第37話  剣を作ってみましょう

 目覚めて俺は、身体中に激痛が走った。

 初めて、ケツを掘られた時の痛みの方がなんぼマシだったか……


「ちょっと時間が、長かったみたいね。体が頑丈で良かったわ」


 エリサさんだった。

 俺が、のたうち回ってるのに、平然とした顔で、痛み止めの葉っぱをくれた。

 これを食んで、痛みを消せという事らしい。


「その場で正座、夕食抜き。ちなみに今日の夕食は、鶏のクリーム煮よ」


 嘘!俺の好物なのに!!


「明日から、もっと厳しくするぞ。お前は見張らないとサボる癖があるな」


((「げっ!!谷長!!」))


「あの!!許してください!!もう逃げませんから!!」


「前科3犯が何を言ってるんだ?」


 何で知ってるんだよ~~

 うううぅ……寒い季節じゃないけど、昼も食べてないんだぜ。

 お腹すいたよ~~


 俺は、夕方の祈りに来た人に笑われながら、その場に正座していた。

 でも、おかしいんだ。正座させられているだけで、あんなに笑うかな~?


 日もどっぷり暮れて、4~5歳くらいの女の子が俺に食事を持って来てくれた。


 明るい金髪に、空色の瞳はオルランドさんと同じだ 。

 メチャ可愛いぞ。

 ツーテールをピンクのリボンで結んで……


 運んでくれた銀の器で俺は、自分の顔を映して器を投げそうになった。


 彼女と同じツーテールにピンクのリボンをした自分がいた~

 誰だ!

 俺の身体で遊んだのは~~!!


 犯人は直ぐに分かった。

 女の子が自分から言ったのだ。


「かー様と一緒にやったのよ。レフィとお揃いなの」


 レフスリーアいうのは、エリサさんの娘だ。

 つまり、犯人はエリサさんなんだな。


「そこに綺麗な銀髪が転がってたら、いじりたくなるものよ」


 翌日、悪びれた様子もなく言われてしまった。


 この日から、監視にレフスリーアが俺の背中に、張り付くことになった。

 監視の監視で治療師に交代で、見張られた。

 逃げないって言ったのに、信用が無いんだな。


 俺が素振りになれてきた頃、俺は、谷長の館の隣の鍛冶屋に呼ばれた。

 ロベルト・フレイドル、50代前半の男だ。ロブと呼ぶ。

 刀剣鍛冶師だそうだ。


 鍛冶場の方へ案内されると、刀身から、柄、鞘まであってビックリした。


「これを一人で作ってるんですか?」


「家業だから、大変だと思ったことは無いな」


 ロブは平然と言ってのけた。


「お前が自立できるまで、俺が補佐で入ることになる。俺はレフや、お前のように火の加護はない。だから、魔竜谷での作業は命がけになるんだ。

 サポートをしてやれる時間も限られてくる」


「早く自立しろと……?」


「逃げ出している時間は、惜しいという事だ」


 ロブって少し、谷長に似てねぇか?


「この型にある鋼を溶かしてみろ。」


 えっ!?急に何を言うの!?

 ロブは黙っていた。

 本気なんだ。

 よく知らないけど、剣て型に鋼を流して鍛えるんだよな。

 で、俺の火の魔法で鋼を溶かせってことなんだな。


 確か、精霊に直接話した方が、呪文より力が強いんだっけ。

 俺は密かに、ヴァンクロフにこれからは、呪文は使わないぞって言ってあった。


「火の織物問屋、鋼を溶かしてくれ。」


 <う~む~~>


 変な声が返って来た。

 それで俺は、気が付いた。


 俺は焼き芋しか作ったことが無い!!

 竈の料理しか作ったことが無い!!


 ロブは後ろで睨んでるし~~

 俺、どうしたら良いの~~!?

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