第107話 ミーシャとデート






 ザン! ザシュ!


「ゴブッ」 「ゴブロッ」


 俺たちは王都への道の途中でゴブリンの群れに遭遇していた。

 馬車の専属の冒険者と協力しながらゴブリンを倒す。



 昨晩は銀月亭に皆で泊まった。

 人数が多かったので泊まれるか心配だったが、なんとか泊まれた。


 翌朝、乗合馬車で乗り合わせ、王都に旅立った。

 その途中でのことだ。


 俺は次から次へと現れるゴブリンにぼやいた。


「なんだか数が多いな」


「はいぃ」

「です!」

「アタシは物足りないぜ!」


 三人娘だ。以前、コボルトに袋叩きされていたその姿はもう無い。

 危なげなくゴブリンを捌いている。


「数だけですねマスター」


「あなた様、このゴブリン達はどこから来たのでしょうね?」


「うむ。どこかに巣穴があるに違いないのじゃ」


「ふむ。しかし今は旅の途中の身、ゴブリン共を殲滅している暇は無いぞ? 王都の冒険者ギルドに報告だな」


「ウォフ!」


「お前らやるな!」


 馬車の専属の冒険者だ。


「俺たちの仕事がなくなっちまうぜ。でもまぁありがとな!」


 専属の冒険者はそう言うと、道の端にゴブリン達のむくろを運んでいった。


 その後も馬車での移動は続いた。

 パラパラとゴブリンや小型の狼のモンスターが襲ってきたが、馬車専属の冒険者たちにあっさりと追い払われていた。


 そうやって何日か進むといよいよ王都だ。

 ちょっと前に来たんだけどな。


 いつ見ても大きな王都の威容を眺めながら列に並ぶ。

 入街の検査の列だな。


 並んでしばらく、俺たちの番で冒険者証をそれぞれが見せていく。

 何の問題もなく門を通過し街に入った。


 噴水のある広場を過ぎ、乗合馬車の待合所へとたどり着く。


「ふぅ~」


 俺は馬車から降りると伸びをした。

 バキボキと背筋が鳴る。


「コウヘイ、今日は王都で一泊しよう、その間に飛龍の予約を取るのだ」


「おう。ミーシャはどこか良い宿を知っているか?」


「うむ。空いていれば良いのだが……」


 ミーシャの案内で王都の街を歩く。

 アルカ達は物珍しさからあちこちに目をやっている。

 俺もキョロキョロと辺りを見てしまう。


 はぐれないように気を付けながら、冒険者ギルドに寄ってから宿の前へたどり着いた。

 看板には金月亭と書かれてあった。


 んん?


 疑問に思いながら宿に入る。

 どこかで見たことのあるような受付で人数分泊まれるか尋ねる。


「あら、ミーシャちゃんじゃない。久しぶりね」


「うむ。そちらも息災なようで何よりだ」


「スティンガーの町にまだ居るの? メイは元気かしら?」


「いや、ミーシャは今は森の奥に住んでいてな。しかし、この間も銀月亭に泊まってきた。メイも元気だったぞ」


「そうなのね、それで何名様かしら?」


「うむ。八名と従魔を三体分みてもらえるか」


「あら、ミーシャちゃんもパーティを組むようになったのね」


 どうやらこの金月亭は、スティンガーの町の銀月亭の親族の方が運営しているようだ。

 部屋も全員分泊まれるらしい。


 記帳を済ませて部屋に案内されていく。


「驚いたな、ほとんど銀月亭と一緒の造りじゃないか」


「うむ」


 いたずらが成功したような顔でミーシャが返事をする。


「部屋に荷物を置いたら飛龍便の確認だな。コウヘイも一度見ておいたほうが良いだろう」


「分かった。荷物を下ろしたら呼びに行くよ」


 アインと部屋に入り、荷物を下ろす。

 籠に抱っこ紐の中のヴェルとアウラを移してからミーシャを呼びに外に出た。


 コンコン

「耕平だ。ミーシャいるか?」


 カチャリ

「うむ。では行くか」


 ミーシャに連れられて飛龍便の受付をしている場所へ行く。

 入り口には飛龍が書かれた看板があった。


「ここで行き先の確認と人数分の予約を入れるのだ」


 ミーシャの先導でテキパキと予約が出来た。

 支払いは全部俺持ちだ。

 ドワーフの国からたんまり貰ったからな。


 これで次回から一人でも出来るね。

 いや、そんな状況なかなかこないとは思うが。


―夕食まで時間があるな。


 俺はミーシャのピクピクと動く猫耳を見ながらそんな事を思う。


 飛龍便の建屋を出ると俺はキョロキョロと辺りを見回した。

 何かちょうどいい店は無いかな。


 その間もミーシャはズンズンと道を進んでいく。

 お? あそこなんていい感じじゃないか?


 俺はミーシャに駆けより手を取った。

 剣だこのある小さな手だ。


「うむ? どうしたコウヘイ?」


「あ、ああ。あそこのカフェで一息いれないか? せ、せっかく王都に来たんだしなっ」


 俺は少し上ずった声でミーシャを誘う。

 一平凡な男には美少女をデートに誘うなんてハードルが高いんだぜ。


「うむ。ちょうどミーシャも喉が乾いていた所だ。寄っていこう」


 少し頬を上気させてミーシャが答える。

 二人で大通り沿いのオープンカフェに入る。

 店員に案内されて見通しの良い場所に通された。


「では、お決まりでしたら呼んでくださいね」


 店員の女性にメニューを渡される。

 メニューをちらりと見るとずらずらと料理などの名前が書かれている。

 いや、名前だけ書かれていてもさっぱり分からん!


「ミーシャはフレッシュジュースを頼もう。コウヘイは決まったか?」


「あ、ああ」


 俺は目をグルグルさせながら返事をした。






――――――――――――


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