第102話 お土産






 馬車で何日かかけてスティンガーの町に着いた。

 往路と違って道中、野盗が出ることもなく平和にたどり着くことが出来た。


 今日は銀月亭で一泊する。

 その前に冒険者ギルドへ寄っていき、クーデリアの冒険者登録と天龍の赤ちゃんのアウラの従魔登録を済ませておく。


 一応クーデリアもドワーフの国の身分証を持っているのだが、旅人扱いとなるので定住者の証として作っておく感じだ。

 無事に登録を済ませたら銀月亭だ。メイちゃんは元気かな?


「いらっしゃいませー。銀月亭へようこそー」


 メイちゃんの受付を済ませて各部屋ごとに移動する。

 俺とツヴァイ、ミーシャとノーナ、クーデリアとドライという感じだ。

 ドライには先に大地の力を注ぎ、ねぎらった。



 翌朝、銀月亭で朝食を取り、宿を出る。

 朝の人通りの多い大通りを歩いてダンジョンのある建物へと向かう。

 ノーナはドライの背負籠の中だ。


 入り口でチェックを済ませ、中央にある転移石へと向かう。


「なぁ、クー。俺たちについて森で生活なんて良かったのか? 言っちゃあなんだが温泉くらいしかないぞ?」


「はい、コウヘイさん。その温泉が重要なのです! ミーシャさんもノーナも見れば輝く髪の美しさと言ったら……ボクも温泉に入りたいです!」


 この前、クーデリアがウチに来たときは話し込んで遅くなっちゃったから風呂へは案内していないんだよな。

 確かに、ミーシャとノーナの髪はしっとりツヤツヤだ。

 公爵邸でも照明の光をよく反射していたっけ。


 美容のためにあんな森に住むとは、この世界でも女性の執念とは……

 俺は少し遠い目をした。


「ところでコウヘイさん。こちらはダンジョンですよね? 森に帰るのではないんですか?」


「ああ、これは内緒なんだが……(実はここの転移石とウチの拠点は繋がっていてな。ここから家までひとっ飛びという算段だ)」


「そうなんですか!?」


「シーッ」


 俺が人差し指を当ててクーデリアをさとす。


「わわっ」


 クーデリアは慌てて両手を口に当てた。


 中央に設置してある大きな転移石に皆で向かう。

 俺が転移石に手を触れると皆が俺の肩に触れた。


「じゃあ、行くぞ? 転移。森の拠点へ」


 俺がそう呟くと、エレベーターが動く時のような浮遊感で、一瞬クラっときた。

 瞬きの間に拠点の倉庫の地下へと転移した。


「すごい……本当に転移できた……」


 クーデリアが驚く。


「うむ、帰ってきたな。まずは風呂だ」


 ミーシャがそう言いながら階段を登っていく。


「あい。のーなも入るます!」


 ノーナも後に続いていく。


「さ、クーデリアも行くぞ」


 俺は抱っこ紐の中のヴェルとアウラを撫でつつクーデリアをうながし、階段を登った。

 階段を登ると、久しぶりの光景が目に入る。

 広場ではアインとウノ、ドスが畑の面倒を見てくれていた。


「アイン、ウノ、ドス、留守番ありがとうな。お疲れ様」


 俺はそれぞれを撫でながら大地の力を流してやった。


 ポワンっ ポワンっ ポワンっ

 アイン達は頷くと農作業に戻っていく。

 心なしか元気になったように見える。


 俺はそれを見届けると、拠点の入り口を開けて中に入った。


「ただいまーっと」


「おかえりなさい、マスター。無事にお戻りで何よりです」


 出迎えてくれたのはティファだ。


「おう。三人娘は?」


「はい、マスター。三人は釣りに行くと言っていました」


 三人娘は釣りか。天気もいいしな。うらやましい。


「そうそう、これ。お土産な」


 俺はガサゴソと霧夢の腕輪を操作して銀細工のくしを取り出し、ティファに渡してやった。


「これは……ありがとうございます、マスター」


 ティファはそう言うとくしを胸におし抱き、ニコッと滅多に見せない笑みを浮かべるのだった。


 荷物を整理して一息つく。

 ヴェルとアウラを抱っこ紐から籠に移した。

 ミーシャ達は風呂に入るみたいだ。


 俺は木の端材から垢すりやタオルを作る。


「クー、これを使ってくれ。使い方なんかはミーシャ達にでも聞いてくれ」


「コウヘイさん、ありがとうございます」


 ミーシャがノーナの手を引き風呂へと向かう。

 クーデリアもそれについて行った。


「ではマスター。ワタシも一風呂浴びてきます」


 ティファもか! そんなに風呂ばかり入っていたらふやけちゃうぞ?

 彼女たちを見送ると、風呂の方から入れ違いで誰かやって来る。


「あなた様、お邪魔しております」


「うむうむ。良いお湯だったのじゃ」


 エルフのアルカとゼフィちゃんだ。いや、エルフの女王様な。

 髪の色や目の色が同じなので、パッと見歳の離れた姉妹にみえる。

 エルフの幼女の方が女王様だ。


「ああ。ただいま」

 俺は二人に帰宅の挨拶をした。


「かの国はどうじゃったのじゃ?」


「あなた様、私も聞きたいです」


「おう。ドワーフの国な。まずは何と言っても飛龍便だろう。空の旅は快適だったぞ?」


「ぬう。飛龍を飼いならすとはやるのじゃ。妾も乗ってみたいものじゃ」


「叔母上は神樹の森で執務がありますからね。無理ではないでしょうか?」


「コウヘイ! アルカちゃんがいじめるのじゃ!」


 ヨヨヨ、と泣き真似をするゼフィちゃん。

 そこへ三人娘が釣りから帰ってきたみたいだ。


「ああぁ、おかえりぃなさいですぅ」

「です!」

「やっと帰ってきたんだぜ!」


「おう。ただいま」






――――――――――――


 拙作を手に取って頂き誠にありがとうございます。




 これにて三章は終わりです。ここまで読んでくださり誠にありがとうございます。





 次話から四章がはじまります。





 引き続き楽しんでいただけると幸いです。




 もし面白いと思った方は評価やフォロー、応援をして下さると作者のモチベーションが上がります。


 以下のページで評価をお願いします!

 https://kakuyomu.jp/works/16817330650163483570/reviews


 面白いと思った方は評価を☆三つ、詰まらないと思った方は☆を一つでかまわないので付けてくださると参考になります。



 よろしくお願い致します。 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る