第38話  火竜にご挨拶 (準備)

「だって~俺、料理しか作ったことが無いんだぜ~」


 俺は、ロブにつままれて谷長の館に戻された。


「レフ!こんな奴を本当に魔法鍛冶師にする気か!?鋼も溶かせないじゃないか!」


 ううぅ俺の所為じゃないもん……


 谷長は俺を見て、大きな溜息をついている。


「ロブ、最初からは無理だ。こいつは初等教育をすっ飛ばしてる、はぐれ魔法使いだからな。だが、ジェドの予見で出てきた子だ。信用はして良いと思うぞ」


「お前とジェドは、学び舎の同期だろ?信頼しすぎじゃないのか?」


「嫌な思いも沢山したが、あいつの予見は、まず外れない」


 そんなに信用されちゃって良いのか?俺!!


 ロブはブツクサ言って帰って行った。


「ライアン、そろそろ此処での生活も慣れただろう。火竜に挨拶に行ってこい」


 谷長は何気に言った。

 俺は笑って何の冗談ですか~と言ったら、ゲンコツが飛んできた。


「痛いですよ~」


「お前の気合が足りんのだ。エリサに案内をさせようと思ったが、一人で行くか?」

「一人は嫌です!!だけど、何でエリサさんなんですか?」


「あいつは、リューデュールと友達なんだ。」


「火竜と友達?」


 俺は素っ頓狂な声を上げてしまった。



 エリサさんは、また神殿にいた。

 ずっと何かを祈り続けているように見えた。

 祈りが終わると、彼女は振り向いた。

 エリサさんの風の精霊が、彼女に耳打ちしたのが見えたよ。

 すごい、絆だな。


「これから魔竜谷へ行くのね」


「はい、ご同行してくださり有難うございます」


「私は、行くなんて一言も言ってないのに……」


 エリサさん怒ってる……?


「最初に言っておくわ!!あなた、まだ自分がラインハルトだと名乗ってるでしょ!!あなたは、リリエンハイムのライアン・ロペスよ!!あなたの生い立ちは不幸ではあるけど、本来の名が分かった以上、そちらで精霊たちと対処していった方が、伸びるわよ。第一、呪文でリューデュールを縛れるものでもないわ。」


「でも、ちゃんとオルランドさんに祝福してもらった名前だよ。」


「あなたは、ライアンよ!!」


 俺はドキリとした。

 この人の圧は、半端ね~

 この人に逆らう事だけは止めよう……


 俺の心を呼んだのか、エリサさんは急に笑顔になった。


「古代レトア語で、異生物との挨拶の仕方を知ってるかしら?」


「えっと……」


「知らないのね?」


「猫や犬と話せなくて当たり前だろう」


 ゲンコツが飛んで来た。

 谷長と中身まで同じかよ~~



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