第33話  剣を習いましょう

「だから、ケツにですね……(自主規制)を入れて……」


 なんで、俺はこんな話をしてるんだ!?

 朝の水汲み後に……

 エリサさんが、俺の顔を見るたびに、男同士の同衾の仕方を聞いて来るので、俺はケツの掘られ方の説明をする羽目になったのだ。


「オーリは小さいものね~楽でしょう」


 彼女から出てきた言葉がこれだった。

 なんで、知ってるんだ!?この人。

 俺が固まってると、エリサさんはニッコリ笑って言った。


「言ったでしょう!?オーリとは同じ神殿にいたことがあるのよ。

 短い間だけど、小さな神殿にいたわ。そこには湯浴み処も1つで、男も女も一緒に入ってたの。私も今より成熟してないから、女とは見られてなかったわ」


 オルランドさんは、大神官様の世話係をしていただけじゃないのかぁ……?

 それを言うと、


「彼がそんな生ぬるいことで、納得するわけないでしょう。

 神殿を飛び出して、小さな神殿を回って、市民のために尽くしてたわよ」


 俺がサントスで聞いた話と違うぞ。

 でも、こっちの話の方がオルランドさんらしいや。

 俺は嬉しくなって、ニヤニヤしてしまった。

 俺が褒められているような気になったんだ。


 エリサさんは冷めた目で、俺に言った。


「あなたのことじゃないわよ。彼は皆に尊敬されてるわ。

 囲われてたあなたと違ってね」


「俺は独り立ちするために、ここに来たんです」


 エリサさんは、時々人の気持ちを逆撫でするようなことを言う。


「まだ、スタートラインにも立ってないわ。スタートは午後の剣の稽古からよ」


 ううぅ……予見師のジェド師には、もう船出してるって言われたのに……

 認めてくれてない……

 確かに、ここに来ても火竜の精を見て、気絶しただけだし……


 その日の午後、俺は午前中に神殿の掃除をするように言われて、俺は心を込めて神殿を掃除したぜ。

 少しでも、オルランドさんに近付きたかったんだ。

 皆に尊敬されるオルランドさん。

 それはあの人の無意識に行う善行なんだ。


 午後になって、谷長が剣の稽古だと時間を割いてくれた。


「これが刀身、ここが柄だ。振ってみろ」


「はい」


 俺は言われるままに、柄の部分を持って、ブンブンと上から下へ剣を振った。


「日が暮れるまで、振ってろ。後で様子を見に来る。サボるなよ」


 それだけ言うと、谷長は館の中へ行ってしまった。


(「え……?ええぇっ?それだけ!?

 剣を上下に振ってるだけを、あと何刻やれって!?俺……もう逃げたい……」)

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