第31話  リンゼイはどうなった!?

 デュール谷っていうのは、銀の森の直轄地で

 ディムデルムの街、ディニル村、谷の中心の谷村。

 火竜のいる魔竜谷、涸れ谷、はぐれ谷等の広大な敷地を総称して、デュール谷と言った。


 俺は谷村の谷長の裏の神殿で、寝起きすることになったんだ。

 そして、チビって卒倒してしまった俺は、神殿裏の治療院で目が覚めた。


「あら、目が覚めたのね?」


「お前は何しに来たのだ?」


 一目で親子だと分かる、薄い茶髪と茶水晶の瞳をした二人が俺の傍らにいた。

 顔立ちがよく似ている。

 かなり整った顔立ちだ。


 声で、先ほど火竜を肩に乗せていた女性だと分かった。


「火竜が見えるなんて、相当ね」


「火竜はお前に挨拶をしただけだぞ。情けない」


 2人は交互に話してきた。

 火竜が見えるのは相当……何?

 挨拶って火を吹きかけられること?


 俺が固まってると、火竜を持った女性が、薬湯を口に運んでくれた。


「あの、火竜が挨拶したって……」


「ああ、この火竜は魔竜谷の火竜の精神体なのよ。だから、見える人が少ないのよ。存在を認めてもらえて、嬉しくて挨拶したら、あなた卒倒してしまうのですもの」


 薬湯を飲むと、少し落ち着いてきた。


「あの?リンゼイは?もう鍛冶の練習に行ってるんですか?」


 女性は黙ってしまった。


「なんで、神殿はあんな奴を寄越したんだ!?」


 男の方が言った。


「神殿命令ですよ。」


 と、俺。


「あんな、手癖の悪い奴!!」


 緩やかに髪をアップした女性は、眉をひそめて怒っていた。

 この人は、頭上に騎士の格好をした立派な精霊を持っていた。

 かなりの上位の精霊のようだ。

 この人は、相当の使い手なんだな……と俺は思ったんだ。


「よりにも寄って、私の風の騎士をよこせと言って来たのよ。

 馬鹿じゃないの!?精霊契約は自分でやるものだわ!!」


「エリサ……あれはやり過ぎじゃないのか?」


 男が、女性に行った。


「いーえ!!力づくで襲いかかって来たから、力づくで応対しただけよ」


 確かに立派な精霊だ。

 リンゼイが欲しがるのは無理じゃない。


「リンゼイはどうなったんですか?」


「風の騎士に竜巻起させて、擦り傷だらけにしてやったわ。ついでに、返品と外套に書いて銀の森に送り返したわ。学び舎では、もう面倒が見れないそうだから、ワンチャンで鍛冶職人の技を学ばせるために、谷に連れて来たのよ。

 でも、ここでも人から精霊を盗もうとしたわ。

 なまじ、魔力が強いから、精霊と契約しやすいのでしょうけど、無理に奪った精霊が、呪文で縛っても十分に力を貸してくれる訳がないわ。

 魔法使いとしては邪道よ!!あんな奴は神殿所属の魔法使いになる資格も無いわ」


 この女性。

 リンゼイを簡単にあしらって、銀の森まで吹き飛ばしてしまったそうだ。

 すげえ力~~

 後に大陸の名を冠した最高位の巫女の座に就く人だが、それは3年後の話だ。


 そして、男がその人の父で谷長なのだと知った。



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