第39話  火竜にご挨拶 (実践)

「『聖なる光の神の眷属のお方にご挨拶を申し上げます。私の名前は、ライアン・ロペスです』よ」


 さすがに、流暢だけど長ったらしいな~


「『こんにちは~~』で良いじゃん」


 またゲンコツが飛んで来た。

 も~凶暴だな~


「火竜を怒らせたら、骨も残らないと思いなさい」


 エリサさんは、思い切り物騒なことを言った。


「残らなかった人、いるの……?」


 俺は恐る恐る聞いてみた。


「私の叔父が作業で入ることがあったわ。精霊に好かれる質の人だから、魔法剣に色々な精霊の力を取り入れることが出来たの。でも、作業中に何かあったらしいわ。父様は魔法の力をほとんど無くすくらいの重症を負って、その日から叔父様を見たものはいない……という事よ」


 俺はガクブルだった。

 正直チビってたよ。

 なんで、俺がそんな危ない所で仕事せなあかんの~


 回れ右して、逃げ出そうとした瞬間に、エリサさんに首根っこ掴まれてた~


「あなたなら、大丈夫よ。火の加護があるから、大やけどくらいね」


 片目を閉じて笑う、嫌な人。


「先に水の精霊と契約しておきましょうか……裏手の泉に来てちょうだい。」


「なんで!?水の精霊?」


「リューデュールが無礼な事をしてきたら、水をぶっかけてやりなさい」


 今、火竜を怒らせたら、骨も残らんて言った人が、何言ってるの。

 俺も壊れてきたかな!?

 もう怖さしかなーい。


 結局、俺は泉の中程にいた、乙女たちの一匹と契約した。

 てか、これもエリサさんが、強引に契約してしまったんだ。

 エリサさんが泉に行くと、泉の主だというじいさん精霊が現れて、エリサさんに契約を迫ってたけど、彼女は先代の泉の精霊の祝福を受けていたらしくて、じいさん精霊は眼中に無かったな。

 一言、邪魔と言ったら主は消えていったよ。

 俺には、水の精霊とやり取りが出来ねぇから、呪文だな。

 たった一つの呪文を覚えるために俺は、魔竜谷まで馬の上で同じ言葉を繰り返していた。


 エリサさんが、(「ここから先が魔竜谷の結界よ」)と言った言葉も聞こえずに、馬ごと結界の中へ飛び込んで行って見事に弾かれ。


「あなた、本当に馬鹿ね」


 ううぅっ此処に来てから、皆に言われてる気がするぅ……


「いじけてないで行くわよ」


「は~~い」


 心を無にして、結界の中にいた。

 アツ~!!灼熱地獄だ~

 火竜がいるってほんとなんだな~


 結界の中心に歩いて行くと、大きな影が見えた。


「リューデュールよ。今日は起きてるのね」


 俺はまた、ちびった。


「ここからは助けるわ、挨拶はちゃんとするのよ」


「うひ~ん~」


 エリサさんが俺を脇から抱えて軽々と飛んだ。

 次の瞬間、見たことも無い生き物が、目の前に……でも、目が逸らせられないんだ。

 俺は、エリサさんに抱き抱えられてることも忘れて、ジタバタした。

 そして、今度は風の騎士に、


 <火竜の前に叩き落とすぞ!!>


 って脅されたんだ。可哀そうな俺!!


「リューデュール、友達になる人を連れて来たわ。ライアン、ほら、挨拶して」


『光の神さんの親戚さんの火竜さん、こんにちは。俺、ライアンだよ』


 教えられた挨拶と大分違う言葉を言っちまった。

 火竜は、キョトンとしていた。

 俺も何が起こったか分からなかった。覚えてるのは大量の火だ。火が俺の方に向かってきた。

 俺は、失禁して記憶が途絶えた。

 あ~骨も残らねぇのか……

 くそ~実物のオルランドさんに会いたかったぜ~~

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