第51話  ロイルの魔法使い

 俺はアルテアで5年鍛冶の勉強をした後、サントスの神殿に移り、3年間柄や、鞘のことを学んだ。

 驚いたのはオルランドさんが、サントスの神殿に戻っていたのだ。

 遠目にしか見えなかったけど、沢山の人が彼に付き従っていた。


 出世したのかな!?


 住む世界の違いを感じたな。

 あちらは、大勢の人に尊敬されて、人の上に立つ人だ。

 俺は、まだしがない修行中の身だもんな。


 29歳になった俺は、銀の森への帰還を許された。

 そして、光の神殿のタナトス・リーア(最高位の巫女)と接見させられたんだ。

 そこには、ロイルのおさもいてビックリしたわけだけど。

 2人は旧知の仲らしい。

 タナトス・リーアとは、勿論エリサさんのことで、彼女の執務室に油紙に書かれた剣の絵が目を引いた。


「久しぶりね、ライアン。真面目な勉強ぶりは風の噂で届いてるわよ」


 エリサさんは嫌味ではなく、そう言ってくれた。


「アルテアから逃げ出してたら、どうなってたんですか?」


「従兄がアルテアに漁師町を持ってるの。逃げれるのは海だけって所ね。そこに送ろうと思ってたわ」


 ゲッ……

 でもエリサさんは、以前よりも明るくなっていた。

 こんなに重い責任のある地位にいるのに、彼女は何とも感じてないようだ。


「お飾りに決まってるでしょう!!」


 俺の心を読んだように、エリサさんは言った。


おさのティランが、神殿に協力的でないから、餌にされてるのよ」


 おさがいる前で、エリサさんはズケズケと言う。

 俺の方が恐縮してしまった。


 おさの顔色は悪かった。

 病弱だとは聞いていたが、超絶美形なのに繊細さが昔よりも、増してるな。


「それより、何の御用でしょうか!?」


「ああ、あなたが作る剣の設計図が、光の神殿の分だけでも出来たのよ」


 エリサさんは言う。


「出来れば、あなたの一番魔力がある時に、作って欲しいの。光の神殿はご神体のアフレオスの分身を作ることだから、慎重にね」


「俺なんかで良いんでしょうか?」


「あなたが、選ばれし者だからよ」


 なんだ?選ばれし者って!?

 おさが、銀色の外套を持って俺に近付いて来た。


「ライアン・ロペス……今日から、ライアン・ロイルです今までの修行、ご苦労様でした。これからは、神殿所属のロイル姓の魔法使いです。

 銀色の外套はロイル姓の魔法使いの証です。昔の外套は、これで帳消しにして下さいね」


 俺は、あんな昔のたった一度だけ会った時のことを覚えてるなんて。

 長の記憶力の良さに感心した。

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