第53話 賢者様
二年後、俺は31歳になって一児の父親になっていた。
子供って可愛いのな。
俺は家族ってものを知らないから、基本的に仕事のある時は魔竜谷にこもって、鍛冶仕事が一段落すると、家に帰ってロレッタや娘のレイラーニ(レイラ)と過ごすことにした。
谷長や、ロブが最初は好きなように作れというので、俺は得意な刀身ばかり作っていたんだ。
そうしたら、怒られた。
形にしろと。
ううぅ……やっぱり怒られるのね。
それで一振り作って谷長の所に持って行ったんだ。
「俺の時とは違う技術だからな。流石に刀身は見事だ。お前の作る剣は、シンプル過ぎるぞ。もう少し、凝っても良いんだぞ」
「でも、神剣の分身作らないといけないから……基本的な剣を作れないと神剣の分身なんて作れないじゃないですか」
「良いから、魔法剣を一振り作って、光の神殿に奉納してみろ」
魔竜谷の鍛冶小屋も、新築してもらったんだ。
そこからパーシアが、火竜の息吹を運んでくれた。
ここで作業をしている時は、ロブはいない。
俺一人だ。
パーシアとの約束だもんな。
三振り剣を作って、谷長に選んでもらったものを光の神殿に持って行った。
神殿は、思ったよりも落ち着いた雰囲気だったよ。
(「魔法剣を奉納に来ました。」)と言うと、エリサさんの執務室にあっさりと通された。
「ライアン、久しぶりね。魔法剣が出来たのですってね!?凄いわ、一号作品ね。オリエに渡して頂戴」
俺はエリサさんの傍に控えていた、オリエ姉さんに剣を渡した。
そうしたら、エリサさんが俺に言ってきた。
「良かったわ、これからサントスに飛ぶ所だったの。」
「どうかしたんスか?」
「サントスのメルクリッド大賢者様が亡くなったの。もうお年だから大往生なんだけど。問題の1つに次代の賢者の座に誰が就くかという事なのよ」
「多数決ですよね?神殿の問題は、話し合いによる多数決で決めると聞いてます」
「そうね、それはあっさり決まったそうよ。だけど、本人が嫌がってるの」
「新しいサントスの大神殿の賢者様て、誰なんですか!?」
よほど人徳がある人なのだろうに、俺はエリサさんに聞いてみた。
「オルランド・ベーカル神官よ」
エリサさんは、真顔で言った。
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