第101話 公爵邸②
公爵邸で話し込んでいると夕方になっていたので泊まっていくことになった。
それぞれ広い客室に案内されて荷を下ろす。
俺は霧夢の腕輪があるから荷物は少ないんだけどね。
ミーシャもガイシャリから得た収納袋があるから荷物は少ない。
クーデリアが大きな荷物を背負っていたな。
夕食の前に身を清めるということで風呂を貸してもらった。
ここの風呂は蒸気で汗を落とすというサウナ方式だ。
蒸気の立ち込める部屋で、何かの植物を束ねたもので体を拭い身を清める。
小姓のような人を付けると言われたがそれは断り、俺は一人で入った。
いや、ルンが一緒か。
男は入る人が俺しかいなかったので一人でほぼ貸し切りだ。
ルンがサウナ式の風呂で不思議そうに体を伸ばしていた。
やっぱり風呂って言ったら湯船が無いとな。
ルンもそう思うだろ?
風呂、もといサウナを出てさっぱりした俺は外に出る。
すると小姓達が待ち構えていて体を拭き上げてくれる。
いやまぁ、一人で出来るんだがあんまり断るのもな。
彼らの仕事がなくなってしまうわけだし。
お仕着せのような物も用意されており、それを小姓に着せられていく。
大きくて立派な姿見の前で確認してみれば、そこには服に着られた平凡な少年の姿が映るばかりだった。
俺は苦笑しながら食堂へと案内について行った。
食堂に案内されてしばらくすると、女性陣がメイドに案内されて入ってくる。
みな、ドレスを着飾っておりよく似合っている。
「……キレイだ……」
俺が
「コウヘイ、あまりジロジロ見ないでほしい」
とミーシャが頬を上気させて言う。
ミーシャは普段から着ていたんじゃないかと思えるほどにドレス姿が似合っていた。
赤い髪がよく映える。
ノーナとクーデリアは背が低い分可愛らしい、という感じだ。
もちろん似合っている。
「お洋服は当家のお礼の一つです。お持ち帰り下さい」
シャイナがそう言う。
席に着くと夕食が始まった。
「まずは祈りを。創造神と眷属の神々に感謝を」
「「「感謝を」」」
「感謝を」
俺は見よう見まねで感謝の祈りを捧げる。
ノーナは、ほへぇっと見ていた。
まずはオードブルのような物とサラダが運ばれてきた。
オードブルはエビのようなものに生ハムとスモークサーモンのようなものだ。
サラダにはなにかのドレッシングが掛けられている。
スープも運ばれてきた。野菜がゴロゴロ入ったスープだ。
まずは一口。エビのようなものをナイフで切り分け、口に運ぶ。
プリッとした身にマスタードのようなものが効いている。
美味いな。
生ハムもスモークサーモンも素材の味を生かした一品だ。
ノーナは大丈夫か? と見やれば、メイドさんが介添えで着いていてくれるみたいだ。
一安心してスープをスプーンですくい口にする。
濃厚な野菜のうまみが口に広がった。むぅ、やるな。
サラダも新鮮で美味かった。
シャキシャキの葉野菜と何かの特別なドレッシングがいい味を出していた。
一方、従魔組はというと。
別のテーブルで料理をメイドさんたちから与えられている。
小さな声でキャッキャッと楽しそうだ。
ふふ。ウチの子達は可愛いからな。
その後も何かのステーキがパンと共に出される。
肉も申し分なく、厳選されたその肉はナイフが抵抗もなく入っていく。
食事をワインで流し込み一息つくとデザートだ。
デザートはチーズケーキか? なかなか森の生活では食べられないラインナップだ。
食後のお茶を楽しんでいるとシャイナが言う。
「そういえば皆さん、竜王国の噂はご存知かしら?」
「ふむ。どのような噂であろうか」
「あい?」
「竜王国だとボクは分かりませんね」
「それで、その噂がどうしたんだ?」
俺がシャイナに尋ねる。
「はい、わたくしもお父様から聞いただけのお話ですが……」
何でも竜王国でスタンピードの兆候が出ているのだとか。
しかし、屈強な竜人族たちが治める竜王国は楽観視しているらしい。
どうせいつものスタンピードだ、と。
まぁ竜人族ってのは頑丈な人たちらしいし大丈夫なんじゃなかろうか。
俺も特に問題視しなかった。別の国だしね。
その日は公爵邸で泊まり、次の日はスティンガーの町へ目指して旅立つ。
公爵邸の玄関で令嬢姉妹の見送りを受ける。
「ぜひまた当家にお寄り下さい」
「また、きてください」
「セバス、あれを」
シャイナが執事を呼ぶ。
俺は執事からお金の入った袋と公爵家の紋章が入った短剣を渡される。
「もし何かあれば、この短剣をお使い下さい。当家が力になります」
「ありがとう。その時は使わせてもらうよ」
俺はお金の入った袋と短剣を霧夢の腕輪にしまった。
「あい、シルヴィまたね」
ノーナがブンブンと手を振るう。
「のーなちゃん、またね」
シルヴィアも微笑みながら小さく手を振る。
俺たちは公爵家が貸し出してくれた馬車に乗り込む。
これで王都の乗合馬車のところまで送ってもらうのだ。
ノーナが窓にへばりついて手を振っている。
馬車が公爵邸の入り口を出るまで振っていた。
「ここまでありがとうございました」
俺は馬車の御者に礼を言うと、御者の人も会釈をして来た道を引き返していった。
さて、まずはスティンガーの町だな。
俺たちはスティンガーの町へ行く馬車を探すと、それに乗り込んで出発を待つのであった。
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