達が
アレ、食えるのかな。
俺はミーシャが担ぎつつも、引きずっている砂浜の跡を見ながら思った。
シュルシュルシュル
俺は今、船を作っている。
拠点から持ってきた木材を加工し、あっという間に船が完成した。
「よーし! これで少し沖で釣りでもするか!」
「コウヘイさんん、この船ぇどうするんですかぁ?」
「です?」
「おっきい船だな! ここに住めそうなんだぜ!」
「おう。これに乗って釣りでもしようかと思ってな」
「釣りぃですかぁ」
「ですです」
「釣りならいつも湖でしているんだぜ!」
「いや、たまには海を眺めながらぼーっとするのも悪くはないかと思ってな」
「うむ? こんな大きな船どうするのじゃ?」
「あい?」
三人娘と話していたらゼフィちゃんとノーナがやってきた。
「どうって、海に浮かべるんだよ」
俺がゼフィちゃんに答える。
「そうではなくて、帆も
「あい、ただの箱」
んあああああああああああ!
そうだった! すっかり頭から抜けていたぜ。
「ふふん。このゼフィちゃんに任せれば帆も櫂も必要ないのじゃ。マリンちゃん」
ゼフィちゃんがそう言うと水の精霊が現れ、その腕を振るう。
船が動き出し、海の中へと進んでいく。
おお! いいんじゃないか?
そこへ皆が集まってくる。
「ふむ、大きな船だな。コウヘイ」
「あなた様、この船でどうするおつもりですか?」
「さすがはマスターです」
「ボクは泳げないから船はあまり……」
「婿殿、これで海を股にかけるのだな!」
「お姉ちゃんはお船に乗ったことがありません!」
皆が
「おう。これに乗って皆でゆっくり釣りでも、と思ってな。参加したいやつだけでいいぞ?」
「あなた様、日差しが強いので私は浜で見ています」
「ボクもちょっと……」
「マスター、ワタシも陸にいます」
アルカ、クーデリア、ティファは船に乗らないようだ。
俺、ミーシャ、三人娘、ゼフィちゃん、ノーナ、ガーベラとエウリフィアが釣りをする。
ゼフィちゃんの精霊の力で、船は沖へと進んでいく。
「風が気持ちいいな」
「はいですぅ」
「ですです」
「ははっ。速いんだぜ!」
三人娘が船首に立って沖を眺めていた。
「ゼフィちゃん! こんな所でいいぞ?」
「うむ。マリンちゃん」
水の精霊の腕がスッと降ろされると船の動きが止まった。
俺はいそいそと皆に釣り竿を配っていく。
釣り餌も浜で回収したしな。
一応、木材から作った疑似餌も用意してあるぜ。
のんびりと時間が過ぎていく。
俺は作成した椅子に座って沖をボーっと眺める。
「またぁ釣れましたぁ」
「です?」
「マロンばっかり釣れるんだぜ!」
「ふむ、たまにはこうやってゆっくりするのも悪くはないな。ガーベラは釣れているか?」
「うむ。婿殿についてきて良かったのだ。こっちは先程大きいのが釣れたぞ、ミーシャ」
「むう、お姉ちゃんは全然釣れませーん」
「きっと邪な考えが魚にも伝わっているのじゃ、ここはコウヘイのようにボーっとするのじゃ」
「あい? また釣れました!です!」
周りを見ると
俺もぼちぼちと釣れてはいるが、マロンやノーナはその比ではないのだ。
そうして皆でゆっくりと釣りを楽しんでいると、船の下の海が黒く染まる。
!? 何かの巨大な影か!
ザパアアアアアアン!
何かの触腕が船に上がってきた。
周りを見ると、四方を触腕で囲まれている!
船ごと飲み込むつもりか!?
バキバキと船体が悲鳴を上げる!
俺は床に手をついて、大地の力で船体の補強を
「くっ。武器がない!」
ミーシャが悔しそうな声を上げる。
俺は霧夢の腕輪に入っている武器を皆に放出した。
「この武器を使え!」
「婿殿! この大剣は……!」
ガーベラが手にしたのは竜殺しの大剣、ドラゴンキラーだった。
「あい」
カッ! ズドオオオン!
ノーナの雷魔術が触腕に当たる。
「マリンちゃん、敵をあぶり出すのじゃ」
ゼフィちゃんがそう言うと、水の精霊が両手を
ザパアアアアアアン!
海から上がってきたのは巨大なタコのような魔物だった。
クラーケンってやつか? 鑑定する。
~~~~~
リトルクラーケン
小型のクラーケン
~~~~~
おいおい、あの巨体で小型かよ。
俺が理不尽な鑑定結果に悪態をついている内に、水の精霊によってその全貌が
「っおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ガーベラの気合とともに体が竜化していく。
と同時にドラゴンキラーの刀身が真ん中からバキン! と割れ、中心から魔力の剣が伸びていく。
バチバチと鳴る大剣を担いだガーベラはその場から飛び立つと、大空高く飛んでいく。
「っおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
宙空から一転、隕石のように落ちてくるガーベラ。
魔力をバチバチと充填させた大剣をクラーケンに振り抜いた!
「む。マリンちゃん」
水の防御膜が精霊によって張られる。
ドパアアアアアアアアアン!!
極太の柱のような水しぶきが晴れると、そこには大剣を振り抜いたガーベラと、息の絶えたクラーケンが浮かんでいるのだった。
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