第54話  魔剣、テセウスを作るぜ

「オルランドさんが、サントスのトップになるんスか?」


「そうよ。彼以外には広い西域を纏められる人物はいないでしょうね」


「ロペス村にも行ってたんですよね?」

「そうね、そこの村人の一件一件に、出向いて伝道をしていたそうよ。おかげで、ロペス村からは、上質な陶器が毎年神殿に、寄進されてるわ。これも彼の人徳のおかげね」


「サントスの賢者様になられるんじゃあ、もうオルランドさんとは一生会えませんね」


 俺はションボリして言うと、エリサさんが言うんだ。


「結婚して、子供もいるのにまだ、彼のことが恋しいの?」


「ロリィもレイラも愛してる。でも、本当に愛してるのはオルランドさんだけだ!」


 思わず、デカい声で叫んでしまったが、エリサさんが、咄嗟に執務室に結界を張ってくれた。


「もう!!ここは光の神殿よ。大声は厳禁なのに。私の言い方が悪かったわ。

 結論から言うと、あなたはオ-リに会うことは可能よ。あなたは、サントスの神殿の守護剣、テセウスを作ることを予定されているでしょう。守護剣は製作者から、賢者に渡される事になると思うわ」


「俺、テセウスの設計図を貰って無いっス!」


 俺は半泣きで言った。


 エリサさんは思うことがあってか、引き出しから、絵をを出してきた。


「これが、テセウスの完成予想図よ。これから作りたいかしら?」


「はい!!」


 俺は、テセウスの完成予想図を手に入れた。


 西域に咲く花、ゼナの花が鞘にあるんだ。

 その辺は自由に作れとある。

 でも、西域を護る神殿に奉納する剣だ。


 真剣に、慎重に魔力も込めて作らなくてはならない。

 俺は、エリサさんから、テセウスの設計図を受け取ると、直ぐにデュール谷へ帰った。

 そこで、谷長にテセウスの製作に入る事を知らせ、ロレッタにもまだ、生後半年のレイラにもしばらく会えないことを告げた。


 ごめんなさい、神様。俺、テセウスにオルランドさんへの愛の心を込めるよ。

 勿論、西域の平和と安寧も願って。


 俺は、谷長に用意してもらった、鋼や材料をデュール谷の神殿で清めてもらった。


「本当に、一人で良いのか!?助手に俺が入ろうか?」


「谷長が?」


「これでも、先代の魔法鍛冶師だ。火の魔法は使えないが、大槌をたたくくらいの事は出来るぞ。」

「でも……リューデュールとの約束もあるので、刀身は一人で作ります。

 最高の鋼を用意して下さり、感謝します」


 俺は、刀身だけを魔竜谷で作り、柄と鞘は、村で作ることにしたんだ。

 鞘作りでは、ロブの右に出る者はいないよ

 予想図通りの鞘なんて俺には無理だ。


 ここは大人しく、ロブに教授願おう。


 ってことで、俺は一人で魔竜谷の結界に行って、刀身を作り始めたんだ。

 パーシアが、人型では限界があると言って来た。

 オルランドさんに剣を渡すために、俺はパーシアに言ったよ。


 俺が息吹を取りに行くよ、って。

 パーシアは頷いて消えた。


 リューデュールは、パーシアなんだ。

 恐くない!!と、自らを奮い立たせ俺は武者震いをしながら、リューデュールの所へ行った。

 リューデュールは、俺の風の精霊が中位で飛べないことが分かっており、寝転がって待っていた。

 昔の俺なら、この時点で失禁して気絶してたけど~

 俺は、西域でこの世界の歴史を学んだのさ。

 竜は最古の生き物で、創世の昔からいる。

 昔は、風竜が加護していた国もあったらしいが、今は竜の個体数が少なく、実態は不明だそうだ。

 だからこそ、リューデュールは奇跡の竜なんだ。


 俺はリューデュールの前に小さな炎華石を持って行った。

 炎華石が、リューデュールの息吹を閉じこめてくれるのだ。  



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